(書きかけ) 書籍『People Powered』の読書メモ
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翻訳者による序文
カルト的な集団は必ず、「自分たち以外との関係を遮断させよう」とする。勧誘をさせてマトモな人と付き合わなくさせるとか、自分たちの副業を勧めるとともに会社をやめるよう促すとか、素人の思いつきを勧めつつ大学などのマトモな勉強をやめさせようとするなどの手段で。本書では、人間は多くのコミュニティに同時に接続できるし、そのほうがいいことがきちんと説明されている。
それこそが、カルトや搾取に陥らず、かつ会議ばかりで前に進まない小田原評定やエコヒイキに陥らないコミュニティの活かし方だろう。
この故事から、現在では小田原評定という言葉は「長引くだけで、いつになっても結論の出ない会議や議論」という意味での比喩表現として使われる。
「伽藍とバザール」から本書へ
本書はエンジニア向けに書かれた本ではなく,コミュニティをもっと上手に活用しようと考えるすべての人に向けて書かれた本だ。一方で著者のジョノ・ベーコンや解説の関治之さん,監訳の山形さんも僕もエンジニアの経験がある。関さんの解説には,彼が代表理事を務めるCode for Japan が,オープンソースの開発手法がどう役に立つのかについての名論文「伽藍とバザール」から始まったことが書かれている。テクニカルな細かい側面は置いといて,オープンソース・ソフトウェアの開発のやりかたそのものが,ソフトウェア開発を超えてさまざまな活動やビジネスに波及して,世界を変えているのはまちがいない。
1999 年に書かれた「伽藍とバザール」を無償で翻訳してネット公開して日本で紹介してくれた(しかも,続編ほか三部作ぜんぶ)のが,本書の監訳の山形浩生さんが中心になったフリー翻訳プロジェクト「プロジェクト杉田玄白」だ。僕がオープンソースに関心を持って,今まで活動しているのも「伽藍とバザール」がきっかけになっている。その意味で伽藍とバザールの原書英語版からプロジェクト杉田玄白,Code for Japan,そして本書の日本語版に至る20年以上の流れそのものが,「ピープル・パワード」であると言えるだろう。 もしも読者がエンジニアで,まだ「伽藍とバザール」ほか三部作を読んでいないなら,ぜひ合わせて読んでもらいたい。リーダーシップやプロジェクトの進め方などについて,本書と共通する点は多い。
むしろぼくは、ソフトウェア(そしてあらゆる創造的またはプロフェッショナルな仕事)についての、もっと広い教訓をここで提示してみたい。人間は仕事をす るとき、それが最適な挑戦ゾーンになっていると、いちばん嬉しい。簡単すぎて退屈でもいけないし、達成不可能なほどむずかしくてもダメだ。シヤワセなプロ グラマは、使いこなされていないこともなく、どうしようもない目標や、ストレスだらけのプロセスの摩擦でげんなりしていない。楽しみが能率をあげる。
自分の仕事のプロセスにびくびくゲロゲロ状態で関わり合う(それがつきはなした皮肉なやりかただったとしても)というのは、それ自体が、そのプロセスの 失敗を告げるものととらえるべきだ。楽しさ、ユーモア、遊び心は、まさに財産だ。ぼくがさっき、「シヤワセな集団」という表現を使ったのは、別に「シ」の 頭韻のためだけじゃないし、Linuxのマスコットがぬくぬくした幼形成熟(ネオテニー)っぽいペンギンなのもただの冗談じゃあない。
オープンソースの成功のいちばんだいじな影響の一つというのは、いちばん頭のいい仕事の仕方は遊ぶことだということを教えてくれることかもしれない。