平成28年度相談事例
平成29年6月21日
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公表文においては特に、事例1、事例3、事例7、に言及。
山岡誠朗=古川博一・公正取引802号(平成29年)
平成28年度の事例集であるためであると思われるが、平成29年度になってから大きく改正された流通取引慣行ガイドラインの見出し番号は、改正前のものとなっている。
事例1〔家電メーカー販売価格指示〕
(独禁法の問題ではないが)小売業者が委託販売を好まない理由(5頁)→「委託」と「それ以外」の違い(独占禁止法3版389頁) 家電メーカーが売れ残りリスクを負う等を理由に、「単なる取次ぎ」に対する価格指示が独禁法に違反しないとされた事例。独占禁止法3版389頁 事例2〔輸送機器メーカー共同研究〕
事例3〔家電メーカー共同研究開発成果の競争者への供与制限〕
競争者4社以外へのライセンス→部品販売は3年禁止、競争者4社へのライセンス→部品販売は5年禁止
完成品の市場での競争阻害のおそれ
制限期間に差を設けることに特段の合理的な理由が見当たらない
shiraishi.icon3年か5年かということは、事案に依存し一概には言えないと考えられるが、差を設けていたために3年に縮めさせてもよいと判断されてしまったということか。。(それとも5年は長すぎるという相場があるのか?)
事例4〔サービス用機械の共同研究開発成果の競争者への供与制限〕
X: サービス2位(約15%)とP: 機械1位(約40%)が新たな機械A'を共同研究開発
Y: サービス1位(約20%)に売らないようにする
問題とならない
XとPは競争関係にない(Yはライセンスを受けなくともサービス提供が可能)
Yに対する取引制限が約15%(20%以下→セーフハーバー)のXによって行われる
山岡=古川45頁に、事例3と事例4を比較して何が違うかが解説されており、上記2点を挙げている。
shiraishi.icon取引拒絶系他者排除行為によって排除効果が生じないとされた事例と位置付けられるか。独占禁止法3版127頁 事例5〔次世代情報端末の部材の原料の相互供給〕
市場において非常に高いシェアを占める可能性のある2社(X社とY社)が、次世代情報端末に組み込まれる電子部品の製造への組み込みが見込まれる部材Aについて、ユーザーの要求により、安定供給体制の構築を求められている。そこで、X社とY社は、部材Aの価格において大きな割合を占める原料αについて相互供給の取組をする。
被災・事故等の緊急時に相互供給をするのは問題ない。
安定供給のための相互供給は、問題ないとは言えない(市場の状況がわからないので判断困難と回答)。
事例6〔機械メーカー全量OEM供給〕
市場における他の供給者等からの牽制力により、問題ないと回答
山岡=古川47頁によると、検討対象商品役務である機械A新品と、機械A中古や機械Bは、「ユーザーからみて完全に代替性があるとまでは判断できず」であるが、小売業者が、機械A新品に拘るユーザーを見分けて異なる値付けを行うのは通常困難
→新幹線飛行機問題
事例7〔食料品メーカー配送共同化〕
X社(40%)とY社(30%)が、遠隔のZ地域の卸売業者への配送について、共同化
この事例において、XとYが「2社」と呼ばれており、物流子会社は「2社」とは呼ばれていない。
価格情報がX・Y相互間で入手されないようにし(by 物流子会社に伝えないようにする)
配送先・配送数量等の配送の共同化に必要な情報は物流子会社からX・Yに伝わらないようにする(by 情報遮断措置)
事例8〔共通回数券〕
新規事業者への対抗のため既存2社(40%+40%)が共通回数券を導入し、運賃を同一化
価格協定にほかならない。
shiraishi.icon共通リフト券のように効率性をもたらすものでもないという判断が背景にあるか(独占禁止法3版98頁) 事例9〔ゲームアイテム提供確率表示の自主基準〕
社会公共的目的に基づく取組であり、合理的に必要とされる範囲内
事例10〔エネルギー消費量表示に係る算出方法の統一〕
ユーザの適切な商品選択に資する、強制しない、に言及して正当化
事例11〔建築資材の基準運搬時間の例外禁止〕
「製造から一定時間が経過すると品質が大きく低下する性質がある」建築資材Aについて、全国共通の「品質基準」において、「基準運搬時間」が定められているものの、製造販売業者と需要者との協議により基準運搬時間を超える運搬時間の設定を行うことも認められているなかで、P県所在の建築資材Aの製造販売業者のほとんどが加入しているX工業組合が例外を禁止するのは、品質低下による信頼低下の防止というだけでは認められず、問題となるとした事例。
shiraishi.icon自主基準について目的の正当性が認められなかった事例、と位置付けられる。独占禁止法3版93頁 事例12〔ビニールハウス貸付けにおける最低出荷量の指定〕
出荷者のほとんどが組合員、多くが貸付を受けたビニールハウスを使用
shiraishi.icon排除効果の考慮要素
shiraishi.icon明記はされていないが、ビニールハウス貸付事業が国庫補助事業であることも、関係しているかもしれない。(創作・投資のインセンティブとは関係ない、という事例だということになるが、事例集に明記されていないので、将来の『独占禁止法』で引用するには及ばないように思われる。)
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