ディープ・スキル
【BBM:これは名著だ。】⇒『ディープ・スキル』ビジネスブックマラソンvol.6110
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◆目次◆
はじめに
第1章 「したたか」に動く
01 「ずるさ」ではなく「したたかさ」を磨く
02 上司とは「はしご」を外す存在である
03 優柔不断な上司に「決断」を迫る
04 勝負どころでは、あえて「波風」を立てる
05 会社で「深刻」になるほどのことはない
第2章 「人間関係」を武器とする
06 弱者でも「抜擢」される戦略思考
07 「専門性の罠」に陥ってはならない
08 他者の「脳」を借りて考える
09 “敏腕ビジネスマン”のように話さない
10 「協力関係」の網の目を張り巡らせる
11 親切なのに「嫌われる人」の特徴
12 まず、自分の「機嫌」をマネジメントする
第3章 「権力」と「組織」を動かす
13 組織を動かすプロセスを「企画」する
14 上司の「頭の中」を言語化する
15 「権力」を味方につける人の思考法
16 「合理性の罠」に陥らない方法
17 「効率化」で墓穴を掘らない思考法
18 「調整」とは“妥協点”を探すことではない
第4章 「人間力」を磨く
19 人間の「哀しさ」を理解する
20 「やり切った」うえでの失敗には価値がある
21 「使命感」が最強の武器である
おわりに
本日ご紹介する一冊は、ビジネスパーソンが組織内戦略家となり、やがて起業家に脱皮していくためのマニュアル書。
著者は、かつて所属していたリクルートで総合情報サイト「オールアバウト」社の創業に携わり、事業部長、編集長等を務めた石川明氏です。
リクルート社で新規事業提案制度「NewRING」の事務局長を務め、新規事業を生み続けられる組織・制度づくりと1000件以上の新規事業の起案に携わった人物で、スタートアップ界隈での評価がじつに高い。現在は、株式会社インキュベータの代表取締役として活躍し、経済産業省の起業家育成プログラム「始動」講師などを歴任、今後は明治大学専門職大学院グローバル・ビジネス研究科で客員教授に就任予定(2023年4月)です。
本書は、そんな石川氏が、起業や新規事業を成功に導くための「ディープ・スキル」を説いた一冊。
発売前からスタートアップ界隈で話題となっていた本ですが、なるほど、その理由がよくわかりました。
ビジネス書では、とかく自分が「すごい人」になるためのスキル本が売れますが、本当に必要なのは、たとえ自分が目立たなくても組織を動かし、事業を成功に導く力。
本書には、その力を身につけるためにどんな考え方が必要か、どんな経験や実績を積み、どんなコミュニケーションをするべきか、人と組織を巧みに動かす深くてさりげない「21の技術」が紹介されています。
単なる「社内政治」にとどまるものではなく、起業家がどうやって人を巻き込み、プロジェクトにおける悪い芽を予め摘みとっておくか、戦略的な考え方と実践が説かれています。
本来保守的である人間をどう動かし、新規事業が生まれる体質に組織を導くか、マネジメント視点からも重要なスキルが書かれており、特に社内起業をする人には必読の一冊だと思います。
赤ペンチェック
上役が「はしご」を外した背景にある人間心理、組織力学に目を凝らせば、上役の行動にも理解できる側面があることがわかります。そして、やっておくべき「対策」があったことにも気づかされる
経営会議の場で、田中課長が「私からプレゼンをする前に、本件でご指導いただいているA取締役に、一言頂戴したく思います」などと発言すれば、A取締役も起案者代表としての発言をせざるを得ないでしょう。このように、一見、「上役を立てる」かのような言動が、実は「上役を当事者として逃げられないようにする」ことにつながるのです
「波風」を立てるべきときに、しっかりと立てておかないと、後々に禍根を残すことがある
「ポジショニング」をするうえで大切なのは、「組織にとって重要であるにもかかわらず、まだ誰もいない領域」を見定めて、そこにいち早く飛び込んでトップランナーになること
不平、不満、不安、不幸、不便、不良、不遇、不快、不足、不自由、不平等など、「不」のつく言葉はたくさんありますが、製品やサービスを提供することを通して、これらの「不」を解消することこそがビジネスの「本質」
「壁打ち」という思考法 自分ひとりで考えていることを他者に打ち込みフィードバックをもらうことで新たな「視点」が得られる
「自分が話したいこと」を話すのではなく、「相手が話したいこと」を引き出すような「話し方」を磨くべき
心を許してくれるような「関係性」を築くことで、「本音」を漏らしてくれるようになれば、相手の「不」を把握することができる
「論理的に聞く」ために大切なのは、「何が事実か?」を確認することです。そのためには、「5W2H」を確認するのが基本
「業務時間中はすべて“部下のための時間”である」
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読者が経営者あるいは経営幹部であれば、著者が所属していたリクルートでなぜ、新規事業がバンバン生まれてくるのか、その仕組みがわかり、生産的な組織作りに役立つでしょう。(「フェアウェイ」が明示されれば、社員は考えるべき企画の方向性を明確にすることができる)
読者がサラリーマン、あるいはこれから起業を目指す方なら、どうディープスキルを駆使すれば、人や組織を動かし、成果が出せるのか、その秘訣が学べると思います。
ビジネスにおいては、ほんのわずかな配慮不足が深刻な事態を引き起こすものですが、本書では、それがどんな鈍感な読者にもわかるよう、事例を用いて丁寧に解説されています。
組織の内外で戦略的に動ける人になるために、ぜひ読んでおきたい一冊です。
これは、ひさびさに「買い」の一冊ですね。