山崎実業対不二貿易
大阪地判平成30年10月18日・平成28年(ワ)第6539号〔山崎実業対不二貿易〕
D1-Law
独禁法が現れる判示のみ
損害額の算定において、被告が不当廉売をしていたことを理由に、それより高い通常の利益を主張することはできるか
判示
「
(4) 損害額について
ア 本件意匠権侵害(被告ごみ箱販売3)による損害額(争点1-1-2)について
(ア) 原告は、意匠法39条1項による算定に基づく逸失利益の額(90万6295円)を主張する。しかし、原告ごみ箱の販売の単位数量当たりの利益額を認めるに足りる証拠はないから、原告の上記主張は採用できない。
(イ) 原告は、同条2項による算定に基づく逸失利益の額(22万2748円)も主張する。
a 被告の過失ある本件意匠権侵害行為の期間は、被告ごみ箱販売1に係る平成27年6月15日から同年10月21日までと認められるところ、被告ごみ箱の単位数量当たりの仕入原価が205.543円であることは当事者間に争いがなく、この期間の被告による被告ごみ箱の合計販売数量は前記のとおり666個と認められる。そして、被告がこの期間に被告ごみ箱を666個販売して得た売上高が16万0380円であること(乙11)に照らせば、被告ごみ箱の販売の単位数量当たりの売上高は240.811円(小数点第4位以下四捨五入)である。したがって、被告が被告ごみ箱を666個販売して得た利益は、2万3488円(1円未満四捨五入)であると認められる。
(240.811-205.543)×666≒23,488
そうすると、2万3488円が意匠権者である原告の受けた損害の額と推定されるところ、上記推定を覆滅する事由に関する主張、立証はないから、原告の損害額は、2万3488円であると認められる。
b これに対し、原告は、被告の平成27年7月及び同年10月におけるインテリア計画メガマックス千葉NT店に対する販売については、販売額が仕入原価を下回っており、独占禁止法第2条第9項に基づく不公正な取引方法第6項に規定する不当廉売に当たるから、被告ごみ箱の販売の単位数量当たりの売上高を算定するに当たっては、上記販売における売上額に基づくべきではなく、平成26年8月における販売の売上額に基づくべきである(これに従えば、単位数量当たりの売上高は540円となる。)と主張する。
しかし、販売額が仕入原価を下回るからといって直ちに独占禁止法が禁止する不当廉売に当たるわけではない上、意匠法39条2項は、侵害者が実際に得た利益の額をもって意匠権者の損害の額と推定する規定であるから、侵害者が原価以下で販売した場合でも、それが実質的に見て侵害物の廃棄処分と同視し得るといった事情のない限り、実際の販売額に基づいて侵害者の利益を算定すべきものである(意匠権者がそれにとどまらない損害額の賠償を求めるためには、同条1項による損害額を主張立証する道が用意されている。)。そして、上記で原告が指摘するインテリア計画メガマックス千葉NT店に対する販売のうち平成27年7月のものについては、被告が原告から通知書(甲4)を受領する前の時期であるから、通常の取引行為によるものと見るべきであり、その販売単価と同年10月の販売単価は同額である(甲10)から、それらの販売を実質的に見て侵害物の廃棄処分と同視することはできない。
また、原告が被告ごみ箱の販売の単位数量当たりの売上高を算定するに当たって基礎とすべきであるという平成26年10月における被告の販売(被告ごみ箱販売1における販売)については、上記(1)イのとおり、被告が不法行為(本件意匠権侵害)に基づく損害賠償責任を負うものではない。
以上の諸点に照らせば、原告の上記主張は採用できない。
」