学習者のパフォーマンスを高精度に予測するDeep-IRT
本論文の扱う「問い」
教育において重要な課題は,「学習者は何がわかっていないのか」,「どの程度の支援を行えば良いのか」を教師が正確に把握することです.これまで教師の経験から考えられてきたこの課題を,機械学習を用いることで解決できないか,というのが本論文の問いです.
本論文のここが面白い!
本論文では,機械学習を用いて教育ビッグデータを分析することにより,学習者の特性や成長に合わせて適切な問題提供・学習支援を行うことを目的としています.具体的には,学習履歴データから学習過程での学習者の習熟度(理解度)の変化と課題への正答・誤答を予測することで,得意分野・苦手分野を把握します.これまでの研究では,学習者の課題への正誤を高精度に予測する手法として多くの深層学習手法が開発されてきました.しかし,これらの手法は教育的な解釈性をもたないために,学習者や教師への習熟度変化のフィードバックができませんでした.そこで,本論文では高精度な正誤予測と教育的解釈性を両立する手法を開発し,「複数の学習範囲における習熟度変化」と「課題の難易度」を利用者へフィードバックできることを示しました(図).学習者自身は知識の定着していない学習分野を自ら把握し,学習する機会を与え,教師は個々の学習者や課題の特性を把握できます.これは教師が学習資料を作成・改善するうえでも重要な情報で,学習者へのアプローチと教材の質の向上に効果的であると期待されています.
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