パラノとスキゾ
パラノ : 偏執型。肩書などの固定的なアイデンティティを重要視する。
スキゾ : 分裂型。固定的なアイデンティティに縛られず、自由を尊重する。
「農耕民」と「狩猟採取民」の対比を思い起こす。
浅田彰が指摘するポイントの二つ目が「逃げる」という点です。浅田彰は「パラノ型」を「住むヒト」と定義した上で、「スキゾ型」を「逃げるヒト」と定義しています。「住むヒト」に対置させるのであれば、「移住するヒト」とか「移動するヒト」という定義の仕方もあるのに、そうはせずに「逃げるヒト」という定義を用いている。ここは非常に鋭いと思います。「逃げる」というのは、別に明確な行き先が決まっていなくとも、とにもかくにも「ここから逃げる」ということです。このニュアンス、つまり「必ずしも行き先がはっきりしているわけではないんだけど、ここはヤバそうだからとにかく動こう」というマインドセットが、スキゾ型だと言っているわけですね。
ここで留意しておかなければならないのは、日本の社会では未だに、一箇所に踏みとどまって努力し続けるパラノ型を礼賛し、次から次へと飽きっぽく変位転遷していくスキゾ型を卑下する傾向が強い、ということです。考えてみれば、例えばシリコンバレーの職業観などは典型的なスキゾ型なので、こういった「パラノ礼賛、スキゾ卑下」の職業観が日本のイノベーションを停滞させる要因の一つとなっているのでしょう。