任せるコツ
https://gyazo.com/6f307eb1fe93ad44cb8d78e1ad61e643
「任せるコツ―自分も相手もラクになる正しい“丸投げ”」山本渉、すばる舎
目次
第1章 PART1 ドラッカーが教えてくれない「丸投げ」の極意―「どう頼むか」にはコツがある
第2章 「誰に頼むか」ですべてが決まる
第3章 「丸投げ」の前後にあるもの
第4章 時代に合った任せ方
第5章 それでも「任せられない」人に
第6章 PART2 任せて伸ばす「丸受け」できる人材の育て方―育成の真髄
第7章 任せる技術は褒める技術
第8章 モチベーションの上げ方「4+1」
第9章 任せて最高の成果を出すために
要約
電通で部長職にある著者が,部下への仕事の任せ方を教えます。サブタイトルが,「正しい丸投げ」ですから,昔の電通では間違った丸投げが行われていたということなのでしょう。この本では具体的な間違った丸投げの指示として,「週明けの朝までに資料つくっといて。〇〇さんが嫌だっていうからさ、君やってよ」という例が出ています。 ここまでひどい人はいないと思いますが,よい指示は,感謝・期待と目的・期限が入ったものでなくてはなりません。例として,「先週の資料ありがとう。わかりやすいって評判で、またお願いできるかな?プロジェクトが承認されるかが懸かってる重要な書類で、この完成度でできるのが△△さんしかいないんだよ」と紹介されており,ここまでやれば完璧でしょう。
人は感情の動物といわれますので,嘘とわかっても,自分に配慮して言ってくれていることに,うれしくなるのだと思います。
目的がはっきりすると、その依頼の全体像が見えて、ただの「作業」に意義と価値が足されて、「仕事」になります(p23)
業務上の悩みや不安を引き出す
部下によい意味での適正なストレスが与えられているのかどうか,過重労働になっていないか配慮していることがわかります。例えば,叱るときには,部下のショックをやわらげるために,褒め言葉で前後を挟むことを推奨しています。
また,部下との1on1面談では,「この先どんな仕事がしたいか」「長期の目標は?」といった定型的なものだけでなく、「業務上の悩みや不安」を引き出すようにしているという。部長としては,部門に余裕がなかったり、部下に過重労働を余儀なくされるものは、自分のところで止めるという判断もしながら,無理をさせず,負担を軽減する配慮をしているというのです。電通の現役として割り引いて読むとしても,部下の精神的・肉体的な健康に配慮しているのは確かなのでしょう。
いきなり「叱る」ことはせず、「褒め言葉で前後を挟みましょう」・・・「最初に今までの功績を称えて感謝する」「最後にこの先も期待していると伝える」(p208)
部下との対話を重視
上司の説教・昔話・自慢話はダメで,失敗例のほうが役に立つと書きながら著者自身の失敗の具体例がないのが残念でした。電通で高橋まつりさんがパワハラで自殺したのが2015年なので,著者が30代でマネージャーとして失敗を経験した時期と近いのではないでしょうか。
高橋まつりさんはネット広告を担当していたので著者との接点はないと思いますが,著者は30代の失敗を反省し,部下との対話を重視して,業務の指示の仕方に注意したり,無理をさせないよう配慮しているということなのです。
内容としては類書と変わりませんが,現場で実践して成果を出しているところが素晴らしいと思いました。この本を高橋まつりさんに捧げたいと思います。 山本さん、良い本をありがとうございました。
引用
面で育てる・・新人を「一年上の先輩」「トレーナー役の先輩」「上司」の3人で育成・・多様性も保たれるでしょう(p171)
「親バカ」ならぬ、「上司バカ」になって・・社外・社内問わず、ぜひ褒めまくってあげてください(p193)
スケジュール(いつまでにしてほしいか)を明確にする・・「来週中に企画書を一度見せてください。一緒に詰めて、再来週に顧客に提案できるようにしましょう」というように、スケジュールと共に依頼(p35)
著者経歴
山本渉(やまもと わたる)・・・高校を中退後アメリカに留学。2001年コロンビア大学映画学部卒業後、電通入社。プレイヤーとして結果を残し、30代でマネージャーに任命され数多くの失敗を経験する。チームメンバーの話をとにかく訊いて深く理解し、最後はメンバーを信じて完全に任せることを実践。現在はジェネラルマネージャー兼部長を束ねる統括ディレクター。