サイトカイン放出症候群
サイトカイン放出症候群(サイトカインほうしゅつしょうこうぐん、英: Cytokine release syndrome、CRS)または急性輸注反応(英: Acute infusion reaction)は抗T細胞抗体等の抗体医薬品を投与した際に起こり得る即時反応型の副作用であり、アナフィラキシーとは異なる概念である。
血中に炎症性サイトカイン等が放出され、悪寒、悪心、倦怠感、頭痛、発熱、頻脈、血圧変動等の種々の症状が起こる。重症の病態をサイトカインストームと呼ぶ(下記参照)。
1918年から1919年に掛けて流行したスペイン風邪では、5千万〜1億人とされる死者の中で健康であった若者の死亡数が際立って多かった理由として、サイトカインストームが発生したことが関係すると信じられている。この場合、健康な免疫系は身を守るものとしてではなく己を攻撃するものとして動作したことになる。2003年のSARS流行の際も、香港での予備的な調査の結果、その死因の多くがサイトカインストームによると判明している。H5N1トリインフルエンザでヒトが死亡する場合にも関係している。2009年新型インフルエンザ (H1N1) で基礎疾患のない若者の死亡率が高いことも同様に説明され、スペイン風邪でも同様であったであろうと推測されている。しかし、米国疾病予防管理センター (CDC) はH1N1の症状は従来の季節性インフルエンザと同じで、「ブタ由来A型インフルエンザウイルス (H1N1) の変異株に関する臨床的知見の集積は不充分である」と声明を出している。サイトカインストームはハンタウイルス感染症でも発生する。また、新型コロナウイルス感染症 (2019年)でも発生しているという指摘もある。