言志四録
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『言志四録 心を磨く言葉』佐藤一斎・著 佐藤けんいち・編訳 ディスカヴァー・トゥエンティワン
◆目次◆
はじめに 佐藤一斎と『言志四録』について
I 志を高く持つ
II 視野を広げる
III 運命を引き受けて人生を楽しむ
IV 心の持ち方で人生は変わる
V 欲望に振り回されるな
VI 人付き合いの秘訣
VII 仕事をどう進めるか
VIII リーダーの心得
IX 生きることは学ぶことだ
X 真の自己を観る
佐藤一斎年譜
佐藤一斎と同時代の人物たち
参考文献
幕末から明治にかけて日本を動かした逸材を輩出し、西郷隆盛にも影響を与えたという幕末の儒者、佐藤一斎による名著の現代語訳。『言志四録』は、1813年に一斎が数えで42歳、つまり厄年に書き始めたいわば自省録で、それがシリーズ4冊に及び、『言志四録』と総称されたもの。本書は、合計1133条に及ぶという文章のなかから、現代人にとって意味を持つと思われるものを、編訳者が抽出してまとめたものだそうです。
編訳者の佐藤けんいちさんは、一橋大学で歴史学を専攻し、米国レンセラー工科大学でMBAを取得した人物。銀行系、広告代理店系のコンサル会社勤務を経て、中小機械メーカーで取締役企画室長、タイ現地法人代表を務めた人物のようです。
一斎が厄年の時に書いたということで、年老いた人間の処世術についても、興味深い言葉が収録されています。中年以降の生き方を考える向きにも参考になると思います。
引用—————————-
人はみずから内省して考察すべきである。「天はなぜこの自分を生み出し、自分をどういう目的に使おうとしているのか」と。
志を立てなければ、朝から晩まで一日中読書していても、暇つぶしとしかいいようがない。学問をすることは、志を立てるより先にくるものではない。
石は重い。だから動かせない。木の根っこは深い。だから引き抜けない。人もまた、簡単に他人に動かされないようにつとめなくてはならない。
着眼点が高いほど、ものの道理が見える。だから、分かれ道でも迷うことはない。
※西郷隆盛は、この文言を『手抄言志録』に抜き書きしている。
志のある人は、有史以来、現在に至るまでのなかで最高の人物になろうと、心に期すべきなのだ
立派な人物は、なぜこういった人生の苦難に対処しなければならないのか、その理由を熟慮しなくてはならないのである。いたずらに回避しようとしてはいけない。
思うに、世の中のことにかんしては、もともと順境も逆境もないのである。自分の心が、順境か逆境か判断しているに過ぎないのである。
人に恩を売らないように。恩着せがましくすると、かえってその相手から怨みを引き寄せることになる。みずから名誉を求めないように。中身もともなわないのに名誉を求めると、他人から誹謗中傷を招くことになる。
人物を観察する際には、いたずらに外見や振る舞いにとらわれてはいけない。かならず、その人にしゃべらせてみて、心がどう動いているかを観察するといい。
世間を渡っていくことは、「得る」と「失う」のふたつのことばに尽きる。自分にふさわしくないようなものを、得ようとはしないこと。けっして失ってはいけないものを、失わないこと。これだけのことだ。
若い人たちよ、しかるべきときに勉強して、偉大な事業をなしとげること。晩年にいたってから嘆くようなことがないように。