公正世界仮説
日の当たらない場所であっても、地道に誠実に努力すれば、いつかきっと報われる、という考え方をする人は少なくありません。つまり「世界は公正であるべきだし、実際にそうだ」と考える人です。
このような世界観を、社会心理学では「公正世界仮説」と呼びます。公正世界仮説を初めて提唱したのが、正義感の研究で先駆的な業績を挙げたメルビン・ラーナーでした。
この数字を見ればグラッドウェルの主張する「一万時間の法則」が、いかに人をミスリードするタチの悪い主張かということがよくわかります。「努力は報われる」という主張には一種の世界観が反映されていて非常に美しく響きます。しかしそれは願望でしかなく、現実の世界はそうではないということを直視しなければ、「自分の人生」を有意義に豊かに生きることは難しいでしょう。
1999年のことですが、意に反して早期退職優遇制度を勧められたグループ企業(ブリヂストンスポーツ)の 58 歳の課長が、ブリヂストン本社の社長室に押し入って切腹するという事件がありました。社長室に押し入った男性の抗議文が残っているのですが、その一部に次のような箇所があります。
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公正世界仮説(こうせいせかいかせつ、just-world hypothesis)または公正世界誤謬(こうせいせかいごびゅう、just-world fallacy)とは、この世界は人間の行いに対して公正な結果が返ってくる公正世界 (just-world) である、と考える認知バイアス、もしくは仮説である。