ブラウン管
最判平成29年12月12日・平成28年(行ヒ)第233号〔ブラウン管〕
本件の概要説明(白石忠志)法学入門むけ
最高裁判決の主要部分(テキスト)(D1-Lawによる)
第1段階
2 独禁法は、国外で行われた行為についての適用の有無及び範囲に関する具体的な定めを置いていないが、同法が、公正かつ自由な競争を促進することなどにより、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的としていること(1条)等に鑑みると、国外で合意されたカルテルであっても、それが我が国の自由競争経済秩序を侵害する場合には、同法の排除措置命令及び課徴金納付命令に関する規定の適用を認めていると解するのが相当である。したがって、公正取引委員会は、同法所定の要件を満たすときは、当該カルテルを行った事業者等に対し、上記各命令を発することができるものというべきである。
第2段階
そして、不当な取引制限の定義について定める独禁法2条6項にいう「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」とは、当該取引に係る市場が有する競争機能を損なうことをいうものと解される(最高裁平成22年(行ヒ)第278号同24年2月20日第一小法廷判決・民集66巻2号796頁参照)。そうすると、本件のような価格カルテル(不当な取引制限)が国外で合意されたものであっても、当該カルテルが我が国に所在する者を取引の相手方とする競争を制限するものであるなど、価格カルテルにより競争機能が損なわれることとなる市場に我が国が含まれる場合には、当該カルテルは、我が国の自由競争経済秩序を侵害するものということができる。
第3段階
3 前記事実関係等によれば、我が国テレビ製造販売業者は、自社との資本関係又は緊密な業務提携関係に基づき、現地製造子会社等を含むグループ会社が行うブラウン管テレビの製造販売業全体を統括し、ブラウン管テレビの生産計画や仕様等を決定するなどした上で、現地製造子会社等に指示して製造させ、また、我が国テレビ製造販売業者又はその子会社等は、現地製造子会社等が本件ブラウン管を用いて製造したテレビの全部又は相当部分を購入した上で販売していたものである。このように、我が国テレビ製造販売業者は、ブラウン管テレビの製造業務については現地製造子会社等に移管又は委託していたものの、ブラウン管テレビの製造販売業の主体として引き続き自社及びその子会社等が行う当該事業を統括し、遂行していたものであり、現地製造子会社等は、我が国テレビ製造販売業者による指示を受ける関係にあったものということができる。そして、我が国テレビ製造販売業者は、ブラウン管テレビの製造販売業を統括し、遂行する一環として、その基幹部品であるブラウン管の購入先、購入価格、購入数量等の重要な取引条件を決定し、その購入を現地製造子会社等に指示し、現地製造子会社等に本件ブラウン管を購入させていたものである。さらに、我が国テレビ製造販売業者は、サムスンSDIほか4社との間で本件ブラウン管の取引条件に関する本件交渉等を自ら直接行っていたものであるところ、本件合意は、その本件交渉等においてサムスンSDIほか4社が提示する価格を拘束するものであったというのである。
そうすると、本件の事実関係の下においては、本件ブラウン管を購入する取引は、我が国テレビ製造販売業者と現地製造子会社等が経済活動として一体となって行ったものと評価できるから、本件合意は、我が国に所在する我が国テレビ製造販売業者をも相手方とする取引に係る市場が有する競争機能を損なうものであったということができる。
まとめ
4 以上によれば、本件合意は、日本国外で合意されたものではあるものの、我が国の自由競争経済秩序を侵害するものといえるから、本件合意を行った上告人に対し、我が国の独禁法の課徴金納付命令に関する規定の適用があるものと解するのが相当である。所論の点に関する原審の判断は、是認することができる。
最高裁判決の主要部分(判決書)
https://gyazo.com/8657ce594e65a9b4cfd5ccec87fa5cdf
https://gyazo.com/205fcf32a1578f1f089eea7fd34d4778
最高裁判決の主要部分(民集)
https://gyazo.com/e316558a8e02f2d8538bc6b930a69d2c
https://gyazo.com/9d5c93445d0384b723c5ef307914fba7
https://gyazo.com/e2e7b4388335d8f7d409c6aac82423b6
平成30年1月17日 最高裁判決の更正決定
判決書PDFの末尾に更正決定書あり
