ネットワーク効果、コンポーザビリティ、入力と出力、パイプライン
TAKRAM RADIO の Vol.176 でファーメンステーションの酒井里奈さんのお話を聴いていて考えたことなどをメモしていく。
https://open.spotify.com/episode/6snc16IXdvNmVXDEBEMblK
『リンゴだったサニタイザー』というアイディア、おもしろいと感じた。
発酵の力で、りんごの搾りかすを除菌スプレーに。「リンゴだったサニタイザー」|マクアケ
https://scrapbox.io/files/64267266d7db36001bed54a3.webp
私たちは、発酵の力で廃棄されるものに価値を生み出すことに挑戦する、研究開発型スタートアップです。
「リンゴだったサニタイザー」は、心地よさを追求して開発した商品です。私たちの生活には「除菌」が欠かせないものになりましたが、除菌を明るく楽しい気持ちで行なっている人は少ないと思います。ツンとした刺激的な匂い、手荒れや不快感。そんな気が重くなる毎日の除菌をポジティブにするために、やさしい香りや手触りにこだわって開発しました。
「シュッ」と吹きかけると、さわやかなりんごの香りが広がります。「香料」は一切使用せず、原材料であるりんご自体の香りを抽出しているのはファーメンステーションの独自技術によるものです。香料だけでなく、その他の添加物も一切使用していません。
おもしろいと感じるポイント
「除菌」「消毒」といった、おそらく「わずらわしい」「がまんしてやる」となっている対象を、さわやかな香りや手触りによってポジティブに転換しようとしている
りんごの「搾りかす」という廃棄されがちなものを原料として活用している
廃棄物をプロダクトの強みに変換させるところに、独自のテクノロジが使われている
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『Oxygen Not Included』で遊んでいると、資源の入力と出力を強く意識することになる。ここにこれを入力すると、出力としてこれが得られる。資源の変換、交換。うまいことパイプラインを設計できると資源の循環の環が生まれ、より長く持続できるシステムとなる。
『リンゴだったサニタイザー』には循環の一部を担う役割を感じた。産業においても生態系・エコシステムのような観点を持ち込み、なにかの活動の出力が別の活動の入力となるような、そんなネットワークを描けたら楽しい。すでにそういう事例はたくさんあると思うのだけれど、ぼくにそういう視点がなかったので見落とし続けてきたのではないかと思う。
「ネットワーク効果」というと、参加者が多いシステムにはより強い求心力がはたらくからユーザを囲い込みできて便利、みたいな一面を感じてきたけれど。これは対象の「内部」にネットワークを形成する話。それよりも対象の「外部」にネットワークのリンクが生えて、システム同士がつながってメタ・ネットワークを形成していくことを考えた方がテンションが上がる。かっこいい。
「囲い込み」は、システムに境界線を持ち込んで「ウチ」と「ソト」を定義してウチに閉じ込めること。コンポーザビリティを突き詰めていくと、なにもかもが接続されてこの世界のすべてをウチとして取り込んでしまうようなシステムを描けるかもしれない。ウェブとハイパーリンクは素朴にそう。エクスクルージョンよりもインクルージョンによって価値を生み出す。
これまでずっとソフトウェアに関することばかりやってきたからか「産業廃棄物」に対する着眼が弱かったかもしれない。物理的に捨てなきゃいけないものって、あまりないもんね。もうちょっと論理的に考えてみると、HTTP で取得したけれど参照することなく捨ててしまった JSON データの中のあるプロパティの値とか、そういうのを有効活用できたらおもしろいのかもしれない。