シェアリングエコノミーのビジネスモデルに関する大学生向け学習手法の設計
本論文の扱う「問い」
企業経験のない大学生が,ビジネスモデルの抽象的な構成概念を理解することを支援する学習設計は?
本論文のここが面白い!
ビジネスモデルは,企業が収益を得る仕組みを抽象的な概念で表現したものです.同じビジネスモデルを分野の異なる産業に応用したり,新たなビジネスモデルが IT の活用で可能になるなど,経営者だけでなく,学生が進路を考える上でもビジネスモデルの視点は有益と考えられます.一方で,抽象的な概念であるために,理解を深めるには具体的な事例との対応付けが必要となります.しかし,企業経験のない大学生がこのような対応付けを自ら行うのは困難が伴うと考えられます.
本研究は,このようなビジネスモデルを大学生が能動的に学ぶための学習設計を提案しています.学習対象は,近年の IT の進化に伴って多様な分野への適用が拡大しているシェアリングエコノミーとしました.図に示すように,ビジネスモデルの構成概念を,ある分野の事例から抽象化させ,それを他の異なる分野の事例に再具体化させる,という課題に取り組ませます.シェアリングエコノミーが,従来のビジネスと異なる最大の特徴は,サービスを提供するのも受けるのも個人で,事業者はそのマッチングに徹する,ということです.それを核として「ネットワーク外部性」や「ロングテール」などの概念・性質を活かしたビジネスモデルが成り立っています.実験の結果,抽象化の段階で「サービスを提供するのが事業者ではなく個人」という特徴を表出できた学習者が,再具体化でもビジネスモデルの構成概念を用いて別の事例を解釈できていることが確認できました.
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