詐欺師入門
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デイヴィッド・W・モラー・著 山本光伸・訳 光文社
◆目次◆
はじめに
序
第1章 「信用詐欺師」の醍醐味
第2章 舞台装置をつくる
第3章 カモの“欲”につけ込む
第4章 カモを分析する
第5章 一流になるための条件
第6章 日常生活の送り方
第7章 いざというときの保険
第8章 小銭もマメに稼ぐ
第9章 専門用語に精通する
名著復刊に寄せて ルク・サンテ
信用詐欺用語辞典
本日ご紹介する一冊は、信用詐欺研究の古典的名著で、映画『スティング』のネタ本になった一冊。
著者のデイヴィッド・W・モラー氏は、言語学者であり、特に犯罪と犯罪者の言葉についての研究で知られる人物。1937年から1972年まで、ルイヴィル大学の教授を務めた方だそうです。
詐欺師たちがチーム戦で一人の人物をどう騙すか、いわゆる「カモ」の心理の移り変わりも描写しながら、ストーリー形式で紹介する、変わった手法をとっています。
百科事典形式を好む方は、こちらも古典名著ですが、『詐欺とペテンの大百科』を読むことをおすすめします。
引用
詐欺師はまず、自分のことを誠実な人間だと相手に信じ込ませる。次に、ほとんど抵抗できないほど強くカモの欲望を掻き立てる。それから、これは不正な方法だからこそ“確実”なのだと説明して、大金を儲けさせる。すると、楽して儲けたいという欲望が激しく燃え上がり、疑念もすべて吹き飛んでしまう
◆ビッグ・コンによる詐欺のステップ
一、裕福なカモの住居を突き止め、身元調査を行なう(<カモを見つける>)
二、カモを信用させる(<仕事を始める>)
三、カモを<インサイドマン>に会わせる(<カモを捕まえる>)
四、インサイドマンがカモに、不正に大金を儲ける方法があると話す(<話を持ちかける>)
五、試しにやらせて、カモに儲けさせる(<エサ>を与える)
六、カモに投資額を決めさせる(<ブレークダウン>の段階に入る)
七、金策のためにカモを家に戻す(<センド>の段階に入る)
八、ビッグ・ストアで賭けをさせて、カモの金を巻き上げる(<タッチ>を騙し取る)
九、できるだけ早くカモをお払い箱にする(<ブロー・オフ>の段階に入る)
十、カモが告訴しないように警官がなだめる(<フィクス>の段階に入る)
詐欺師が起訴されるのを阻止したり起訴を遅らせたりするには、地元の刑事部長や警察署長や保安官の力が絶対に必要だ。何十人もが買収された
ベイツ氏はその場に立ちつくし、手にした金をいじるしかなかった。鼻の先で受付は締め切られた。(中略)あと一人分だけ前に並んでいれば間に合ったのにと思った。ベイツ氏は知らなかったが、彼は<シャット・アウト>または<プラット・アウト>と呼ばれる巧妙な罠にはまったのだ。カモが賭けにのめり込んでいないと<マネージャー>が思ったら、この方法であぶく銭への執着心を掻き立てる。逃した金の大きさがカモの心にしっかり焼きつくまで数回繰り返されることもある
カウント・アンド・リード
贋札かどうか確かめるふりをしてカモの金を騙し取る
ダブル・トレー
二個のいんちきサイコロ(ダブル・トレー)で賭博場を騙そうとカモに持ちかけ、本物のサイコロにすり替えて金を巻き上げる手口
言語学者の著者らしく、本書の巻末には、詐欺師があだ名で呼び合うことや、専門用語を好むことなど、言葉研究の成果が書かれています。インターネット上では、あだ名で活動する人が増えていますが、一部の方々はきっと、詐欺師の心理が働いて、そ
うしているんだろうなと思います(笑)。転ばぬ先の杖として、ぜひ、読んでいただきたい一冊です。