相剋の森
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熊谷達也著 2003年
quotation
共生ではなく、”共死”
「ひとりで森にいるといものは、怖いものだよ。不思議な怖さだ。だが、いやな怖さではない。畏怖といった方が正しいでしょう。それがどこから来るものか、言い当てられますか。」(中略)「動物たちに、いや、木々を含めて森の生き物すべてに、自分が見られている、常に見張られている、という怖さですね。」(p173)
「この取材を始めてから少し勉強をしましたが、今、とても大きな転換点に差しかかっている気がしてならないんです。高度経済成長が終わりを迎え、人々の目が自然保護や環境問題に向けられだしているのは確かです。だからこそ、これからのあるべき姿を模索するために、様々な議論がなされなくてはならない大事な時期だと思うんです。欧米からの借り物ではない、この国独自のあり方や眼差しというものが造られ、合意されるべき大切な時が、もう目の前に突きつけられているって。・・・」(中略)「・・・吉本さんの写真を通して見えてくるものを、偏った脚色なしに伝えたい。そして、映像だけでは伝わりにくい背景部分を、私の文章で補えればと思うんです。それを手にした人々が何を感じるか、何を思うかは受け手の自由です。その結果、マタギ文化が持っている自然や動植物との関係が、これからの日本には必要ないと判断されるとしたら、それはそれで仕方がないことだと思います。そういう選択を我々自らがするということですから。でも、現状ではそうした側、端的に言えばクマを刈って生きる側の声が、議論の場に乗らないままに話が進んでしまう恐れがある。それって公平なことではないと、私は思います。
感想
マタギの話には、妙に共感できたし、話のテンポの良さに引き込まれて2日で徹夜して読んでしまった。自然保護とか共生とかいう視点ではなく、共死という言葉にもしっくりきた。山村で生活する者として、動物、木々との生活はお互いに食うか食われるかの関係だと常々感じる。そして、山にひとりで入っていく時のあの感覚。なんだかたくさんの視線を感じる感覚。これが”畏怖”ということなのかと腑に落ちた。流石に裸足で小原の山に入ることは難しいかもしれないが、自然をもっと感じる場所に手を入れ直すのは必要なのだろう。トレイル整備に対するモチベーションを上げてくれる一冊だった。
そして、裸足の視点をこれからのあし、靴の議論の場にのせるということがやはり大切だと、セリフをそのまま借りたいくらいにピンと来た。
この物語のプロローグである邂逅の森も読んでみよう。