セミナー資料2026-04
時系列
平成31年2月 本件行為(労働組合からの団体交渉の求めに応じない行為)
令和5年12月20日 中央労働委員会の命令
労組法7条2号の不当労働行為に該当する旨
(不当労働行為)
第七条 使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
一 (略)
二 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。
三・四 (略)
(労組法27条以下に手続規定)
令和7年9月16日 東京地裁判決
令和8年3月12日 東京高裁判決
本件の事案・判決を離れて一般的に。
https://gyazo.com/1eecd0e56150b3dcb69c4081ecb37c31
事前ご質問
コンビニ加盟店の団体による本部との交渉
水色の丸が労働者でない(とされる者である)という事例
複数事業者が意思の連絡をして労働組合との団体交渉をした場合、独禁法違反となることがあり得るか。
黄緑の四角の側が共同行為をする事例
労組法14条
(労働協約の効力の発生)
第十四条 労働組合と使用者又はその団体との間の労働条件その他に関する労働協約は、書面に作成し、両当事者が署名し、又は記名押印することによつてその効力を生ずる。
独禁法以外の法律に「できる」旨の一般的・抽象的な規定があるからといって、それに従う行為は必ず独禁法違反なしとなるか。
例 取引の一方当事者が合計市場シェア100%の複数事業者の共同体である場合
(参考)独禁法の適用除外規定の例
独禁法22条
第二十二条 この法律の規定は、次の各号に掲げる要件を備え、かつ、法律の規定に基づいて設立された組合(組合の連合会を含む。)の行為には、これを適用しない。ただし、不公正な取引方法を用いる場合又は一定の取引分野における競争を実質的に制限することにより不当に対価を引き上げることとなる場合は、この限りでない。
一〜四 (略)
労働組合側が必ず独禁法違反なしとなるかのように言われている背景には、憲法28条などを基盤とする強い政策的要請があるからであると考えられる。使用者の側にも同じことを言えるか。
日本国憲法28条
第二十八条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。
平成31年2月当時に、日本港運協会側が独禁法違反なしと自ら判断できる状況にあったか
公取委も政策発信に活用。
目次
「第5」で、使用者側のカルテルが独禁法違反となる可能性を強調。
https://gyazo.com/e4165a4e38997bc3dcb39b0ac47a7389
(目次の続きは略)
「第3」で、労働組合だけでなく使用者も違反なしと述べたかに見えるが、例外の可能性を認めている(9〜10頁)。
https://gyazo.com/45bccb699db524e870ace7deb59f6b56
https://gyazo.com/656a59652831b19161f4daa454a55228
「第4」・「第5」で、使用者側の独禁法違反の可能性を強調。
「「第3」で違反なしとなる場合」を除く旨の記載があるが(15頁注38)、「第3」で例外を認めている。
https://gyazo.com/a566bf580de43eb6dbb9a4c245e7f8c6
報告書を特集した公正取引811号(平成30年5月)やジュリスト1523号(平成30年9月)にも、使用者側を独禁法違反なしとする旨の記載はみられない。
平成31年2月(本件生起後)の荒木尚志あっせん員の説明は、上記(「第3」+15頁注38)を説明したもの。
本件に関するメモ
土田和博意見書(訴訟では乙A90号証)10頁
次に、団体交渉の対象となる港湾労働者が全国の港湾労働者に占める割合は約44パーセントとされており[脚注番号省略]、港湾労働者の賃金について協議、合意する事業者の、上記の一定の取引分野における合算シェアも最大で約44パーセントと考えられる。……
国の控訴答弁書20頁
白石意見書②が、原判決が白石意見書①について「港湾運送事業に従事する全常用労働者のうち、被告補助参加人らの組合員は約44パーセント程度にすぎない点には触れられておらず」(原判決30頁)と判示したことを批判する部分(同意見書8頁)についても、土田意見書(乙A90)がマーケットシェアに言及した趣旨を十分斟酌しない批判であるように思われる。
時系列
令和4年4月6日 日本港運協会側が提出した意見書(3名)
令和4年6月17日 土田和博意見書
令和5年12月20日 中央労働委員会の命令
令和7年2月10日 令和4年4月6日の意見書とほぼ同じメンバー(2名)による意見書
令和7年2月14日 公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長による裁判所への回答
令和7年4月10日 白石第1意見書
令和7年9月16日 東京地裁判決
令和7年11月10日 白石第2意見書
令和8年1月26日 国の控訴答弁書
令和8年1月27日 口頭弁論期日(判決書1頁)(1回のみ)
令和8年3月12日 東京高裁判決
東京高裁判決は、約44%に関する上記の東京地裁判決の判示部分を差し替えた(判決書7〜8頁)。
東京地裁判決は、「原告の会員事業者は、港湾事業者のほぼ100パーセントを占めている。」と認定し(判決書21頁)、東京高裁判決もその点をそのまま引用している(判決書7頁)。
東京高裁判決について
判決書10〜11頁
……本件回答拒否の時点で、控訴人が産別最低賃金について本件団交申入れに対する統一回答をすること及び本件準備行為が独禁法に違反すると判断される具体的なおそれがあったか、又は控訴人がそのように考えることに合理的な理由があったかを検討すべきであり、
それを否定する結論の理由として、
検討会報告書の内容理解
白石意見書は本件回答拒否の時点では存在しなかったこと
国交省からの指摘について
「平成30年2月[ママ:平成31年2月と思われる(白石)]までに公取委による調査等や資料提供依頼等がなかったこと」
旧労組法の制定過程は本件には関係がない(と裁判所が考える)こと
特徴
「本件回答拒否の時点で」と述べることで、時点を限定するだけでなく、(当時も可能であったはずの)独禁法違反の成否に関する具体的議論は、しない、という暗黙の考えを示しているように見える。
労組法関係であれば独禁法違反なしとなる、という抽象的レイヤーに終始とどまり、
白石意見書の用途を、当時の意思決定は白石意見書を見て行われたのかという、あり得ない用途に限定することで、意味を持たない旨を判示し、
公取委から調査の予兆が示されていないことを根拠として、当時は摘発のおそれはなかった旨を判示
公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長による裁判所への回答
一般に、労働法制により規律されている分野については、独占禁止法上の問題とはならないとされております。①〜⑤の行為については、労働組合と使用者側の団体との間における労働協約に係るものであることから、独占禁止法上の問題とはならず、B類型に該当すると考えられます。この考え方については、平成31年2月19日時点及び現時点においても、変更はありません。
「①〜⑤の行為」は、東京地裁判決の判決書22頁の「①〜⑤の行為」と同じ(裁判所照会事項5頁)
「B類型」は、「「当該行為それ自体では原則として独占禁止法違反とならないもの」」(裁判所照会事項6頁)
裁判所照会事項は、①〜⑤の行為などは、「次のA類型又はB類型のいずれに分類されますか。」として照会。
「A類型」は、「「独占禁止法の適用対象となるもの」、「独占禁止法に抵触するもの」、「独占禁止法の関係規定に原則として違反すると考えられるもの」、「独占禁止法違反となるおそれがあるもの」、又は、「独占禁止法上問題となるもの」のいずれか」