マスキズム 新たな独占の時代
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​『マスキズム 新たな独占の時代』
クィン・スロボディアン、ベン・ターノフ・著 斎藤幸平・解説 樋口武志・訳
飛鳥新社
イーロン・マスク氏が、人類初の「兆万長者」(純資産1兆ドル)となりました。今、氏について学ぶことには、2つの意味があると思っています。
1つは、今の時代に最適化することで成功を収めた起業家の思考を学ぶことで、自身もビジネス・投資で成功できるという意味。
もう1つは、影響力の大きい氏の「次の一手」を予測することで、他者に先んじることができる、という意味です。
ボストン大学フレデリック・S・バーディー・スクール・オブ・グローバル・スタディーズの国際史教授で、『破壊系資本主義』の著者、クィン・スロボディアン氏と、マサチューセッツ在住のテックライター、ベン・ターノフ氏による共著です。
イーロン・マスク氏のコスト削減の視点、出身国である南アフリカから影響を受けているという「要塞」という発想、国家権力を利用する視点、スーパーセット(上位集合)を牛耳るという思想、人類再構築の野望…。なぜこの人物が今の時代に覇権を握ることができたのか、日本で模倣するとしたらどうするか、そんなことを考えさせてくれる内容です。起業家なら、自身のビジネスのヒントとして、投資家なら、これからの投資機会発見のヒントとして、きっと役立つ内容です。
引用
すべてがデジタル化されるなら、権威はコードを支配する者の手に宿る。スーパーセット(上位集合)を牛耳る者は、そのサブセット(下位集合)に対する支配権を手にするのだ
「要件はすべて疑え」と彼は従業員に言った。彼の考えでは、本当に重要な要件は物理法則が定めるものだけテスラエナジーの中心は「移動サービス」ではなく、環境に対する「強靭さ(レジリエンス)」だった。ますます不安定化する世界から家庭を守るために、家をソーラーパネルと蓄電池で稼働する「要塞」に変える、という発想
ミームとなるとは、すなわち他者の参加を誘い込むような主体となること
ミームになるということは、モジュール化され、再利用可能になるということ
AIと人間の共生体になれば、我々自身がAIの集合体となるのだから、邪悪な独裁AIといったものを心配する必要はなくなる
junkaneko.icon国家によるAIの管理が始まりつつあるとすると、AIと人間の共生体は国家権力の管理下に置かれる可能性があるから、この心配は残るだろう。
マスキズムの使命は、より良きサイバネティック・コレクティブを構築するために、肉体とコード、現実世界とミーム空間の融合を加速させること
マスキズムの野望は、単にロケットや車を作ることではなく、人類そのものを再構築するという次元に達している。(中略)マスキズムは、自らが生み出したテクノロジーと区別のつかない存在になることで、そのテクノロジーから滅ぼされずに生き延びられる種を生み出すことを目指したのだ
マスクは「脳からの情報を受け取るだけでなく、脳に情報を送り込む方法を見つけようという明確な目的を持った最初の起業家」だった。つまり、ニューラリンクがほかと違ったのは、「読み取り」機能だけでなく「書き込み」機能を備えた脳インプラントの開発を目指していた点だった
削除の論理が最も鮮明に表れていたのは、マスクがTwitterでもDOGEでも採用した「ゼロベース予算」だ。1960年代にテキサス・インスツルメンツ社で考案された手法で、予算を前年度のベースから調整するのではなく、各部門にあらゆる支出項目をゼロから正当化するよう求めるものだった
個人は常に、自分の頭のなかで動いているソフトウェアを誰が書いたのかを考えるべきだ
マスキズムの4つの未来
・環境の救世主「カーボン・マスク」
・国家と一体化した「コントラクター・マスク」
・「優秀な子孫」だけを残し自前で育てる「塀のなかのマスク」
・機械がすべてを支配する「サイボーグ・マスク」
◆目次◆
はじめに マスク主義は21世紀のOSである
第1部 帝国の形成
第1章 選民のためだけの未来主義
第2章 上位集合(スーパーセット)
第3章 サービスとしての主権
第4章 電気的自立(エレクトリック・オートノミー)
第2部 サイボーグ化への道
第5章 アテンション錬金術
第6章 機械と人間の融合
第7章 ヒトラー化するAI
第8章 Xという名の国家
終章 マスキズムの4つの未来
謝辞
解説 斎藤幸平
<巻末>原注