後発炭酸ランタンOD錠
令和元年6月4日 排除措置命令・課徴金納付命令
公取委命令令和元年6月4日・令和元年(措)第1号・令和元年(納)第1号〔後発炭酸ランタンOD錠コーアイセイ〕
両者は共同開発契約
日本ケミファはコーアイセイに全量を製造委託
「合意」成立後、日本ケミファは、事情が生じ、販売開始せず。
日本ケミファは減免申請
法的特徴
2者のみの合意による違反成立後、1者が販売を開始しなかったが、他の1者が課徴金納付命令を受けた事例。
法令の適用「我が国における後発炭酸ランタンOD錠の販売分野」
先発が入っていない
他の後発は、違反行為終了日である10月24日までは存在しなかった(排除措置命令書3頁1(3)ウ)
下記の大西富士男氏の記事によると、「発売開始することなく、2018年11月に販売を断念した」。
星取表によれば、日本ケミファは、「課徴金減免申請を行った者であるが、独占禁止法第7条の2第1項に規定する売上額(課徴金の算定の基礎となる売上額)が存在しなかったため、課徴金納付命令の対象とはなっていない。」。
「免除」なら繰り返し違反加重算定率の根拠となる。売上額なしなら、ならない。
そもそも、売上額がなければ、減免制度の条文(7条の2第10項)の「第一項の規定により課徴金を納付すべき事業者」の要件を満たさない。
参考
先発はバイエルの「ホスレノールOD錠」の模様。
薬価は後発が先発の半分以下
https://gyazo.com/d0a024e984085c740a2ca869abc820d1
日本ジェネリック製薬協会「後発医薬品の薬価算定について(規格間調整)」
大西富士男(東洋経済)
実際、コーアイセイは2018年9月にOD錠を発売する。卸会社への仕切価格は日本ケミファと示し合わせた通りだ。一方、日本ケミファは「安定供給を受けられない」という理由で、発売開始することなく、2018年11月に販売を断念した。
日本ケミファは公取委に対し、2018年10月24日に談合を自主申告したが、このタイミングでなぜ自主申告したのか、会社が口を閉ざすため、その理由は謎のままだ。
このOD錠プロジェクトに関しては、コーアイセイにとって日本ケミファは、製造受託の仕事の発注者であり、販売力も持つ、いわば「生殺与奪の権」を握る存在だ。日本ケミファによる「談合の誘い」を断れば、ここでの大きな仕事を失うリスクがあった。両社の間に力関係の差があることを考えれば、問題ありだとわかっていても、日本ケミファの要請にコーアイセイが従わざるを得なかったと思われる。
公取委の公表資料からもわかるように、今回の談合事件は日本ケミファの主導で行われたことはほぼ明白だ。この後発薬を販売する会社が2社だけで、しかも圧倒的な力の差があったことが大きい。
「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」
平成31年1月22日 立入検査報道
shiraishi.icon
全量製造委託
通常の業務提携の枠組みでは認められにくいかもしれないが、もともとコーアイセイしか製造能力がないのだとすると、認められるかもしれない。
競争法上の検討のベースライン(出発点)をどこに置くか、の問題