北海道内の世帯加入率80%超える生活協同組合「コープさっぽろ」に学ぶ、人口減少地域を支える経済
「報徳仕法」という独自の手法で600もの村々の財政再建を手がけた二宮尊徳。そして、日本の「協同組合」の父とされる賀川豊彦。かつて、この2人が取り組んだことには通じるものがあり、現代社会を生きる私たちにとってのヒントが眠っている。
一般社団法人シェアリングエコノミー協会が、公民連携の最先端事例を共有し、持続可能な地域と社会の在り方を探る「SHARE SUMMIT 2024」を2024年11月に開催。シェアリングエコノミーを実践するプレイヤーたちによるトークセッションやワークショップが設けられ、会場に駆けつけたステークホルダー同士の様々な交流が生まれた。
「【北海道】人口減少先端地域で再注目すべき日本伝統的シェアリングエコノミー 〜報徳仕法、協同組合〜」をテーマにしたセッションでは、北海道の経済コミュニティ・えぞ財団団長の成田智哉氏と、同じくえぞ財団理事・一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス 代表理事の木下斉氏が対談し、北海道で80%以上の世帯が加入する「生活協同組合コープさっぽろ」の取り組みを、二宮尊徳が説いた報徳仕法と重ねながら紹介した。
生活インフラを行政や企業に委ねてしまうことなく、自分たちの手で暮らしを支えていく地域コミュニティの在り方は、少子高齢化が進む日本に生きる私たちに、どのような視座を与えてくれるのだろうか。
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成田氏「道内の247万世帯のうち約200万世帯がコープさっぽろに出資をしている、つまり世帯加入率が80%を超えるという驚異的な組織になっているんです。それぞれの世帯の出資金は平均すると約4万5000円となっており、約900億円の出資金を元手に食品の配達や子育て支援、福祉サービス、葬儀など北海道の困りごとを解決している状況です」
成田氏「中に入ってびっくりしたんですけど、コープさっぽろでは“売上”って言葉を使わないんですよね。いかに組合員さんにお届けしたかという意味で“供給高”というんです。また、利益のことは“剰余”という。つまり供給に対して余っちゃったものなんです。
株式会社って基本的には『売上を上げて、経費を抑えて、利益を確保する』ことが大切じゃないですか。生協では利益の確保は、主な目的ではないんですよ。剰余が出たら次に投資して、余ったお金を組合員に還元し続けるという概念が現れていて、とてもおもしろいんです」
成田氏「コープさっぽろのように、顧客の玄関を開けられるビジネスってそんなにないじゃないですか。おじいちゃん、おばあちゃんが玄関を開けるぐらいの信用がある状態で、しかもその方々にデジタルをお届けできる状態まで持っていけたら、これはすごいことです。コープさっぽろでは今、そのための挑戦を進めています」
木下氏「地域再生について語られる時、人口減少、人口減少って枕詞のように繰り返されますが、じゃあ日本で直近で人口減少したのはいつ、どこでなのかというと、実は江戸の中期から後期にかけての北関東から東北地域なんですね。
その一つの例として、木下氏は経営難に陥っているJR北海道を挙げた。両氏が所属するえぞ財団の試算では、道民が年間で約1,000円ずつ出資すると経営は十分に成り立つという。