学習コンパニオンロボットによる「Peerさ」形成に関する実験的検証 ー長期的非言語インタラクションによる競争感誘発の可能性ー
本論文の扱う「問い」
本研究の中心的な問いは,ロボットによる長期的な非言語情報提示によって,学習者にロボットを「Peer(学習を行う仲間)」である感(以降「Peer さ」)の印象を高めることが可能であるかということです.
ロボットによる学習支援研究は数多く存在しているなか,その大半は言語情報ベースでかつさまざまな役割(教師的役割,劣っている立場の役割)を状況に応じて演じ分けるものや教師的役割のみを振る舞うものでした.しかしながら,われわれの学びの中には同じ立場の仲間との間で行われる学び(Peer Learning)が存在しており,そこでは学習者の主体性が必然的に促されるものとなっています.社会的に見ても,主体性を育む教育への注目度は高まっています.われわれはそういった主体性に影響を与える Peer Learning に可能性を感じ,学習者のロボットに対する Peer さ形成による Peer Learning 環境の構築を目指しました.また,われわれは非言語情報が持つ曖昧性がもたらす学習者の教師の意図推定にも着目しており,学習者の自律性の向上ならびにそれに伴う主体性を促進させることに繋がると考え,非言語情報の提示のみによるPeer さ形成を目指しました.
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このような考えの下,われわれはロボットの非言語情報による Peer さ印象の形成を目指しました.また,Peer さと非言語情報が学習者の自律性に対して影響を与えるものであると考えたため,自律性形成までの流れをモデル化しました.これにより,非言語情報による Peer さ形成を行うことで,学習者の自律性を促進し,内発的動機づけに繋がる可能性が考えられました.そこでわれわれは,ロボットの非言語情報提示による Peer さ形成によって学習者の内発的動機づけを高めることを目指し,Peer さ形成の可能性について調査をしてきました.そのなかで Peer さ形成の 1 要因である「競争感」の誘発が短期間では行われず,本研究において長期的インタラクションでの検討を行いました.実験の結果,1 日の中においての競争感誘発ならびにそれに伴う Peer さ形成の可能性が示唆されました.また,非言語情報によってロボットを擬人化して捉えることによる自律性促進の可能性も示唆されました.今後は,Peer さ形成による自律性促進を伴う内発的動機づけの促進について検証を行う予定です.