2020/11/5はだしの効用
日本の運動生理学者の礎の1人、小野三嗣先生の著書
『健康は「あし」から』
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この本は1975年刊行の『あし いま、身体について考える』の加筆版である。
実は私の母親が大学時代に小野先生の講義を受けていたようで、1975年刊行の本が実家の本棚にあった。
この中に、はだしの効用、として5つのことが挙げられている。
第一に、あしの裏の皮膚を直接刺激することによって、それが反射的に足裏の筋肉の運動や足指を動かす筋肉のトレーニングになることが、最も基本的な問題である。
第二に、これは心理的な問題であるが、土地=自分の立っている所に皮膚で直接触れているという、いわゆるスキンシップ・リレーションである。大地に対する愛情の形式が大切だといっても、こうした土との直接のふれあいなしでは考えられまい。
第三に、純粋な生理学的な意味で言えば、あしの裏の筋肉が強くなるというだけでなく、その反射的な影響が全身に及ぶということである。残念なことにはだしで立ったり歩いたりすることの効果を、現在の生理学で全部きちんと整理できているわけではない。というのも、これまではだしの研究がほとんどされなかったためである。 元々の人間の皮膚感覚というものは、目の見えない人が点字を指先で読む場合でもわかるように、修練によって機能を分化させられる、大きな潜在力を持つものである。これまであしの裏はあまりに粗末に扱われてきたが、使わないから鈍くなっているのであって、はだしで触れることから起こる機能の分化が期待できる。遺憾ながら今は具体的にはわかっていないけれども、全身的に影響するものとしてあるに違いない。
第四には、平凡なことのようであるが、自分の足元に注意深くなるということである。どんな所でも、何を踏んでも構わないというのでなく、歩くときに自分の足元に気をつけて確かめながら歩くというようになるのは大切なことであろう。
これは履物にもよるが、運動を制限したり、あしを圧迫するようなものが多いわけであるから、それからの解放ということが第五の効用である。あしを解放することの効果は、生理的にも心理的にも大きいものが期待できる。
戦後の高度経済成長の終わりに、子どもの体力低下、あしの問題が増えてきた。
敢えてはだしの良さを叫ばなければならなかった時代。
動物としての人間の役割を忘れつつある中での、警笛であったように思う。
それから45年。
私たちはより一層、自然から離れてしまった。
はだしの効用、なんて理屈っぽく言わなくても、と思うのだが、
それでも説明することで、何かのきっかけになるかもしれない。
先人たちの思いに触れながら、自分の役割を再認識する良い機会だった。