令和6年度相談事例2〔医薬品中山間地域等共同配送〕
事案
A県において医薬品群Mの卸売の合計市場シェア60%の3社(X社、Y社、Z社)による業務提携である。
運送事業者W社からの運送役務の共同購入であるが、W社はZ社の子会社である。
(つまり、商流は、W社 →〈X社orY社orZ社〉→ 需要者(病院薬局等))
A県の中山間地域等向けの配送を対象とする。単独で行うことは困難である。
規範(3(1))
2条6項の条文のみが掲げられている。
適用(3(2))
次の諸点(9頁ア〜エ)を掲げて、独禁法上問題となるものではないとした。
ア 目的の正当性
単独で行うことが困難な中山間地域等向けの配送である。
イ 共通化割合が小さい。
ウ 共同取組への参加は自由
部分的に単独で配送することも許される(7頁「なお」)
エ 情報管理がされている。
W社を経由して3社間の情報がやり取りされない。
親会社Z社と子会社W社との間は、システム上分離されており、Z社の従業員はW社のシステムにアクセスできない。(7頁ウ)
コメント
業務提携に関する、シンプルで良い事例である。
「競争を実質的に制限する」の中で、反競争性と正当化理由を総合考慮している。(よくあるパターン)
参加が自由であり、部分的に単独配送も可能であるとした点は、志賀高原索道協会の事例を想起させる。11k72-73 W社は3社とは競争関係にないが、そのような者も不当な取引制限の違反者となり得ることが当然の前提とされている。11k104-105
親子会社間の情報遮断の事例である、とも言える。
共同配送、すなわち、運送役務の共同購入の事例であるから、川上市場で買う競争も論ずる必要があるように見えるが(11k131-132)、そのようなことは論ぜられていない。W社が最初から業務提携の枠組みに参加しており、競争の相手方(買う競争における供給者)の同意があるので、共同保険留意点等と同様の考え方(11k114)によれば、川上市場で買う競争への影響を考える必要はないことになる。 本件は、3社のみ(及びW社)による取組であり、3社に競争者がいる場合は、当該競争者の排除の可能性を検討する必要があると思われるが、(定かではなく、また、読み落としの可能性もあるが)3社には中山間地域等については競争者がいないし、新たに競争者希望者が登場することも考えにくい事案なのではないかと推測される。運送を単独で行うことが困難とされていること等。
言い換えれば、3社のA県における合計市場シェアは60%である旨の記載が冒頭にあるが、これは、都市部を含めたA県全体の数字であると思われ、本件には無関係(irrelevant)なのではないかと思われる。