ノンクロン、マジェリス、ルンブン
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興味深いことに、ルアンルパのコレクティブ形成のプロセスは、上記のコレクティブの定義とは真逆である。すなわち、共通の目的や思想をもった人たちが集まってコレクティブを形成するのではなく、まずは目的もなく集まることから何かが生まれるのだ。その背景には、「ノンクロン」(nongkrong:仲間とぐだぐだおしゃべりしたり、お酒を飲んだりすること)というインドネシアで昔から根付いている慣習がある。
「衝突はわたしたちにとって日常茶飯事です。問題はそれにどう対処するか。わたしたちは活動を通して、対立が人生の自然な一部であることを認識し、対立と共存することを学んできました。具体的なインスピレーションになっているのが、『マジェリス』(Majelis:アラビア語で座る場所、共同体で重要な問題を話し合うための集会の意味)というインドネシアの慣習です。わたしたちは定期的にマジェリスを開くことで、コレクティブとしての意思決定や問題への対処を行っています。誰かひとりが決定を下すことはありません。
例えば、声が小さい人、シャイな人の可能性を引き出すには、まずは彼らが輝ける場所をつくる必要があります。さまざまな方法がありますが、そのひとつは集会を行う際のリーダーに任命すること。基本的にリーダーの役割はもち回りで、同じ人が何度も独占することはありません。もうひとつは、意思決定のプロセスにおいて大きなグループではなく、小さなグループに分けて話し合いを行うことです。こうすることで小さな声を拾い上げることができ、複数の視点が考慮されるようになります」
「ルンブンとは、もともとインドネシアの収穫物を保管するためのスペースで、共同体で管理されているものです。かつては多くの家が敷地の前にルンブンを置いており、それらはいまでもロンボク島やバリ島で見られます。ルンブンは、共同体のバランスを保つために重要なものです。資源が少ない人は余っている人からもらうことができ、コミュニティ内の赤字と黒字に対処できる。 わたしたちはルンブンということばを、単なる物理的な保管場所という意味を超えて、共同体が管理する資源を指すものとして使っています。これにはお金、知識、歴史、空間などが含まれます。わたしが家をもっているとしたら、それはわたしのものであるだけではなく、他の人も使うことができるものなのです」
ノンクロン。「コスパ、タイパ」を掲げれば簡単に切り捨てられてしまいそうな時間を大事にする姿勢。 ルンブン。近代的な「個人」「所有」の概念に揺さぶりをかけてくれる。共助の姿勢。 今の自分にとって重要なテーマを多く含んでいて、読み応えのある記事だった。遠くの地で遠い昔から大事にされてきたような概念が現代のぼくになにかを気付かせてくれるのはおもしろい。