第1 犯人と被告人の同一性(問題)
code:[事例]
1 平成20年10月20日(月)午後9時05分,西天満の大阪弁護士会館南側路上で,ぼやが発生。
たまたまその付近にたむろしていた司法修習生らによって,消し止められる。
現場には発火の原因が見当たらないため,放火と思われる。
2 司法修習生のひとりK田君は,午後9時08分ころ,弁護士会館北側の物陰(法務局のほう)から現場を伺う不審な男を発見。
K田君によれば,不審男の服装は,白の半袖ポロシャツと緑色のハーフパンツ。靴はサンダル。赤色の帽子をかぶる。
K田君が近づいていくと,不審男は,大阪地方裁判所の方へ逃走。
K田君とS地さんが追いかけるが,男は裁判所の敷地に入ってしまい,見失う。
3(1) 現場には,ぼやの燃え残りの少年ジャンプ(今週号)が残されていた。また,たばこの吸い殻1本(マイルドシックス)が落ちていた。
(2) また,不審男が最初に目撃された場所に,サンダルの片方(右足・ニューバランス)が落ちていた。さらに,たばこの吸い殻2本(マイルドシックス)が落ちていた。
4(1) K田君らは,隣の警察に報告。
(2) 警察官が裁判所敷地内を巡回すると,裁判所北門隣の木の上に潜んでいるAを発見(午後9時18分)。
(3) Aの格好は,白色の半袖ポロシャツ(ユニクロ・ドライタイプ),緑色のハーフパンツ(ユニクロ・ドライタイプ),広島カープの帽子,靴は左足にのみニューバランスのサンダルを履いており,右足は素足。
(4) 警察官がAの所持品検査を任意で行うと,Aの持ち物は,ズボン右ポケットに財布,左ポケットに携帯灰皿,ズボンのおしりのポケットに懸賞応募用の葉書。
財布の中身は,小銭入れの方には587円,札入れの方にはレシートが一枚,その他は何も入っておらず。
レシートは,大阪地裁の北に行った曾根崎通り沿いのローソンのもので,購入日時は平成20年10月20日午後8時42分,購入品は,ⅰ少年ジャンプ(今週号),ⅱ簡易ライター,ⅲたばこ1箱(マイルドシックス,20本入り。)
携帯灰皿の中には,吸い殻が10本(マイルドシックス)。
懸賞応募用葉書は,今週号の少年ジャンプに綴じ込まれていたもの。
5(1) 興奮冷めやらぬK田君らが付近を捜索していると,法務局の街路樹の下に,真新しい簡易ライターと,たばこ(マイルドシックス,まだ7本残っている)が落ちていた。
(2) ライターを調べると,指紋が検出される。
(3) この指紋は,Aの指紋と一致する。
6(1) また,警察が,燃え残りの少年ジャンプを調べると,懸賞葉書は破りとられていた。
(2) 少年ジャンプの破り目は,Aのポケットから出てきた懸賞葉書の破り目と一致。
7(1) Aは,自らが放火の犯人であることを否認。
(2) 裁判所の木の上にいた理由について,散歩してたら裁判所に入りたくなったから入ったのだ。北門が閉まっていたので,門を乗り越えて外に出るために,まず木に登ったのだ,と弁解。
(3) レシート記載の買物をしたことは認める。
(4) 少年ジャンプについては,読み終わったから天満警察署の前あたりに捨てた(「私はワンピースしか読まないからすぐ読めちゃうんだ」と述べる),懸賞品のワンピースストラップがほしかったから,懸賞葉書は破ってとっておいた,と弁解。
(5) たばこ,ライターは,たばこを全部吸い尽くしたので,ライターと共に法務局のあたりに捨てた,と弁解する。
code:[問題1]
1 Aは本件放火の犯人であると認定できるか
2 証拠構造は何か
3 間接事実としてはどんなものが挙げられるか
4 それぞれの間接事実の認定及び推認力はどうか
5 供述の信用性判断は必要か 誰の供述を,どの観点から判断したらよいか
6 間接事実を総合すると,Aは犯人と認定できるか
7 Aの弁解はどうか これによって推認は覆るか
code:[問題2]
1 起案の大きな構成(第1,第2レベル)を作成してみましょう
2 間接事実図を作成してみましょう
3 各間接事実認定の構成を作成してみましょう