暴力と不平等の人類史
作者:ウォルター シャイデル 翻訳:鬼澤 忍
出版社:東洋経済新報社
発売日:2019-06-07
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ピケティおよびシャイデルの、不平等は論理的必然ではなく、歴史的事実であるという指摘は重要である。 歴史的事実は結果であるから、そこに至までのプロセスを変更できれば、未来の結果は変えられる。
『暴力と不平等の人類史』
○数千年にわたり、文明のおかげで平和裏に平等化が進んだことはなかった ○有史以来、最も力強い平等化は最も力強い衝撃の帰結であるのが常だった
○不平等を是正してきた暴力的破壊には4つの種類がある
○大量動員戦争、変革的革命、国家の破綻、致死的伝染病の大流行
○近現代の学術研究は繰り返し、大規模戦争と政治的勝利の拡大を結びつけてきた
○近代大量動員戦争という圧倒的な暴力の衝撃は、さまざまな手段で不平等を抑制した
○革新的な政治組織の再分配構想がいくらイデオロギーにのっとった知的なインフラを提供し、戦中戦後の政策決定がいくらそれに頼れたとしても、政府がもっとはるかに野心的な社会政策を果たすべく、そしてそのための資金を都合すべく、意志と能力を発揮できたのは、政府に必死の対応を迫った世界規模の暴力の爆発に負うところの方がずっと大きい
○その痛ましいほどの凄惨さにおいて、変革的共産主義革命はまさに大量動員戦争に匹敵する
○20世紀の主要な革命によってもたらされた平等化に少しでも匹敵しうるような結果をフランス革命が生んだという指標はまったくない
○「近代」がもたらしたような、それも、たいていは血まみれの変革的な革命をもって実現させたような平等化は、制圧ー潜在的であれ表出的にであれ、要は暴力ーががっちりと市場の力を押さえ込んでいるあいだしか、維持できない
○貧困層よりも富裕層の方が失うものがはるかに多かったという単純な理由から、国家の破綻によって国全体が貧しくなったにせよ、おもにエリート層が損害を被ったにせよ、平等化が起こる可能性が高かった
○平等化を促す大量動員戦争、変革的革命、破滅的な疫病が例外的な事件であることを考えると、大規模な体制崩壊は、歴史を通じて最も強力で確実な唯一の平等化装置だったに違いない
○感染爆発は、所得と富の不平等を圧縮するメカニズムとして機能したものの、ひどく残酷であり最終的は持続しなかった
○土地改革が不平等を軽減したという記録はあまりない
○経済危機は深刻な衝撃かもしれないが、暴力的な圧力がなければ、普通はそれだけでは不平等を軽減できない
○民主主義と平等な再分配の政策は当然関連していると見られがちだが、直結しているとはとても言えない ○将来の平等化の見込みは薄い
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