事例解説アウトライン2021-09-02
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上記の図の「X社」は、公取委公表文では「デベロッパー」と呼ばれているが、これはiPhoneアプリの作成環境を構築するに際してのアップルの用語であると思われる。一般的には「コンテンツ提供事業者」と呼んだほうがわかりやすいと考えられる。
公表文の「デジタルコンテンツの販売等」の定義
(注1)音楽,電子書籍,動画等のデジタルコンテンツ及びアプリの有料の追加機能の販売並びに定期購入契約(サブスクリプション)による音楽の聴き放題等のサービスの提供等をいう。
前提事実(公表文3(2))
アップルは,[アップルが作成した]ガイドラインに基づき,デベロッパーがアプリ内でデジタルコンテンツの販売等をする場合,アップルが指定する課金方法(以下「IAP」という。)の使用を義務付け,IAPを使用した売上げの15又は30パーセント(注4)を手数料として徴収している。
本件行為
[アップルが作成した]ガイドラインには,デベロッパーがアプリ内でデジタルコンテンツの販売等を行う場合,IAPを使用しなければならないことに加え,消費者をIAP以外の課金による購入に誘導するボタンや外部リンクをアプリに含める行為(以下「アウトリンク」という。)を禁止することが定められている。
独占禁止法上の考え方(公表文5(1)イ)
……IAP以外の課金による販売方法という選択肢が存在することは,デジタルコンテンツ等の価格を引き下げる効果を持ち得,消費者の利益となり得るものである(注6)。
上記及び3(2)のような状況の下,アウトリンクを禁止する行為は,IAP以外の課金による販売方法を十分に機能しなくさせたり,デベロッパーがIAP以外の課金による販売方法を用意することを断念させたりするおそれがあり,独占禁止法上問題となり得る。
アップルからの申出(公表文5(1)ウ)
公正取引委員会がアップルに対して上記イの問題を指摘したところ,同社は,音楽配信事業等(注7)におけるリーダーアプリについてアウトリンクを許容する(注8)こととし,ガイドラインを改定することを当委員会に申し出た。
申出に対する評価
上記ウの申出は,音楽配信事業等における独占禁止法上の問題を解消するものと認められる。
法的観点
他の決済事業者への影響でなく
コンテンツ提供事業者(「デベロッパー」)による競争への影響
第219回独占禁止懇話会の議事概要
ゲームは今回の対象ではない
アップルの改定ガイドラインは日本のみならず世界中で適用される予定である。
「アプリ内のリンクを1つ配置可能とすると聞いている」という質問に関連して「実際にどのようなアウトリンクが許容されるのかという点については引き続きアップル・インクと交渉を行っており,十分な競争圧力が働くようなアウトリンクの実現に向けて今後も尽力していきたい。」
本件と確約制度
その他
アップルは,今後,デベロッパーの予見可能性を高めるため,ガイドラインの明確化やアプリ審査の透明性の向上のための取組を進め,その取組状況について,3年間にわたって年1回,公正取引委員会に報告する旨を申し出た。