ソフトウェアとコミュニティ (ペパボでの研修) @ 2024-06-14
2024-06-14 にペパボで実施された、おもに 2024 年 4 月入社の人々に向けた研修の資料の一部をここで公開します。テキストコメンタリー付きです。ソフトウェアやコミュニティについて話しました。
https://gyazo.com/8a12b1b0f48e9e9893e627f4bd9c22f5
https://gyazo.com/def8aff7f43319b44f1af40bdf3ca881
https://gyazo.com/40ff238cf141cfc981db366130f7defb
https://gyazo.com/20a6b8d9e724af5d2356fc8f789956de
https://gyazo.com/1d08a78b384e54d26ee3f3e2d51d6cc9
https://x.com/kentaro/status/1800869030104019084
研修実施の 2 日前である 2024-06-12 にこの投稿が出てきて「その心は…?」となりました
https://gyazo.com/6d4882162eec7021d2cee466ed88da5a
https://gyazo.com/26965941e1b1c4adedd0c1f7ec4c9117
自分にとってのコミュニティの入口となったRuby札幌のことは紹介しておきたいところです
人は、最初に見たコミュニティを「なるほど、これがコミュニティか」と思い込む (Imprinting)
ぼくがコミュニティについて考えるとき、今でもベースにあるのはRuby札幌での体験です
他にもいろいろあるのだけれど、最近もアクティブに関わっているものとして Ethereum Japan と松本市と Teacher Teacher のコミュニティのことを軽く紹介しました
https://gyazo.com/14fefb1a8299fdb3cd52c1d9e772a6b2
https://gyazo.com/4ea492802a9d801969b66cacc17dbda0
ここで、研修を受講するみなさんのことを少しずつ教えてもらいました
趣味やハマっていることなどを教えてもらうことで、このあとの説明を、相手に合わせた例え話に調整するなどしたいと思っています
https://gyazo.com/0f9fc78d8afa9846bd35ab4392ef9b05
https://gyazo.com/c61131d7e286e9cb50e145c55372bbb8
中世ヨーロッパでは、ソフトウェアは議会によってつくられるものでした
https://gyazo.com/35e1d6a93b4e7acdb0a1e592ac932c01
現代ではどうでしょうか?
https://gyazo.com/77980999143b41a5150a58d44146b24d
https://gyazo.com/d3bc5281414f29cd829097700a20028d
https://stackshare.io/shopify/shopify
一口にソフトウェアといっても規模の大小はさまざまで、ひとりでつくるものもあればたくさんの人たちでつくるものもありますね
https://gyazo.com/6e636e2344531d48f2c3882c240a29c7
https://x.com/june29/status/1657188349981990912
Ruby における Matz や、
https://gyazo.com/e96ee09c7431f46d7bf8d2f36f5c7fea
https://pr.forkwell.com/career_navi/dhh-rails-large-scale-development/
Ruby on Rails における DHH のように、
けっこうな規模のソフトウェアにおいても、その作者として個人名が挙がることはよくあります
https://gyazo.com/60ecdae2fa230c35fb91340c8b292875
https://www.mdn.co.jp/design/features/6616
そういった意味で「ソフトウェアの作者」ってのは「漫画の作者」に似た性質を持っているかもしれません
「このアニメは誰がつくったか?」だと制作会社の名前が挙がることが多いが「この漫画は誰が描いたか?」だと個人名が挙がる
荒木飛呂彦さんのことを知らなければ、この表紙を見ても「ザ・ジョジョランズって漫画の 1 巻なんですね」という情報しか読み取れないかもしれない
ジョジョの奇妙な冒険の過去作を読んできた人からすれば、もっと多くの情報をキャッチしてしまう
https://gyazo.com/27e42fae97b8384399584d43b6a89188
https://gyazo.com/5069a06110a6e35d3612dcd944d12982
https://github.com/k1low
御社の k1low さんが開発し公開しているソフトウェア群には、強い作家性を感じています
「こういうソフトウェアが好きなんだろうな」
https://gyazo.com/c91af5c7a2b50785585b15976a29987c
Linus Torvalds は、Linux をつくったことで Git もつくることになっただろう、と捉えています