平成29年12月12日 最高裁判決(サムスンSDIマレーシア)
最判平成29年12月12日・平成28年(行ヒ)第233号〔ブラウン管〕
平成30年1月17日に更正決定
評釈等
池原桃子・最判解民事篇平成29年度(下)28事件
法曹会編『最高裁判所判例解説民事篇平成29年度(下)(10月〜12月分)』(法曹会、2020年)690〜717頁(池原桃子執筆部分)
長澤哲也・論究ジュリスト25号(2018年春号)
長澤哲也「国際カルテルに対する独禁法の適用範囲 ――ブラウン管事件最高裁判決」論究ジュリスト25号(2018年)166〜174頁
田辺治・商事法務2166号(2018年5月5・15日合併号)
白石忠志・NBL1117号(2018年3月1日号)
審決等データベース
プレゼン用 判決書16up
プレゼン用 判決書主要部+図+条文 4up
プレゼン用 最高裁・MT高裁・比較4up
裁判所サイト
更正決定のあと、1文字余分に消してしまっている。2021-05-12現在。
裁判要旨が掲げられている。2018-02-11現在。
https://gyazo.com/92beb7624b5601bc121622ea9b7c660f
サムスンSDI韓国 上告棄却・上告不受理
MT映像ディスプレイ等 上告不受理
「我が国の自由競争経済秩序の侵害する場合には」
「当該カルテルが我が国に所在する者を取引の相手方とする競争を制限するものであるなど、価格カルテルにより競争機能が損なわれることとなる市場に我が国が含まれる場合には、当該カルテルは、我が国の自由競争経済秩序を侵害するものということができる。」
平成29年11月28日 サムスンSDIマレーシア 上告棄却・上告受理(一部排除)
事案
http://shiraishitadashi.jp/_presen/keynote/CRT.jpeg
参考:Motorola v. AUO
http://shiraishitadashi.jp/_presen/keynote/AUO_1.jpeg
平成29年12月1日現在の「最高裁判所開廷期日情報」
https://gyazo.com/304e9bb2ed118ee1d986c87d94aed7ab
平成28年4月22日 ブラウン管 サムスンSDI韓国 東京高判
平成28年4月13日 ブラウン管 MT映像ディスプレイ等東京高判
平成28年1月29日 ブラウン管 サムスンSDIマレーシア東京高判
平成27年5月22日 ブラウン管 審決
発表文
MTPD審決書
サムスンSDI韓国審決書
サムスンSDIマレーシア審決書
平成26年7月18日 ブラウン管 直接陳述
7月18日(金)、ブラウン管審判事件の直接陳述がおこなわれましたので傍聴してきました。
14時からMT映像ディスプレイ等、15時10分からサムスン・エスディーアイ等。
1階玄関で整理券が配付されていました。存じ上げている方が2番の整理券を受け取っているところで、私が3番でした。1番は池田先生に違いない、となりかけましたが、よく考えてみると代理人なので違う、と2番の方からご指摘いただきました。
19階で、整理券の写真をブログに、という話で盛り上がりましたが、終了後に整理券を回収するということでしたので、公取委にも都合があるものと考え、掲載は遠慮することとしました。14時の整理券(桜色)と15時10分の整理券(鶯色)の2枚に分かれておりました。
委員会は、山本和史委員を除く4名でした。最近の審決(6月9日フジクラの件)、最近の命令(6月19日段ボールの件)には、山本委員は名を連ねておられるので、異なる事情があるということでしょう。
向かって左から、山﨑委員、小田切委員、杉本委員長、幕田委員、の順。
いつもの審査官のあたりに、被審人代理人がいます。
いつもの被審人代理人の後ろのあたりに、スクリーンが、委員会向けと傍聴席向けの2枚、置かれ、パワーポイントのスライドが映写されます。
MT映像ディスプレイ等については長澤哲也弁護士がおひとりで直接陳述。40分くらいだったと思います。
サムスン・エスディーアイ等については内田晴康弁護士が冒頭、伊藤憲二弁護士が総論、池田毅弁護士が各論、というように、直接陳述。1時間を少し超えたでしょうか。
2組の直接陳述により、それぞれの審決案主文・理由の概要は知ることができたように思われます。それぞれの方法で、審決案理由の主要部の引用も映写されました。
それらについてここに書くのは、控えます。
私は、直接陳述を傍聴する機会はなかなかないので是非、ということに加え、どこまでが新たに公開情報となるのかを見極めに行ったようなところもあったのですが、所期の目的は達しました。
平成22年3月29日 追って送達した分に関する公表
平成21年10月7日 公取委命令
公表文
排除措置命令書
送達に関する公表文別紙
課徴金納付命令書