仮説行動
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『仮説行動』馬田隆明・著 英治出版
本日ご紹介する一冊は、東京大学で本郷テックガレージの立ち上げと運営に携わり、2019年からはFoundXのディレクターとして、スタートアップの支援と起業家教育に従事している、馬田隆明さんによる一冊。ベストセラーとなった『解像度を上げる』の著者としても知られていますが、本書では、「仮説思考」を一歩進めた「仮説行動」という概念を紹介しています。
なぜ「行動」が必要なのか。「本書の3つの特長」で著者はこう述べています。
<不確実性の高い状況や不完全な情報しか手に入らない場合、正しい情報を探すことや精緻な思考に労力を使うよりも、その状況で行動してみて、そこから得られた新鮮な情報やフィードバックを活かしながら思考したほうが、より良い仮説に辿り着きやすいのではないでしょうか>
そのため本書では、良い仮説を導くための方法を説明するだけでなく、行動の方法についても言及しています。数多くのスタートアップを支援してきた著者だけに、起業家がつまずくポイント、仮説検証、学習が必要なタイミングが的確に指摘されています。また、起業家の卵がアイデアゼロの段階からどのように成功するための仮説を導き出してきたか、そのプロセスも上手にまとめられています。
起業した人にしかわからない絶妙な肌感覚に寄り添う記述、行動を促す言葉の選び方は、さすがで、これはテンションの上がる一冊です。サラリーマンの方が仮説の立て方を学ぶ教材としても有用ですが、できれば新規事業開発に携わっている、スタートアップに関わっている、ビジネスモデルキャンバスを描いたことがあるなど、何かしら事業の創造に関わっている方が読んだ方が刺さると思います。
引用
「時間の制約」「不確実性の高さ」=仮説の必要性
不確実性の高い状況の中で素早く探索を行うこと
3つのステップ
・マップ ・ループ ・リープ
マップ・ループ・リープの中でも、リープは少し特別な行為です。マップとループは知識と論理である程度進めることができますが、リープは知識と論理だけでは行えない、ある意味で不合理な判断です。そしてリープしたら後戻りは難しくなり、さらにリープの後に生まれた結果には、責任が伴います
決断や賭けがうまくなれば、適切なタイミングで跳べる(リープできる)ようになり、より大きな業績を素早く上げることができるようになるでしょう
良い仮説を作るためには、良いエビデンスと良い推論の両方が必要
仮説に依り立つ仮説は脆い
『四つの署名』の中でホームズは、理想的な探偵に求められる3つの条件として、観察・推理・知識を挙げており、観察や知識といったエビデンスの重要性を指摘しています
行動することによって、誰も持っていないエビデンスを自ら作ることができる
ビジネスにおける仮説のほとんどは、アブダクションによって生まれる
「この事業は儲かりそうだ」というのは事実に関する認識や判断かもしれませんが、「この事業は社会的に悪い」というのは価値判断です。ある意味、論理を超えて行わなければならないのがこの価値判断です
探究に値しそうな疑問を作ることができたら、一度簡単な調査をしてみましょう
検証時にはなるべく定量的なデータを使うよう心掛けてください
ビジネス実験のコツは、スコープ(範囲)を十分に小さくすること
初期のスタートアップのアイデアの構成要素として必要な仮説
「価値仮説」「市場仮説」「戦略仮説」
リチャード・ハミング博士が研究の方法でも述べたように、「大きな仕事を成し遂げたいなら、意識して重要な問題に取り組む」ことが重要
◆目次◆
はじめに
1 本書の3つの特長
第1部 仮説行動を理解する
2 なぜ仮説は重要なのか
3 仮説行動の全体像
第2部 仮説を強くする
4 仮説を生成する
5 仮説を検証する
6 仮説マップを生成/統合する
7 ループの停滞を回避する
第3部 仮説を現実にする
8 仮説を評価する
9 決断する
10 仮説を実行する
第4部 大胆な未来を実現する
11 影響度の大きな仮説を目指す
おわりに