読書におけるデジタル選好の規定因――文書内容と媒体への慣れの影響――
本論文の扱う「問い」
人はどのような条件のもとで,紙ではなくデジタル媒体による読書を好むのか? 読む内容や媒体への慣れは,その選好に関係するのか?
本論文のここが面白い!
「便利だから」だけでは,人はデジタル読書を選ばない ――本研究は, 日本の大学生 258 名を対象に,読む内容の種類(小説・まんが・実用書)や読書経験の違いが,読書媒体の選好にどのように関係するかを検討しました.分析の結果,媒体に対する「見やすさ」「繰り返し読みやすさ」といった主観的評価,およびデジタルへの心理的慣れが,選好に有意に関係することが明らかになりました.一方,読書量や読むジャンルの違いは,選好に大きな影響を与えていませんでした.媒体選好は,物理的な利便性よりも,使用経験や心理的な親しみ,「どれだけ使い慣れていて,どう感じているか」が影響することを示し,教材設計や学習支援における媒体選択の方針に有益な示唆を与えると考えられます.