マルチモーダルインタラクションアウェアなCSCL システムの開発・運用・分析を支援する統合プラットフォーム
本論文の扱う「問い」
マルチモーダル情報の統合処理を可能とする CSCLシステムライフサイクルの開発・運用・分析活動サイクルを支える仕組みとは?
本論文のここが面白い!
本論文は,協調学習支援システム(CSCL システム)のシステム開発・運用・分析のライフサイクル(図)を持続的に支える統合プラットフォームを提案しています.
本プラットフォームの特色(面白さ)は,多人数対話で観測される発話や視線,身振りといった複数の社会的シグナルを組み合わせたマルチモーダルインタラクション情報を,教育実践者の教育的意図を具現化する「開発者」と,協調学習インタラクション結果を教育的意図の観点から分析する「分析者」が明示的に扱える仕組みを提供している点にあります.
プラットフォームに求められる設計理念として,以下の 2 点を掲げています.
• 理念 1:開発者・分析者各々が対象とする協調学習に応じた高次の学習ツール開発・分析活動に注力できること
• 理念 2:開発者が学習ツールに込めた意図・分析者の分析結果を互いに反映できる形で CSCL システムライフサイクルの循環を支える仕組みを備えること
本論文では,先行研究で開発を進めてきた CSCL システム開発・運用環境をこれらの理念のもとに位置づけることに加えて,分析者の活動を支援する協調学習インタラクション情報の分析支援環境を新たに構築しました.この支援環境では,マルチモーダルインタラクションの分析手法を参照した分析の基本機能(理念1 の具体化:データ可視化機能,アノテーション付与機能,分析データ出力機能)を備えるとともに,言語・非言語情報に加え,開発者が学習ツールに規定したインタラクションイベント情報を統合して分析可能とする支援機能(理念 2 の具体化:ロール規定機能,解釈パターンデータ抽出機能)を備えるという特徴を持ちます.
統合プラットフォームの運用を通じた有用性の確認は今後の課題として残されていますが,プラットフォームがあることにより原理的に可能となる CSCLシステムライフサイクルに即した循環シナリオを論じるとともに,統合プラットフォームの学術的意義を整理して議論しています.
裏話となりますが,プラットフォームの設計論に着目した研究課題をどのように意義深く論じることができるのか,論文構成から一言一句に至るまで悩みこだわりながら執筆を試みました.普段目にされる論文とは異色の構成内容で,読み取り難いと感じられる方もおられるかもしれませんが…この点についても本論文の「面白さ」としてご一読いただけますと幸いです.
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