連続講義第4回コメントシートへのお答え
最終回は終了後にご質問等でお並びくださった方も少なからずいらっしゃいました。口頭ご質問等は原則として以下には書いていません。
企業結合規制
市場画定で、「需要の代替性あり・供給の代替性なし」の場合は、どうなりますか。
需要の代替性のほうが基本ですので、需要の代替性があれば、市場における供給者の範囲はそこまで広がります。
ヤマダ・ベストの事例で問題となった10地域の需要者にとっては、交通の便が悪いのでAmazonなどの通販事業者も選択肢になるのかなと思いました。
そうですね。そうかもしれません。いずれにしても事実認定の問題で、法律論の問題ではないので、思いつきで別の見方を申し上げるにとどめますが、可能性としては、そのような地域では多くの人が車を持っていて、渋滞もなく簡単に家電量販店の駐車場に入れることができ、実物を見て買って、買ったものはポンと車の後ろに積んで帰れるので、お手軽で便利で、通販はあまり選択肢に入らない、ということもあり得るかもしれません。
「効率性」の主張で、反競争性による5%の値上げが生じるが20%のコスト引下げがあるという場合、メリットが需要者に行き渡り「需要者厚生が増大する」(需要者への還元がある)ということは、あり得ますか。
あり得ないことはないと思います。
排除効果
排除効果の認定は蓋然性だけで足りる、とする公取委の文書はどれですか。
(口頭ご質問への回答の補足)
排除型私的独占ガイドラインでは
「事業者の行為が排除行為に該当するためには、他の事業者の事業活動が市場から完全に駆逐されたり、新規参入が完全に阻止されたりする結果が現実に発生していることまでが必要とされるわけではない。」(4頁)
白石補足
排除型私的独占では、排除効果(蓋然性で足りる)のほかに、競争変数が左右されること(競争の実質的制限)が必要とされます。排除型私的独占ガイドラインの体系もそのようになっています。
流通取引慣行ガイドライン(不公正な取引方法)では
「なお、「市場閉鎖効果が生じる場合」に当たるかどうかの判断において、非価格制限行為により、具体的に上記のような状態が発生することを要するものではない。」
「市場閉鎖効果」で検索してください。
入札談合
公共事業について、予め事業性(採算など)の調査・検討を、複数の民間会社に委託することがありますが、実際に入札にかけてみると調査・検討を委託した会社しか入札しないことがあります。
もし、競争者間で話し合って、調査・検討をした者だけが入札するという合意をしたのであれば、入札談合の問題になります。汗をかいた会社が落札するよう談合する(汗かき談合)というのは、通常、正当化理由にならないと考えられています。それに対し、上記のような合意がない(立証できない)のであれば、問題はないと言わざるを得ないと思います。
調査・検討を(委託で)行っていなければ発注をしておらず、調査・検討をした会社以外に応札できる能力のある会社がない場合はどうでしょうか。
上記と同様、合意が立証されれば危ない、そうでなければ問題はない、ということになると思います。能力のある会社が他にないとしても、それならなぜ合意するのか、という話となると考えられます。
その他
実務家向けの講座・演習・勉強会等を実施なさる場合は是非ご案内ください。
Twitterなり何なり、そのとき使っているサービスを利用してお知らせするようにします。
コメントシートの全体にわたる励ましのお言葉、ご質問に添えた励ましのお言葉、などいくつもいただきました。ありがとうございました。