第6 間接事実の総合
1 間接事実の総合の思考パターン
各間接事実を検討した後,それらの間接事実を総合すると,犯人と被告人の同一性を認定できるかどうか,を検討する。
図式的に説明すれば,以下のような思考パターン。
code:パターン
(1)間接事実ⅰの推認力が80%,間接事実ⅱの推認力が60%,間接事実ⅲの推認力が30%,とする。
(2)とすると,各間接事実の,被告人が犯人ではない可能性は,間接事実ⅰが20%,間接事実ⅱが40%,間接事実ⅲが70%,です。
(3)したがって,間接事実ⅰだけだと,被告人が犯人ではない可能性は20%ですが,間接事実ⅱが加わると,その可能性は,20%×40%=8%,さらに,間接事実ⅲも加わると,20%×40%×70%=5.6%。
(4)となれば,この三つの間接事実を総合すれば,被告人が犯人である可能性は,94.4%。これくらいあれば,合理的な疑いを超えた証明,といえる。
2 起案における決まり文句
この思考プロセスを表現するには,次のような決まり切った文言を使う。
code:決まり文句
争点については,強い推認力をもつ間接事実ⅰがある上,相当程度強い推認力を持つ間接事実ⅱ,弱いながら積極方向の推認力を持つ間接事実ⅲも存在する。
これらの間接事実が偶然に重なることは考えがたいので,要証事実である犯人と被告人の同一性につき,合理的な疑いを超えて,認定することができる。