京都人が教える ずるいけどうまい合意の技術
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『京都人が教えるずるいけどうまい合意の技術』
服部真和・著 青春出版社
本日ご紹介する一冊は、京都で300件を超える対立を解消してきたという、行政書士、服部真和さんによるコミュニケーション本。京都人がやっている賢い合意形成のやり方を紹介したもので、京都特有のコミュニケーションが生まれた歴史的経緯、著者の経験、心理学に基づくテクニックなどを書いています。京都のコミュニケーションというと、いわゆる「イケズ」なものを想像しますが、本書ではあれがなぜ生まれたのか、その合理的な理由を解説しています。
本書のなかで印象的だったのは、以下の部分。
<京都がたくさんの「争いの火種」を抱えながらも、それが燃え広がらないのは、京都人の日常が小さな「折り合い」で溢れているから>
これからいろんな文化と軋轢が生まれるであろう日本において、知っておくべき知恵が書かれており、大変勉強になりました。タイトルからは、京都の雑学的なものをイメージする方が多いかもしれませんが、やり手の行政書士が交渉術を書いた内容なので、ビジネスにも使える実践的な内容です。セールスや提案に関わる方、紛争解決やトラブル対応がお仕事の方は、読んでおくといいと思います。感情的対立や認知的対立の手当て、支配ではなく流れなど、いろいろ学びになりました。条件調整の4つの観点などは、実際の交渉で確認しておきたい事項で、覚えておくと便利だと思います。
引用
相手に過度な期待をさせることは無責任で危険と考えたり、一見上辺だけ取り繕う「たてまえ」で争いを回避する「いくじなし」の処世術が形成されました
「場」ができる3つの要素
一定の距離感(物理的・心理的な間合い)
同質性(同じ文化的背景・共有された文脈や価値観)
一体性(個と集団の境目があいまいな状態)
人は、正しい理屈によって条件面の説得をしてもうまくいかないことが多々あります。実際には条件以外に「感情的な対立」や「認知的な対立(価値観相違による対立)」を手当てすることのほうが重要になるからです
地域の人たちは、撮影禁止による排除ではなく、やさしい言葉やイラストで「この角度からはきれいに撮れますよ」と伝えて導線を整えたり、商売として写真撮影する人たちには「専用の腕章」を付与する(この場合には取り決めがある)ようにしました
手順としては、まずその地域で信頼されている人に話をしていく
支配ではなく流れをつくる。人を無理に説き伏せるのではなく、賛同が自然に広がる環境を築いていくことを目指します
否定的な言葉を受けたときに、「私は、そのあたり詳しくないので、正解を教えてもらえませんか?」とか、「では、どうすればいいと思いますか?」と尋ねてみる
「相手をやり込める」のではなく「関係を壊さない」を優先すること
人は、真正面から探られていることが分かると心を閉ざすことがあります。反対に「もし~だったら」と仮定の形で聞かれると、意外と素直に答えてくれます
「条件調整」の4つの観点
(1)数のすり合わせ
(2)枠の確認(制約条件)
(3)優先順位を整える(お互いが優先すべき事項の確認)
(4)配分の設計(条件の組み替え)
同じ取引でも、
・スピードを重視したいのか
・品質を重視したいのか
・リスク回避を優先したいのか
・費用対効果を重視したいのか
影響者や参画者を共謀者にするために「この話を進めるうえで、一番全体をよく見ておられるのは○○さんだと思っています」「正直に言えば、○○さんがどう感じるかが、場全体の空気を決めるところがあります」
衝突の大きな要因は「偏り」と「思い込み」
調和とは迎合ではなく、価値観の違いや摩擦の必然を前提に関係を続けていくための技術
水のように振る舞うことの大切さ(老子道徳経)
本当に素晴らしい振る舞いは水のようである。水は万物をうるおし、利を与えるが、決して主張しない。どんな器にも合わせて形を変え、対立とは無縁で争わない。そして高いところから、人が嫌がる低いところへ自ら流れていく。
相手を変えようとしない。その代わり自分の世界を疑ってみる。対話では感情を整え、認知のズレをなくし、最後に条件を調整する。
◆目次◆
序 章 争わへんでもうまくいく京都の秘密
第1章 合意にもっていける人だけが知っている9つのこと
第2章 説得しないのに、話がまとまる対話術
第3章 水面下で9割決まる「戦略的根回し」
第4章 調和という着地点を最高のものにするために
おわりに 正しさがぶつかる時代の最適解