フランケンシュタイン(デル・トロ版) 感想 (ネタバレあり)
映画とは、常に人生の節々で「いつどうみたか」だとおもっているので、いつにも増して「いつ」と「どう」の話を書く 99歳であった
葬儀のため、放蕩息子実家に帰るばりに、まあそれなりに間を空けることにはなって帰郷した
パンデミックがあり、高齢者のもとへ赴くのが慮られたのもあったのだが、最期に会った時にだいぶもう認知がきていて、自分としてもなかなか気持ちの整理がつけられていなかったというのが大きかった 葬儀場に到着したら親父が独りだったので、最期の日の様子を聞いたりしていたら母がやってきて、いきなり「そこに立て」と言われて立たされて、ぶん殴られた
自分も困惑したし、妹たちからも大ブーイングで空気は最悪になった
坊主の読経を聞きながら、オレ.....朝イチの新幹線で駆けつけてぶん殴られる必要あったん.....? という気持ちでいっぱいで、故人との思い出がどうだこうだとか会場のスタッフにアナウンスされても、全然入ってこなかった
ほぼ無言で火葬場へ向かい、火葬している間、メシを食っていて、自分としては故人との思い出話をしたり、そういう時間にしたかったのに、そっからまたしても母が蒸し返しはじめて、心底憎いと感じたし、心底軽蔑した
そんなこんなで、いろいろな哀しみを背負って自宅に帰ってきて、こういう時はなんらか映画でセルフセラピーにしよう....ということで、選んだのがフランケンシュタインだった(なんで? というツッコミはさておく)
プレリュードでは、北極を目指す船の近くで爆発が起きて、船長が義足の男と、謎の怪物と出会うところからはじまる
ヴィクターにしても、父と母、そして死産の末に産まれた弟との関係にいろいろ抱えてるフシがある感じであったが、それはまあ父への反抗心のようなものなのではないかと感じた
弟の婚約者の叔父であるハーランダーが現れ、研究のパトロンをしてくれることとなる
ハーランダーの目的は、梅毒で死期が迫る自らの肉体をホムンクルス(と、呼称することとする)に取り込んでもらうことだった 出会いのタイミングにしても、メメント・モリがテーマの写真セットの小道具で置いてあった髑髏を愛でてるから、ヴィクターからしたらそらもうね.....っていう ハーランダーと弟に元浄水塔を研究塔に改築してもらって、そこでホムンクルスの研究を本格化させるヴィクター
いよいよ完成だ〜!みたいなタイミングで、ようやっと「自分をホムンクルスに組み込んでくれ」交渉をハーランダーがしてくるんだけど、いやうん.....遅いっつーか.....もっと早く交渉しときなよ.....
フランケンシュタインの怪物ってそんな話やったんやね
なんというか、こういうコトはあんまり言いたくはないんだけど、DVを受けて育った人って同じようにバイオレンスによってでしかコミュニケーションがとれないものなのかねえ、ホムンクルスに対してとにかく当たりが強いヴィクター 最終シーズンあまりに楽しみすぎる、仕事を休んでビンジすんぞ あまつさえ教育ができないことを早々に諦めて殺そうとする.....が失敗して、脱出したホムンクルスは近隣の村の水車小屋でひっそりとコミューン暮らしを送る
ここから、語り手がホムンクルスに変わる
村の長老的な盲目の爺さんとの交流を通して、言葉も覚え、世界のコトを多少は理解する
その村へ襲来した野生の狼を通じて、この世の理も理解させられてしまうホムンクルス
狼は、村人のことを憎んでいるわけではないし、羊のことも憎んでいるわけではない、それでも羊は死ぬし、人も死ぬし、襲来した狼でさえ返り討ちに遭って死んでしまう、これがこの世なのである
ホムンクルスは、ヒーリングファクターによってこの世の理ならざる者であることを理解させられるし、狼によって唯一の友だった長老さえ喪ってしまう
長老と交流をするホムンクルスをみて、祖母が死んでからはじめてぐらい、そういえば祖父母とこういう時間を過ごしたな....という感慨に耽ることができた
そして、創造主たるヴィクターに、自分がアダムならイブをコンパニオンとして創造してくれと頼みに、ウィリアムの結婚式に乗り込むが....というのがだいたい第二幕 ヴィクターが無謀にも銃をぶっ放すせいでエリザベスは死んじゃうし、ウィリアムも死んじゃう.....別にここまででもヴィクに感情移入できてたわけではないけど、ここらへんの行動はてんで意味不明で、悪く言えばここから船のシーンに向かうために動いてるんじゃないかとさえおもうほどだった
それから絶対死なないホムンクルスと、絶対殺すヴィクとで追いかけっこをしているうちに北極圏まで辿り着き....という
船で、最期にホムンクルスは創造主であるヴィクをついに赦すのだが、ここの機微がやっぱり分からなくて、なんでかと考えると、ある種の自分の創造主たる母にぶん殴られて祖母との別れをぶち壊されて、とても赦すことなんてできねえよというところに根っこがあるのかなとおもった
一通りの話を聞いた船長が、北極点を諦めて帰る決断をするのもなんでかよく分からんかったけども
あと、ここはまあホムンクルス視点でいうと創造主を赦すことがこの世に踏み出す一歩だったんだろうし、そこはクリーチャー愛が深いデル・トロらしところなのかなとはおもった
そんなわけで、なんとなくモヤモヤしているところに武器人間をサジェストされて、そういや武器人間の博士ってヴィクの孫やったな....などとおもって、前半のかったるい部分はスキップして、後半のくだらねえトロトロしたクリーチャーが出てくるシーンをみてバカ笑いしたらなんかスッキリした、ありがとう武器人間 「祖父は雷を使ってたそうだが、私には発電機がある!」と説教するフランケンシュタイン博士に「確かにそうだったね....」と苦笑した
相変わらず、クリーチャーたちはトロトロしてて笑った、あとなんでソ連兵もフランケンシュタイン博士も英語喋ってんねん