Spring2020 競争停止行為
2020-02-03
ハードコアカルテル
課徴金・刑罰
減免制度
秘匿特権
非ハードコアカルテル
垂直的制限行為
第2回はかなり分量が多く、できなかったことがいくつかありました。
内発的牽制力
平成26年度相談事例8には、第3回(今回)の非ハードコアカルテルの箇所で触れます。
業績不振の他の供給者の救済
因果関係の問題としての説明(USEN事例の紹介)は第2回の最後の1分でしましたが、正当化理由の問題としての説明を含め、第6回(企業結合各論)でもう一度触れます。
他のいくつか
下記のとおり、第3回(今回)の冒頭で時間をとって触れます。
━━━━━━━━━━━━
サブマーケットの画定
「新幹線飛行機問題」と書いた項目の要点
問題が起きる条件
供給者が特定の需要者を他から区別して価格設定できる(discriminatory pricing)
他の需要者からの横流し(arbitrage)がない
personalised pricing
━━━━━━━━━━━━
事業者
消費者以外は全て含む
「人材と競争」に関する第2回前週配布資料の簡単な説明
━━━━━━━━━━━━
国際事件と競争法
この日の冒頭に時間をとって説明します。
━━━━━━━━━━━━
ハードコアカルテル
ハードコアカルテルとは
競争者同士の共同行為であって、行為要件が満たされれば高い確率で違反となり、強いエンフォースメントの対象となるもの。
日本では、不当な取引制限のうち課徴金の対象となるものの要件が、「ハードコアカルテル」と呼ばれるものに合致するように作られている。
不当な取引制限……であつて、商品若しくは役務の対価に係るもの又は商品若しくは役務の供給量若しくは購入量、市場占有率若しくは取引の相手方を実質的に制限することによりその対価に影響することとなるもの
ハードコアカルテルと非ハードコアカルテルとの法的異同
適用条文は同じ(日本では2条6項)
ハードコアカルテル
行為要件を満たすか否かが焦点
非ハードコアカルテル(=業務提携)
弊害要件を満たすか否かが焦点
両者の区別
弊害をもたらす確率の高さ
悪性・・・ハードコアカルテルは課徴金・刑罰
当然違反と原則違反
当然違反
特定の要件を満たせば、他の要件の充足の立証を要せず、違反となるという考え方。
ハードコアカルテルについて、行為要件を満たせば違反、と考えられている法域は多い。
日本では、ハードコアカルテルでも、条文上、行為要件以外に要件((行為により)一定の取引分野における競争を実質的に制限する)がある
→「行為要件を満たせば原則として違反となる」という説明で、実質は「当然違反」の法域とほぼ同じ扱い。
意思の連絡
意思の連絡 ≒ 合意 agreement
EUのArticle 101 TFEUでは「agreements」に加えて「concerted practices」でも行為要件を満たすので広い、と言われることがよくあるが、EUで実際にどこまで広がっているのか、他方、日本は立証の問題として広がっているのではないか、など精査が必要。 立証
間接事実の積上げ
減免制度等による直接証拠の入手
合意が立証された典型パターン
審決案32-34頁
合意の立証ができなかったとされた例
加藤化学の合意の有無について
「ウ」・・審決書2-5頁の差替え部分
「エ・オ」・・審決案公表版78-80頁
(公取委がした仮名化による頁番号の移動により、審決書で指示された審決案の頁番号と審決案公表版の頁番号は一致しません。)
ハブ&スポーク
https://gyazo.com/cce2e8abb3e6cee2a69ed35d9ec28808
競争者も同じ条件に従うことを確認したうえで相手方と取決めをした場合など
https://gyazo.com/1c574d5fa4776150b3b4fb86c11b1396
「カルテル規制では協調的行動があるだけでは違反とならないが、企業結合規制では協調的行動でも違反となり得る」の意味
基本合意と個別調整
http://shiraishitadashi.jp/_presen/keynote/BidRiggings_Normal.jpeg
公取委の標準的な捉え方
基本合意が違反行為(不当な取引制限)
個別調整は課徴金要件との関係で出てくる(7条の2の「当該商品又は役務」)
刑事裁判
「相互に拘束し、遂行することにより」
基本合意も違反行為だが(不当な取引制限のうち「相互拘束」)