ぼくは連続性や物語性を見出している
ぼくが Slack を使い始めてしばらく経ってころ、立ち上げメンバーに Stewart Butterfield がいることに気が付いてとてもびっくりしました
スチュワート・バターフィールド - Wikipedia
Flickr - Wikipedia
Slack (ソフトウェア) - Wikipedia
Flickr に続いて Slack でも、ゲーム関連のものをつくっているときの副産物がプロダクトになっています
こういう事例を集めるのが好きなので、みなさんも知っているものがあれば教えてください
https://gyazo.com/10ecf6a2d68004b3a1d693a81d1fca5c
ここで tea.xyz を紹介します https://tea.xyz
macOS 向けのパッケージ・マネージャ Homebrew の作者である Max Howell が、今は tea.xyz に取り組んでいます
🍺 → 🍵
Max Howell
https://mxcl.dev
https://twitter.com/mxcl
「いいパッケージをつくってたくさんインストールされたら、なにかしらリターンがあってもいいよね」的な
Homebrew をつくって普及させていろいろ思うところがあって tea.xyz に至ったのだろう、と感じられます
ここにもぼくは連続性や物語性を見るのです
https://gyazo.com/e076f965d42e93060b8b346345b98e13
https://gyazo.com/e975be811bae0f6da6cacd54f2caf6eb
受講者のみなさんに「コミュニティってなんだと思いますか?」「あなたの身近にあるコミュニティをひとつ教えてください」と問いかけて、いっしょに考えてみました
https://gyazo.com/ac552780dc9e3c26171e2119a25ec631
https://gyazo.com/b257df32dafddc1c62d42e6d2d8eb009
https://dictionary.goo.ne.jp/word/コミュニティー/
デジタル大辞泉では、かなり狭義の、元来のコミュニティについて書かれていますね
いわゆるゲマインシャフトの方
https://gyazo.com/dde4eb8508f8f140cb81c6b79bb88e8e
https://kotobank.jp/word/ゲマインシャフト-59943
ゲマインシャフトのこともいちおう押さえておきましょう
https://gyazo.com/34932711f01e895eb73356216f3e6638
https://kotobank.jp/word/ゲゼルシャフト-59451
ゲマインシャフトと対をなす概念であるゲゼルシャフトのことも見ておきましょう
今日、この場でみなさんと口にしている「コミュニティ」はゲゼルシャフトに寄ったものであると言えますね
https://gyazo.com/f3c9977c5cc80308d7cb7930021f4ee0
書籍『People Powered』にて Jono Bacon はこんなふうに説明していました
日本語訳の方から引用しています
ジョノ・ベーコン. 遠くへ行きたければ、みんなで行け ~「ビジネス」「ブランド」「チーム」を変革するコミュニティの原則 (p.45). 株式会社技術評論社. Kindle 版.
https://gyazo.com/2a7c3cfd373bba50ef88bf4da819bfe9
https://listen.style/p/hyper-startup/arplnscf
最近ぼくが聴いたハイパー起業ラジオというポッドキャスト番組のエピソードにて、kensuu さんはこのような定義を示していました
https://gyazo.com/beece1085f1d8b4bb2f29f505cca7a36
https://note.com/tales_and_tokens/n/ne4f76b26c86e
sasakill さんは「資産」を中心に考える定義を導入しています
https://gyazo.com/4fd22210af6029ac1ab07aa68a5d7f1d
https://magazine.rubyist.net/articles/0028/0028-ForeWord.html
ぼくがコミュニティについて何かを話すときには必ず参照する takahashim さんの文章です
まだ読んだことがないという人は、ぜひ読んでみてください
https://gyazo.com/cd539b636fbe9186c1ababac25a9d03b
さて、今日のこの場では、コミュニティを「資産を共有する集まり」と捉えて、以降の話を展開してみたいと思います
sasakill さんは「狭義に」と前置いていましたが、ぼくが思い浮かべるコミュニティはどれも、この定義にもとづいて説明できそうで、言うほど狭い定義にはなっていないと感じています
個人的にとても好みの定義です
https://gyazo.com/8650494be23d9819d8d8ee9bf06bdd2c
https://gyazo.com/26965941e1b1c4adedd0c1f7ec4c9117
先に紹介した、ぼくが参加しているコミュニティの一部です
それぞれのコミュニティにおける「共有している資産」は、なんでしょうか?
