悲しい「No」を無効化していかなくっちゃ
No No Girls の YouTube 版を一通り楽しんだ上で思うのは「いま、この人たちが楽しく過ごせているのなら本当によかった」ってこと。まあ、実際にどんな苦労や苦難があるのかってことはぼくには知る由もないので、表に出てきている情報だけを見て「楽しそうでよかった」と思っているだけで、そうであってほしいという願いも反映されているけれど。 「スキルはあっても、自信はぜんぜんない」って状況はけっこうよくあるんだなあ。そういう人たちを「否定されずに挑戦できる」環境に浸してあげると、本当にびっくりするくらい表情が変わって、のびのびとふるまえるようになっていく。それがパフォーマンス・アーティストである場合、パフォーマンスの魅力が爆発的に高まったりもする。そんな事例を見せてもらった No No Girls であった。BMSG の他のオーディションにも同じ成分はあるのだけれど、自信の変化幅という意味では No No Girls が参加者たちに与えた影響が最大に感じられる。 ぼくは歯並びが悪いしスキンケアもしてこなかったし、見た目を高く評価されたことはたぶんない。最近は太っちゃったのもあって、世の中における「一般的な美」の基準でいえばだいぶ低評価になるのだと思う。ただ、自分が生きていくにあたっては「美」の評価に活動の足を引っ張られた感覚はなくて、自分の中で重要度の低い「美」の領域をあまり気にせずにやってこれたのはラッキーだったのだろう。もしかしたら、自分と同程度の能力を持った「見た目の美しい人」がいたら、そっちの人の方が多くのチャンスに恵まれたのかもしれないけれど、少なくとも自分の体感として「見た目で損した」と感じるようなことはなかった、ということ。
https://www.youtube.com/watch?v=ix9_dWrC2ec
「ビジネスモデルが美しい」とか「このアーキテクチャは美しい」とか「なんて美しい文章なんだ…」とか思うことはあるので、自分の中にも「美」のセンサーってのは存在しているのだと思う。ただ、ホモ・サピエンスの見た目の「美」については「よくわからん」って感覚があって、ぼく個人はただただ疎いのかもしれない。 今回、少なくとも 10 代 20 代の女性たちはその評価の領域に巻き込まれてたいへんな想いをしているのかもしれない…ってことは今までより想像できるようになった。それによって世界のアンハピネスが増えているように感じるので厳しい気持ちになっている。とんでもない歌唱力を持った HANA のメンバーのひとりが「自分の声すら嫌いでした」と言っていて、そんなふうに思わせちゃうのはダメすぎるでしょ……と強い危機感を抱いたのであった。 2025-01-12 に「No No Girls THE FINAL」の最終審査の様子が YouTube Live で配信されたあと、いろんな人がいろんな感想を投稿していて。その中で、おそらくぼくと同年代くらいであろう女性たちが共通して言っていたことが印象に残った。下記、その中のひとつとして犬山紙子さんのポストを貼っておく。 改めてここまで多様な骨格、多様な見た目の子たちがそもそも「応募して良い」と思えて伸び伸びとパフォーマンスし、実力をつけ、人生を見せつけてくれるまでのオーディション番組が日本から生まれたことに心から感謝します。
彼女たちが輝けば輝くほど、多様な人が救われると思ってます。このグルなら、体型いじり、年齢いじり絶対ないじゃん、もうそれがわかってる段階で泣くほど嬉しい。デビューに向けて無理なダイエットしないじゃん。ピザ食べるじゃん、そしてその姿も見せてくれるじゃん。
そしてその子達がこれまで「私は応募しちゃダメかな」と思わせるような社会だったこと、ちゃんみなさんという若い女性、しかも妊娠育児中の大変な時期の方に結局全部やってもらったこと、そもそもちゃんみなさんがnoと言われてきた社会だったこと、真面目に向き合わなきゃいけないと思ってます。
ぼくは「歌すごい!ダンスすごい!ラップすごい!パフォーマンスすごい!」くらいで楽しんでいたものの。そこには、ぼくがこれまで見ずに済んできたものたちとの戦いを含んでいるのか、と思い至った。自分が有する特権性を思う。そうだとしたら、ちゃんみなさんや HANA のみなさんたちに任せておくのは違うな、とも思った。 パフォーマンストレーニングコーチの宗之介さんって人がいて、YouTube チャンネルで HANA の動画にリアクションしている。おもしろいのは、宗之介さんは No No Girls を未視聴で、メンバーの名前もあまりわかっていないってところ。 ぼくにはわからないことが多いのだけれど、どうやら、パフォーマンス・トレーニングを専門としている宗之介さんから見ると HANA のパフォーマンスは「テイストがいい」らしくて、なにを言っているかはわからないながら興奮は伝わってくる。 https://www.youtube.com/watch?v=ixRHLEAHQXc
世間のルールに縛られていないこの自然体。これは周りの大人が安心と自信を与えたからなのかもしれない。制限や答え合わせが無い!!最高のエネルギー!!
https://www.youtube.com/watch?v=0K2HQgWNVoU
No No Girls を未視聴のパフォーマンスの専門家が HANA の動画を見て「安心と自信を持って個性を発揮している」「そこにエナジーを感じる」「最高」とコメントしているのを見て、プロジェクトとして大成功すぎる〜〜と感心した。 これさ、パフォーマンス・アーティストのような出役の人たちだけじゃなくて、もっともっと多くの人たちにこういうポジティブなエネルギーの連鎖をつなげていきたいよ。ぼくが知っている職業の幅はぜんぜん広くないけれど、自分の知っている範囲においてもさ、ひとりひとりの個性が尊重されて強みが活かされてチームのグルーヴを生み出せると、めちゃ楽しいし、成果物の質も高まる実感がある。ひとつでも多くの現場がそういうグッドな雰囲気に包まれていますように。
ちゃんみなさんや SKY-HI さんが実践しているようなことを、Hook Up を、個性にスポットライトを当てることを、共犯者になって、それぞれの現場で、それぞれの体現方法で、やっていきたいと思っている。ぼくはぼくで、周囲の人々を Cheer Up し続けることをここに誓いたい。ポジティブなフィードバックの可能性を信じるぞい。 「あなたに◯◯はできない」「そのやり方じゃ◯◯できない」的な言説があまりアテにならないってことも、ぼくらは経験的に知っているわけで。そういうことをついつい言いたくなっちゃう気持ちはわからなくはないけど、留まる勇気を持とう。「この食材をおいしくすることはできない」んじゃなくて「わたしはこの食材をおいしくする方法を知らない」ってだけのこともあるじゃん。ただの自分の考えを世界の真理かのように言ってしまうのを止めよう。
デメリットが大きすぎる、よくわからん「No」と戦っていくってのを。彼女ら彼らのような一部の人々だけに任せていくんじゃなくて、もっと大きなムーヴメントしてやっていきたい気持ち。