ファイルという単位に慣れすぎているかもしれない
Lu:実はこの考え方自体は新しいものではありません。1960年代から70年代にかけて活躍したコンピューターサイエンスの先駆者たちの考えがベースになっています。彼らはコンピューターというツールを使って、物理世界の法則に縛られずに情報をやり取りすることに関して、たくさんの興味深いアイデアを持っていました。
しかし、現在に至るまで彼らのアイデアの多くは実現されていない。今実際に私たちがコンピューター上で使っているツールの多くは、現実世界にあるものの置き換えに過ぎません。たとえば、『Word』は紙と鉛筆でつくったドキュメントの置き換えですし、『Excel』は計算表の置き換えですよね。
そういったツールを用いて作成されるデータは、「ファイル」という形式にとらわれていて、ファイルの外には情報が流れていかないような状態になっている。たしかに、紙と鉛筆で文章を書いたり、計算したりするよりも便利であることは間違いありません。しかし、データの流動性の低さという意味においては、現実世界となんら変わりはないと言ってもいいでしょう。
Lu:そうです。『Notion』は「現実世界にあるツールの代替」として設計していません。私たちが実現したいと思っているのは、情報を一箇所にまとめ、個別のファイルという形式にとらわれずに扱えるようすること。そして、それらの情報にあらゆる人が容易にアクセスできるようにすることです。
それらを実現するためには、既存のファイルという形式ではない統一のフォーマットで情報を保存できるようにする必要がある。そして、その情報をいつでも変更できるような、柔軟性を持った形にしなければならない。
既存のファイル形式では、自由に情報を統合したり、移管したりすることができません。いかにしてそういった情報の取り扱い方が可能になるのかを考えた末、たどり着いたのが「ブロック」だったんです。
2019-11-03 に hmsk.icon の時間をもらって Notion についてあれこれ教えてもらって、それ以降は日常的にずっと触れているから自分もある程度は Notion のことはわかっているつもりだった。どういう機能があって、どういう使い方をすると便利か、という表層的なところは、たしかにそれなりにわかっているのだろう。ただ、設計の根幹にある「ファイルじゃないよ」という観点は、うっすら感じてはいたかもしれないけれど言語化して整理できるほどには理解できていなかったのだ。悔しいね〜。 hr.icon
ここの Scrapbox に「日記」と呼ぶことにした日々の記録をつけて 2 年以上が経つ。1 日ごとにページをつくっていて、これはファイル的な発想の上に設計されたシステムだな、と思うようになった。 ためしに「ファイルっぽくない感じで日記的なシステムを運用するとしたら…?」と考えてみるとおもしろかった。どうして人類はブログや日記のシステムを自作してしまいたくなるのか。 ぼくが便宜上「日記」と呼んでいるやつは、紙の日記帳に書くようなザ・日記を目指しているわけではなくて、もうちょっとライフログ寄りな方が好みかもしれない 古典的なウェブサイトでは「ひとつのページ = ひとつの HTML ファイル」という関係が成り立った
この感覚が今でもぼくのメンタルモデルに強い先入観を与えているように思う テキスト、写真、動画、リンク、引用、…と書き出していくと Tumblr を思い出すなあ https://gyazo.com/ddb072e780c787d33bb05a3ef44920c6
「こんな写真を撮った」「この映画を観た」「このウェブページをブックマークした」みたいにブロック単位でぽんぽんと投稿していくと、タイムスタンプをキーにして「◯年◯月◯日」のページがつくられて、見る人にはそれが日記的なものに見える ブロックにカテゴリやタグといった整理のメタデータを付与できると「いつどの漫画を読んだかをカレンダー表示で」「いつどの映画を観たかをカレンダー表示で」のようなページを柔軟に生成できる ひさしぶりにログインして何日か触ってみよう