事例解説アウトライン2021-08-03
(会社からのリリースのみがあり、企業結合事例集に載るより前の段階)
前提
「敵対的公開買付け」と報道等
商品役務の取引ベースでは、売主(日本製鉄)と買主(東京製綱)の関係の模様
本件の概要
本公開買付けが2021年3月8日をもって終了した結果、東京製綱株式3,236,535株(本公開買付け後における所有割合(注):19.91%)を所有することになりましたが、
本公開買付けの終了後、公正取引委員会から当社と東京製綱との間に結合関係が成立するとの指摘を受け、同委員会との協議を踏まえ、当社として下記のとおり同株式の一部を売却していくことといたしました
① 当社は、東京製綱株式の議決権保有比率を、運用指針において「結合関係が形成・維持・強化されず、企業結合審査の対象とならない」とされている 10%以下とするべく、1,625,500 株相当分を売却する。
公取委の「結合関係」概念
法律にはなく、企業結合ガイドラインの概念
定義(第1の冒頭)
複数の企業が株式保有,合併等により一定程度又は完全に一体化して事業活動を行う関係
帰結(第2の冒頭)
第1で企業結合審査の対象となる企業結合については,当該企業結合により結合関係が形成・維持・強化されることとなるすべての会社(以下「当事会社グループ」という。また,以下単に「当事会社」という場合,企業結合を行う一方の会社に,当該会社とその時点で結合関係が形成されているすべての会社を加えた会社群を指す。)の事業活動について,後記第3~第6の考え方に従い,当該企業結合が一定の取引分野における競争に与える影響を判断する。
株式所有をめぐる細則(企業結合ガイドライン第1の1)
自動的に結合関係あり
議決権保有比率20%超かつ第1位
「結合関係が形成・維持・強化されず,企業結合審査の対象とならない。」
議決権保有比率10%以下または第4位以下
その中間の場合、「次に掲げる事項を考慮して結合関係が形成・維持・強化されるか否かを判断する。」
(ア) 議決権保有比率の程度
(イ) 議決権保有比率の順位,株主間の議決権保有比率の格差,株主の分散の状況その他株主相互間の関係
(ウ) 株式発行会社が株式所有会社の議決権を有しているかなどの当事会社相互間の関係
(エ) 一方当事会社の役員又は従業員が,他方当事会社の役員となっているか否かの関係
(オ) 当事会社間の取引関係(融資関係を含む。)
(カ) 当事会社間の業務提携,技術援助その他の契約,協定等の関係
(キ) 当事会社と既に結合関係が形成されている会社を含めた上記(ア)~(カ)の事項
これまでの流れ
平成23年企業結合審査手続等見直し前
結合関係があるという判断が「一定程度又は完全に一体化して事業活動を行う関係」という判断につながるという観点から、水面下で特に争いの種となったと言われる。
以前から新日本製鐵が株式を保有していたトピー工業・合同製鉄について、結合関係はあるとされたが(H23事例集33〜34頁)、一定の競争(白石がいう内発的牽制力)が維持されるとした(H23事例集34〜35頁)。
本件の状況
垂直型企業結合と「結合関係」
本公開買付け終了後、公正取引委員会より、本公開買付け後の当社の議決権保有比率が 10%を超えたことを前提に、上記の役員の異動が東京製綱において定時株主総会の議案とされ、同総会における決議により役員が異動することとなったことも考慮した結果、当社と東京製綱との間に結合関係が成立するとの判断が示されたものです。