人類はどこで間違えたのか
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『人類はどこで間違えたのか 土とヒトの生命誌』中村桂子・著 中央公論新社 ◆目次◆
はじめに 本来の生き方を求めて
第一部 生命40億年
第二部 ホモ・サピエンス20万年
第三部 土への注目
おわりに
主要参考文献
本日ご紹介する一冊は、JT生命誌研究館名誉館長の中村桂子さんが、40億年の生命誌から、われわれの社会や生き方を問い直す、興味深い一冊。気候変動、感染症、経済格差、戦争、希薄な人間関係など、進歩したはずの人間が、健康や幸福とは程遠い状況を生んでいる現在にあって、何が問題の本質なのか、どう考えれば社会を立て直せるのか、興味深い分析がなされています。
「脱炭素」「AIが人間を超える」という表現が間違いである理由を、生命の原理から明らかにしており、ビジネスの世界の価値観に偏った人は、読みながら大いに反省させられるに違いありません。人間が大きな脳を持ったことのメリットや、そのために払った代償から、人間らしい生き方のヒントが示されており、じつに興味深く読ませていただきました。
支配階級や大資本のために作られた、現代の農業やグローバル経済などの問題点も指摘されており、これからどうやって社会を立て直すかのヒントとなるでしょう。
生態系を壊さず、人間を壊さない経済活動とは何か、土地に合った農業や建築とは何か、それこそ地方の企業家も学ぶべき内容かと思います。ビジネスは本来、人を幸せにするためにある。であれば、生命誌の視点から人の幸せや豊さを考え、かつそれがサステイナブルになるように考えることは、意味のあることだと思います。
<本来の道を探すには、生きものの長い歴史の中で起きたことをよく見て、生きもののありようを知ることが大事>
引用
わたしは「生命誌的世界観」を持っています。「人間は生きものである」という科学が明らかにした事実を踏まえた世界観です。この世界観ではAIと人間はまったく別のものであり、AIが人間を超えることはありません
地球上に暮らす多様な生きものの一つであるヒトが、人間として他の生きものとは違う道を歩き始めたのは「農耕」を始めた時からです。ここから自然の中で暮らしながらも自然を支配するという気持ちが生まれ、それがどんどん強くなっていったのです。そしてその気持ちが現代の科学技術、機械論へとつながりました
「起こるはずがない」とか「思いもよらない」というのは、現代人が日々の暮らしは思い通りに動いてあたりまえと思っているために出てくる言葉です。ここに現代社会を生きる私たちの考えの偏りが見えます
近年私たちの身体の中には膨大な数の細菌が存在しており、それが「私」という存在に関わっていることが明らかになってきました(中略)その数は身体全体で数百兆個、重さにして1~2kgあるとされます。細菌の種類も500~1000種と多様です。私たちの身体を構成している細胞数が37兆個と言われていますので、数では細菌の方が多いのです
細菌のありようによって健康状態が変わることは明らかで、それは精神にも及ぶことがわかってきました。うつ状態の人はビフィズス菌の割合が低かったというデータがあります
これからの生き方として大事なのは「炭素をいかに巧みに活用するか」であり、脱炭素ではありません
生きものの特徴は、古い時代のことを忘れない、古いものを捨てない、というところにあります
犬歯が小さく弱いヒトの仲間は、食べものの豊かな場所から追い出されたでしょう。森の端や草原に出て行くことになり、食べものを遠くまで探しに行かなければならなかったのです。そこで、果物などを採ったオスが立ち上がってそれを手にのせ、離れたところにいる子どもを抱えたメスのところまで運んだのが二足歩行のきっかけだというのです
皆で一緒に食べることによって仲間意識を強くした方が生き残れる
なぜ赤ちゃんを上向きに寝かせるのか
1.見つめ合いと微笑み
2.声でのやりとり
3.手が自由になる
集団を構成する人数が多くなると、人間同士の関係がフラットでなくなり、人間に対しても支配や操作の感覚が生まれる