アマゾン同等性条件
平成29年8月15日 アマゾン・サービシズ・インターナショナル・インク(ASII)
公取委公表平成29年8月15日〔アマゾン同等性条件Ⅱ〕
公正取引委員会「アマゾン・サービシズ・インターナショナル・インクからの電子書籍関連契約に関する報告について」(平成29年8月15日)
「Amazon.co.jpウェブサイト上で電子書籍の配信事業を行っている」ASIIから、その同等性条件(「本件同等性条件」)について、「自発的な措置を講じるとの報告を受け」た。公取委としては、「上記3の措置が上記2の懸念を解消するものと判断した。」
公取委の審査には言及していない。
公表文第1の2に、6月1日の「懸念」と同じものを電子書籍に置き換えた「懸念」を掲げている。
今回も、固有名詞は一切登場しない。
https://gyazo.com/3cbf54ed980cfbdccc5f9d245fb84902
ASIIが同等性条件に係る条項を行使しない、という自発的措置に関し、「当委員会は,ASIIに対し,上記3の①の措置に伴って電子書籍関連契約における本件同等性条件以外の条件が変更される場合には,その変更が出版社等にとって不利益なものとならないよう,その変更について出版社等と十分に協議するよう申し入れた。」
報道
朝日
「アマゾン子会社は4日までに契約を見直す対策を講じ、取引のある出版社に伝えたという。」
NHK
「しかし、今月4日にこうした契約の条件を自主的に撤廃し、出版社に通知するとともに公正取引委員会に報告しました。」
日経
「アマゾン側は今月4日までに、条項撤廃を出版社側に通知したことを公取委に報告した。」
「アマゾンと作家との販売契約になる「キンドル・ダイレクト・パブリッシング(KDP)」は見直しの対象外。」
なお、本件との関係は不明であるが、『ブラックジャックによろしく』の作者である佐藤秀峰氏が、この種の契約を背景に「無断」で自作を0円でAmazon.co.jpにおいて売られたと7月下旬にネット上で述べていたところである。
平成29年6月1日 アマゾンジャパン 被疑事件の処理についての発表
公取委公表平成29年6月1日〔アマゾン同等性条件Ⅰ〕
「アマゾンジャパン合同会社によって運営されている電子商店街」(公表文注1)であるAmazonマーケットプレイスに関するもの。
「価格等の同等性条件」と「品揃えの同等性条件」
それぞれ注で定義
「Amazonマーケットプレイス(注1)の出品者(注2)との間の出品関連契約」に限定
shiraishi.icon電子書籍は対象外か?(公取委は「電子書籍」とは言っていない)
参考:発表2日前の日経の報道(「電子書籍」と言っているものがある)
「疑い」
公表文冒頭で、行為要件充足行為をしている疑い、としておいて、注5で19条(一般指定12項)「の規定に違反する疑い」
「疑い」の根拠を具体的に述べたかに見える公表文第1の5は、固有名詞の一切登場しない全くの一般論にとどまっている。
shiraishi.icon本件は、未施行の確約制度に擬した公表文になっているが、確約制度を用いる場合、この程度の「疑い」で足りるのか。
電子商店街が同等性条件「を課す場合には、例えば次のような効果が生じることにより、競争に影響を与えることが懸念される。」
「① 出品者による他の販売経路における商品の価格の引下げや品揃えの拡大を制限するなど、出品者の事業活動を制限する効果」
「② 当該電子商店街による競争上の努力を要することなく、当該電子商店街に出品される商品の価格を最も安くし、品揃えを最も豊富にするなど、電子商店街の運営事業者間の競争を歪める効果」
「③ 電子商店街の運営事業者による出品者向け手数料の引下げが、出品者による商品の価格の引下げや品揃えの拡大につながらなくなるなど、電子商店街の運営事業者のイノベーション意欲や新規参入を阻害する効果」
shiraishi.icon①を、一般指定12項の行為要件充足行為としてでなく、同等性条件がもたらす効果として述べている。
出品者の競争への影響という見方
出品者に対する優越的地位濫用という見方
参考:EUのアマゾン事件
栗谷康正・担当審査官解説・公正取引801号(平成29年)
アマゾンジャパンの地位や、同社が出品者に課していた同等性条件の影響を評価する際には、Amazonマーケットプレイスの地位だけでなく、Amazon.co.jpウェブサイトにおける同社による販売がもたらす力を考慮する必要がある。(86頁)
本件の処理が確約手続に類似していると報道されているが、2つの点で異なるので、確約手続の施行は必要。(87〜88頁)
被疑違反事業者に法的安定性がない。
手続の透明性がない。
平成28年8月8日 立入検査報道