アート脳
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『アート脳』スーザン・マグサメン、アイビー・ロス・著
須川綾子・訳 PHP研究所
◆目次◆
はじめに 人間を変えるアートの効用
テスト 生活にアートを取り入れる--美的マインドセット
Chapter1 体と美の不思議でおもしろい関係
Chapter2 部屋の照明、周囲の音、匂いが最高の美的経験になる
Chapter3 自分を取り戻すために、描く、歌う、踊る、作る
Chapter4 アートが寿命を延ばす嘘のような本当の話
Chapter5 仕事と学びに遊び心を!
Chapter6 マンネリ気味の日常を変える6つの条件
Chapter7 人類はアートとともに進化する
おわりに 未来のアート
謝辞
クレジット
原注
アートが健康やメンタル、集中力、記憶力、やり抜く力に影響するメカニズムを解説した内容で、著者はジョンズ・ホプキンス大学医学部ペダーセン脳科学研究所の革新的な取り組みである、応用神経美学センターのインターナショナル・アーツ+マインド・ラボ創設者、スーザン・マグサメン氏。
共著者のアイビー・ロス氏は、グーグルのハードウェア部門でデザインを担当するバイス・プレジデントのアイビー・ロス氏。2019年には、『ファスト・カンパニー』誌の「ビジネスにおいて最もクリエイティブな100人」で9位に選ばれた人物です。美的マインドセットを手に入れることで、われわれの身体能力がどう向上するか、神経生物学的視点から見た解説がなされており、勉強になります。
アートによって脳のシナプスが結合すること、豊かな環境を与えるとラットの大脳皮質の厚さが増すこと、音楽やぬり絵、詩、物語が与える影響など、興味深い雑学に、ぐいぐい引き込まれます。いわゆる教養本に属する本ですが、詳細を読んでいくと、個人の能力開発やトラウマの克服、創造性を高めるヒントなどが書かれており、教師やマネジャー、コーチ、カウンセラーなどにも有用な一冊です。嗅覚や聴覚がどのようにして人間の感情に影響を与えるか、そのメカニズムが勉強になりました。(やっぱり匂いや音って重要ですね)
外国人の美的感覚に訴える商品・サービス作りをしたい方にとっても、ヒント満載の一冊です。
引用
人の鼻は、30~60日で置き換えられる400種類以上の嗅覚受容体によって、1兆種類もの匂いを嗅ぎ分けることができる
欧米に暮らす人々はナツメグやクローブ、シナモンの味に秋と冬の祝日を感じる。結婚式に食用の花がつきもののインドでは、ハーブと柑橘系の味がするマリーゴールドの花は祝い事を連想させる
アートや美は、文字通り脳の回路をつなぎ直すことができるのだ。新しいシナプス結合の形成を促すための、秘伝のソースのようなものである
シナプス結合が除去される現象は「刈り込み」と呼ばれる。では、脳はなぜ結合を刈り込もうとするのだろう。理由は庭師が木や茂みの枝を剪定するのと同じだ。より強く、健康的な形状に成長するよう促すためである。加えて、脳はエネルギーの浪費を嫌う。ある行動を起こすために使用する細胞、すなわちシナプスが少ない方が、エネルギー効率が高まるのである
豊かな環境のグループは貧しい環境のグループに比べ、大脳皮質の厚さが6%増していた(神経学者マリアン・ダイアモンドが行ったラットによる実験)
美の3要素
・感動運動系
・報酬系
・認知的知識および意味づけ
私たちがどこで生まれ、どのように育ち、それぞれどのような経験をしてきたのかといったことが重なり、何を美しいと感じるかが決まる
「オシャレ」と思った部屋が、本当に心地いいとは限らない
内耳のなかのリンパ液が有毛細胞の感覚毛を揺らし、それが神経インパルスという信号を発生させ、脳へと伝えられる。こうしたインパルスは強い感情や記憶を呼び起こす神経回路を通って脳へと伝達される。そして気分や行動を一瞬で変化させる。音の振動には体を恒常性の状態に戻し、闘争・逃走反応から抜け出させる作用がある
色をぬっている間は不安を示すすべての物理的指標が下がり、不安を感じる度合いも低下していることが読み取れた
詩は薬としても用いられ、古代ギリシャでは他の医療行為とあわせて詩を「処方」していた
ほぼ毎日物語を読む子どもは、健康に関わる行動や健康状態が良好だった
持続的幸福の6つの基本的な特性
・好奇心と感嘆
・畏怖
・豊かな環境
・創造性
・儀式
・斬新さと驚き