石油会社並行的企業結合
平成28年12月19日 排除措置命令を行わない旨の通知
拙稿・公正取引803号(平成29年)
単独行動と協調的行動で結論を違えたことについてのコメント
白石忠志・公正取引803号における分析から抜粋
「
ガソリン等の主燃油元売業に関する公取委の検討において、法的に注目されるのは、単独行動による競争の実質的制限の分析においては、そのような「こととはならないと考えられる」とされ(事例集22頁)、他方で、協調的行動による競争の実質的制限の分析においては、そのような「こととなると考えられる」とされた(事例集23頁)、という点である。
しかし、その内容を精査すると、両分析において差が生じた原因は、それぞれにおいて異なる事実関係を前提としたためであるように思われる。「単独行動による競争の実質的制限」のほうでは、「出光統合当事会社及びJX統合当事会社は、共に十分な供給余力を有しており、相互に有力な競争事業者となると考えられる」としており(事例集21頁)、需要者からの競争圧力も働くとしている(事例集22頁)。それに対して「協調的行動による競争の実質的制限」のほうでは、出光統合当事会社・JX統合当事会社を含めた「各石油元売会社」が「協調的行動を採ることとなる」とし(事例集22〜23頁)、需要者は「他に十分な調達先の選択肢がな」いので需要者からの競争圧力は働かない、としている(事例集23頁)。このような差は、クリアランスの日(平成28年12月19日)の公取委公表文3〜4頁の「参考」において「○または△」と「×」の差によって示されている。
そうすると、両分析が前提とした事実(厳密には、企業結合計画が実行された場合という将来の時点における事実の予測)は、両立し得ない程度に異なっており、どちらかは事実に反する、ということになる。公取委は、「協調的行動が採られ、輸入圧力等の競争圧力が働かないため、競争を実質的に制限することとなる旨の問題点を指摘」して当事会社による問題解消措置の申出を引き出したというのであるから(事例集31頁)、単独行動による競争の実質的制限のほうの、出光統合当事会社とJX統合当事会社とが相互に有力な競争事業者となり、需要者もそれを前提として競争圧力を発揮する、という前提が、事実に反するものであった、と考えざるを得ない。
」
平成28年3月30日 JX・東燃ゼネラル 報告等要請
平成28年1月15日 出光興産・昭和シェル石油 報告等要請