「結合関係」と「企業結合集団」の違い
「結合関係」
違反要件の成否を検討するための概念
条文にはなく、企業結合ガイドラインが根拠
要件:企業結合ガイドライン第1の1(1)(株式取得を念頭に置いた記述)
親子関係でなくとも、結合関係があるとされる。
効果:「複数の企業が株式保有,合併等により一定程度又は完全に一体化して事業活動を行う関係」であるとして扱われる(企業結合ガイドライン第1柱書き)
なお、呼称の問題として、企業結合ガイドラインは、結合関係でつながる会社を「当事会社グループ」と呼んでいるので、下記「企業結合集団」と並べて検討すべき概念は「当事会社グループ」であるが、「結合関係」のほうが概念として有名であるので、「結合関係」を表題とした。
合併・分割(による事業譲渡)・株式移転・事業譲受けによって事業が一体化するなら当然に結合関係は生じると考えられている(なのであまり争点にならない)
株式取得(または従前から所有)で、かつ、親子会社になるほどではない、という場合に、争点となる。
平成23年見直し前は、(水面下で)激しく争われたことがある模様であるが、それは、「結合関係あり」→「完全に一体化」という扱いがされていたからではないか、と推測される。
平成23年見直しを契機とした違反要件判断の整理により、「結合関係があるとしても、結合関係がある者同士が競争行動をとる(内発的牽制力を発揮する)こともある」ということが認められるようになった。それが、検討対象市場における競争の実質的制限の成立を否定する考慮要素となり得ることになる。
公取委の公式見解は、企業結合ガイドラインに従前から「一定程度又は完全に一体化して」と書いてあるので、(経済界から批判されなくても)そのようなことは従前から分かっていてガイドラインに書き込まれていたことである、という説明となると推測される。
「企業結合集団」
届出要件の成否を検討するための概念
法律で定義(刑罰まで用意されている届出義務の成否を決める概念)
10条2項で定義
16条までの届出義務規定においてそれを活用
10条2項 → 会社法と同じ意味で親子会社関係がある会社同士のつながりを指す。
したがって、「結合関係はあるが同一の企業結合集団に属しない」ということが起き得ることになる。