中世のペストに関する3つの誤解
誤解の話そのものよりも、帯びている文脈にグッときた。
誤解その1:中世にペストが蔓延し、くちばしのようなマスクをつけた医師が治療に従事した
誤解その2:大ペストのさなか、ユダヤ人は井戸に毒を投入したという陰謀論により迫害が起きた
誤解その3:大ペストは社会を一変させ、資本主義やルネサンスをもたらした
そうしたなか、人文社会学部の新入生が自主的に教員にコンタクトを取り、授業が始まるまでに読んでおくべき推薦図書について情報を集め始めたという。その意気込みを受けて、彼らを対象にzoom勉強会が企画された。4月後半に全6回が実施され、僕も最終回を担当させてもらうことになった。自主的な学びへの渇望とそれに快く応えること。これこそが大学の営みの本質なのではないか。新入生の意欲にいたく感心した。
いい話だなあ。大学の営みの本質。学生さんの態度にエールを送りたい。
社会の変化が14世紀を通して生じたとして、その中で大ペストが持つ意味は何か。それは、「問題の加速化」ということに尽きるだろう。13世紀に農村社会はすでに人口飽和に到達しており、社会は潜在的に構造転換を必要としていた。このことは、COVID-19の感染拡大によって人とのコンタクトを制限され、働き方、学び方について議論せざるを得ない状況に陥っている僕たちにとって、とても理解しやすいのではないかと思う。こうした諸問題はCOVID-19が蔓延して突然降って湧いたものではなく、私たちがこれまで見て見ぬ振りをしてきたものに過ぎない。
「問題の加速化」は、たしかに〜と思う。加速化、あるいは顕在化や可視化とも言えそう。
中世のペストは、僕たちがしばしば陥りがちな歴史認識の落とし穴についてうまく教えてくれる題材であった。それもこれも、今日未曾有のパンデミックに直面しているからに違いない。中世のペストに関する誤解と歴史認識の問題を頭の片隅において、改めて今日の問題に目を向けることも悪くないだろう。
こういう状況に身を置いていなければ、ぼくもペストやスペイン風邪にあらためて強い興味を持つことはなかったかもなあ。