令和6年度相談事例5〔温室効果ガス削減パッケージ仕様共同研究等〕
具体的な商品役務・業界が伏せられ、抽象化した言葉で語られているので、イメージが湧きにくいが、もしイメージが湧けば議論しやすくなる事例かもしれない。
事案
製品Aの合計市場シェア70%〜80%のX社ら数社(「X社ら」)が、製品Aのうちパッケージαについて、更に小型化・軽量化するための仕様(「本件仕様」)について共同して研究開発等を行う(「本件取組」)。
一般消費者は、主に内容や価格により製品Aの選択を行っている。
単独で行えないような膨大なコストが生ずるものではない。
共通化割合10%程度。
実施期間は3年程度。
非参加事業者も、合理的対価を支払うことにより、研究成果(パッケージαの本件仕様)を利用することができる。
規範(3(1))
不当な取引制限(2条6項)と私的独占(2条5項)の条文を掲げた上で、
グリーンガイドラインの枠組みを掲げ、
反競争性(「競争制限効果」)と正当化理由(「競争促進効果」)の両方があるなら、両者を比較考量
その一部として共同研究開発ガイドラインの枠組みを掲げる
エ なお、研究開発の共同化自体が独占禁止法上問題とならない場合であっても、参加者の市場シェアの合計が相当程度高く、規格の統一又は標準化につながる等、事業に不可欠な技術の開発を目的とする共同研究開発において、ある事業者が参加を制限され、これによってその事業活動が困難となり、市場から排除されるおそれがある場合に、例外的に研究開発の共同化が独占禁止法上問題となることがある。
適用(3(2))
研究開発競争への影響、製品A市場への影響、のいずれも観点からも、問題なし
ア柱書き 単独で不可能なほどコスト膨大という要素はないが
(ア)製品Aメーカーに加えパッケージメーカーも存在し、非参加事業者によってもパッケージαの小型化・軽量化の研究開発は可能
(イ)他の部分は共同化しない
(ウ)製品A市場への影響は軽微
「一般消費者は、主に内容や価格により製品Aの選択を行っている。」
→ 温室効果ガス削減には関心はない。
共通化割合10%程度
(エ)情報共有は本件取組に必要な範囲に限定。重要な競争変数は共有しない。
(オ)非参加事業者も成果を合理的な対価で利用可能
「新たな技術や優れた商品を生み出す等の競争促進効果」
イ 関係する共同分析・共同検討の影響も軽微
コメント
共同研究開発では、単独で不可能なほどコスト膨大という要素が強調されることが多いが、それがなくとも許される事例を示したことに意義がある。
他の事業者グループ等においても同様の研究をすることができる可能性があるのであれば、成果の合理的対価による開放まで必要かどうかは定かでないが、開放するのであればなおさら問題とされる可能性が減る、という意味で、行為者にとっては意味があるのかもしれない。