たとえば 2007 〜 2008 年をふりかえって思い起こす当時のRuby札幌の資産は「札幌で Ruby やソフトウェア開発について楽しく盛り上がれる場」と言えるんじゃないかと思います
研修当日は、他のコミュニティについても具体的なエピソードを交えながら「このコミュニティには、こういう資産がある」と紹介していきました
資産、つまり「なにかを大切に想っている人々」の集まりなわけなので
資産価値を高めるような関わり方をしたら、よろこばれることでしょう
資産価値を毀損するような関わり方をしたら、いやがられることでしょう
「これは自分も大事にしたい!」と思えたら、そういう気持ちで関わっていったらよいと思います
https://gyazo.com/a835c308f63d739b58324a639a5717f6
https://gyazo.com/a0d6e1c9e58e1159b50743904215316a
もしペパボに身を置くみなさんが「ペパボには、共有している資産がある」と感じているならば、その資産の周辺にコミュニティが存在していると解釈できるでしょう
会社も、コミュニティのひとつの形態であると言えますね
ところで、すでに退職しているぼくも「ペパボに縁のある人々」との間で共有しているナニカがあると感じています
かつていっしょに働いていた人をキマグレエフエムというポッドキャスト番組をやっていたり
かつていっしょに働いていた人と、今は別の現場でごいっしょしていて「仕事しやすい!」と感じていたり
https://gyazo.com/3574f2c8b7a4bf751813a0ceb35eb9c5
ぼくから見て、ペパボという会社は「コミュニティ」として運用されているように見えています
みなさんが入社してからこうした研修や実践を通じて体得していっている「会社との、いい付き合い方」があるんじゃないかと思います
「会社で、こういうことをするとよろこばれる」と感じられるものがあれば、それは他のコミュニティでも同じようによろこばれる可能性が高いと思います
もちろん、バイブスが合わないコミュニティはあるでしょうから、差異に興味を持てたら探求してみるとして、どうしても合わなかったら無理に付き合うことなく距離を置けばよいでしょう
https://gyazo.com/f45b53beaf6742d36a4848259b79a490
https://ttj.paiza.jp/archives/2021/09/15/980/
御社の作家 antipop さんも「コミュニティとしてのエンジニアチーム」と直接的な表現で説明されることもありますね
https://gyazo.com/b411acd93d018c610d18067f42aa532f
https://gyazo.com/a096c428c5b4e5dc3122030e0b30b617
ここからは、事前に周知させてもらったアンケートへの回答の一部を見ながら、御社の人々がコミュニティからどんなものを受け取っていると語っているか、いっしょに見ていきましょう
https://gyazo.com/1217cfa542065e46fb3bea3fcc1ade6b
https://gyazo.com/45171dadc8e120da2eb72db10dbbfce1https://gyazo.com/2f62662c8607c1194e438e16c4ad94b7
https://gyazo.com/e814e2e643acd0e543479f24f98a867chttps://gyazo.com/533f15862cbbd688557f80607f63681d
https://gyazo.com/79bdfa23a93881c1d27d4fa0698753dfhttps://gyazo.com/ae0c0ebdeabd6a312f0132c290f6b744
https://gyazo.com/d3c36264ef330a33a60e515443e703e8https://gyazo.com/b5eada560da83db3f0164aa5887f85b1
https://gyazo.com/846d820462468a7287cb3e1a84366e30
https://gyazo.com/54756abc94aecb466155a5584bc6d53e
回答内容のすべてに目を通してサマライズしていたら、自分にとっておもしろい発見がありました
