ブラザー・ペナルティ
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弟がいる長女vs妹がいる長女
研究が進んでいるのは、デンマークです。デンマークの研究で注目しているのは、第1子が女の子(長女)である場合です。ここで第2子が男の子(弟)なのか、それとも女の子(妹)なのかによって、長女のその後の人生に変化が生じるのか、という点が検証されています。
長女・長男という組み合わせや長女・次女という組み合わせは日本でもよく見かけますが、この二つのパターンでどのような違いが生じるのでしょうか。
この点を分析したのがチューリッヒ大学のアン・アルディラ・ブレノエ助教です(*3)。この研究では1980~2016年のデンマーク政府の行政データを使用しており、なんと、デンマークの全国民を分析対象としています。といっても、デンマークは全人口約586万人の比較的小さな国であるため、最終的な分析対象となった長女のサンプルは、約10万人でした。
さて、このデンマークのデータを用いた分析の結果、何がわかったのでしょうか。ブレノエ助教の分析によれば、弟がいる長女と妹がいる長女では学業、仕事、家族面で違いが見られることがわかったのです。
まず学業面については、弟がいる長女の場合ほど、STEM(科学・技術・工学・数学)の分野を専攻する割合が約7.4%低くなっていました。弟がいる長女ほど、理工系よりも、文系を学ぶ割合が高いと言えます。
続いて仕事面ですが、妹がいる長女と比較して、弟がいる長女の場合ほど、職場における男性比率が約1.2%低く、STEMの分野で働く割合が約7.3%低くなっていました。つまり、弟がいる長女ほど、成長後に働く職場の男性比率や、理工・数学系の分野で働く割合が低くなっていたのです。
また、長女にパートナーがいる場合、そのパートナーの働く職種における女性比率も、弟がいる長女の場合ほど約2%低くなっていました。弟がいる長女のパートナーほど、女性比率が低い職場、逆を言えば、男性比率のやや高い職場で働く傾向があったのです。
詳しくはリンク先の記事を見てもらうのがよい。いやー、タイトルを見て「えっ、そんなことある!?」と思ったけれど、読めば読むほど「そういう影響はあるかもなあ、はあ…」と思ってしまって、不思議な気持ちになっている。
このように、「父親は男の子」と「母親は女の子」とともに過ごす時間が多くなるため、「長女・弟」の場合だと、より同性の親の影響を強く受けるようになります。子どもはこの中でさまざまな行動や考え方、社会的規範も学んでいきます。
この結果、「長女・妹」と比較して、「長女・弟」の場合ほど、より伝統的な性別役割分業意識を持つようになると考えられます。
兄弟姉妹にいろんな性別の人がいた方が「多様」にはなる気がするが、男女混合の兄弟姉妹がいると「父 + 息子」「母 + 娘」でチームがわかれるのは、おおいにありそうだな〜と感じる。その結果、ジェンダー・ステレオタイプが強化されるのだとしたら、なんというか、皮肉なものだな…と思ったり。 自分も気付かずうちに構造の罠にハマってなにかのバイアスを強化していること、ありそうだなあ。軽い放心状態になった。