回答してくれたみなさんが「コミュニティから受け取っているもの」として挙げてくれたものの半分以上は、なかなか捉えどころのない、感覚的なものでした
「情報」「知識」「知見」のようなものは、わかりやすく扱いやすいと思います
なんだったら、コミュニティに参加しなくても、その場に行かなくても、コピーされたものを受信できそうです
一方で「刺激になった」「視野が広がった」「楽しかった」などは極めて主観的で、曖昧で、これをそのまま聞かされても「そうなんですね」くらいのことしか言えないかもしれません
だからこそ、自分の身を投じて参加する意味がある、ということでしょうか
特筆すべきは、回答してくれたのは「言語の扱いに長けた人々である」ということです
語彙力がなくてこういった回答になっているわけではない、とぼくは見ています
言語を扱うことを生業とし言語感覚に優れた人たちが「身体感覚」に強く紐づくであろう「刺激」「視野」といったことをしきりに言っているわけで、これはおもしろい状況だと思いました
https://gyazo.com/e655f4b4c1d41f2a2f4aa3c5f9c2f032
https://gyazo.com/09346f6b56f87202028ec69d7392522d
https://gyazo.com/a214c22ca0343e790431aa84c499d9bc
https://gyazo.com/0d195c5ba549e655d52f7286dbcabbb8
ぼくの考えもうまくまとまっていない感覚はありつつ、2024-06-14 の時点でのスナップショットをお伝えしました
これまで「言語化は大事」と主張してきた回数は数知れず、だけれども…?
業務でソフトウェア開発に関わるとき、実は「身体知」も使いまくっているかも、と研修準備中に思い至りました
プロダクトのミーティングに出ていて「なんか、この場は仕切り直した方がよさそうだな?」と感じたり
「これは Slack 上のテキストでの会話を続けずに、ボイスチャットで話した方がよさそう」と感じたり
「この Pull Request は、なんかよろしくない雰囲気がある…」と感じたり
もちろん、こうして検知したものを他者に伝えるときには整理して言語化した上で伝えますが、検知自体は、肌感覚でやっているんじゃないかと思います
アジャイルソフトウェア開発を実践するとき、身体知を駆動しまくっている感覚があります
みなさんはどうですか?これはいろんな人と話してみたいテーマです
https://gyazo.com/3f0b8240df4057281b8b91aff22fabe1
https://gyazo.com/20a6b8d9e724af5d2356fc8f789956de
最後に、受講者のみなさんを "あなた" として、ここまでに展開してきた材料を組み合わせながら、いただいたお題にひとつずつ回答していく時間を過ごしました
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追加 DLC
2024-06-15 に収録したキマグレエフエムのエピソードで、研修当日にカバーできなかった部分を話しました。
【224】コミュニティ産 - キマグレエフエム - LISTEN に、コンピュータによる書き起こしもあります。
https://open.spotify.com/episode/3J0svL4lIBqvwwdNwhpTAl
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2021-08-26 に自分が使った資料、今回の準備を始めるにあたって見返した
mascot character logo design
結局、資料には盛り込まなかったけれど Simon Oxley のことも話したかったんだよな
【Interview】「若者よ、旅に出よ!」オクトキャットの生みの親、Simon Oxleyさん | 株式会社ヌーラボ(Nulab inc.)
増井俊之
masui さんの話もしたかった
GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代 (単行本) | アダム グラント, 楠木 建 |本 | 通販 | Amazon
コミュニティに絡めて「Giver / Taker / Matcher」の話をする案もあった