個別調整も違反行為(不当な取引制限のうち「遂行」)
(入札談合でない事件では「相互に拘束することにより」)
公取委の調整・変容
告発状では刑事裁判にあわせている模様
1件のみの発注でも不当な取引制限とする事件の登場
移籍制限ルール
引き抜き禁止協定 No-poach agreement
━━━━━━━━━━━━
課徴金・刑罰
ハードコアカルテルに対し、
排除措置命令と損害賠償のほかに、
米国:刑罰
法人と自然人従業者
自然人従業者は実刑あり
DOJが提訴し裁判所が判断
裁量的(ガイドラインあり)で高額
「制裁金」と呼ぶ必要なし(私見)→ fineの解説 日本:課徴金と刑罰
課徴金(公取委が命令)
非裁量的
違反によって得た不当利益をもとに掛け算をして算出、という発想を基本として、計算式を法定
公取委が上記を改めようとして種々動いたが反対等があってうまくいかず、一部のみがやや硬直的な形で実現した結果
刑罰
公取委が告発→検察が起訴
これまでに実刑なし
令和元年改正のポイント
課徴金対象期間の長期化(多く遡る)
課徴金算定基礎の拡大(下記)
「当該商品又は役務の売上額」がない場合にも課される
減免制度の枠内での合意減額制度
秘匿特権
(前週配布資料の都合で以下の2つの順序を逆転しました。)
(その期間中に違反行為をしていたことが前提)
現行法3年
最大で約10年
https://gyazo.com/d2da02471dac351f9f6dc83cc20547b3
特定非違反供給子会社等の売上額(7条の2第1項1号)x10%
当該商品又は役務に密接に関連する業務の対価に相当する額(7条の2第1項3号)x10%
当該商品若しくは役務を他の者に供給しないことに関し…得た金銭その他の財産上の利益に相当する額(7条の2第1項4号)x100%
━━━━━━━━━━━━
減免制度 leniency
違反者による違反行為通報制度
令和元年改正後の7条の4〜7条の6
下記のような状況のもとで成立している制度
行為要件を充足する行為(合意)の発見・立証が難しい
抑止・制裁の必要性が大きい
課徴金・刑罰が重い
違反者が常に複数
社内調査で発見したとき減免申請 leniency application すべきか否か
損害賠償等のデメリットが大きく減免申請が減っていると言われる(?)
減免申請後の調査協力
法的安定性 v 協力の継続的確保
令和元年改正★(NBL1154号27〜35頁のうち28〜30頁)
「1位は免除」は改正なし。
2位以下の減額幅を縮小。違反者数の上限は撤廃。
減額幅の上乗せについて合意減額制度(7条の5)
━━━━━━━━━━━━
秘匿特権★(NBL1154号27〜35頁のうち33〜35頁)
公取委規則・ガイドラインで決まる。
令和元年改正の法改正そのものでなく、改正案を国会に提出する条件として決まったもの。
━━━━━━━━━━━━
非ハードコアカルテル
非ハードコアカルテルとハードコアカルテル
既出
共通化割合
業務提携の際、競争関係にある商品役務の全体の価格のうち共通化されて競争がなくなる部分の割合
例:物流共通化の場合
割り算「共通化物流コスト/商品役務全体価格」
内発的牽制力の状況を知るための指標
反競争性の成否は内発的牽制力だけで決まらない
販売段階の価格等のセンシティブ情報が共有されないようにする施策の意味
共同購入(練習問題)
川上市場での買う競争への弊害の有無(共同購入者が需要者となる市場)
購入価格を揃えるので購入価格カルテルだが、例外的に弊害要件の成否を論じ、市場シェアが低いことを根拠に違反なしとする(下記)
川下市場での売る競争への弊害の有無(共同購入者が供給者となる市場)
通常の業務提携と同様、内発的牽制力の有無(共通化割合の低高)を含み、弊害要件の成否を総合的に判断する(下記)
「その対象となる原材料等の需要全体に占める共同購入参加者のシェアが高い場合又は製品の販売分野における参加者のシェアが高く,製品製造に要するコストに占める共同購入の対象となる原材料等の購入額の割合が高い場合には,独占禁止法上問題が生じる。」
━━━━━━━━━━━━
全体像
★垂直的制限行為の全体図
被拘束者からの搾取(優越的地位濫用)、という第3の捉え方も可能。
以下では、競争停止の観点からの問題のみを取り上げる。
他者排除は他者排除のなかで、搾取は搾取のなかで。
違反要件の検討枠組み(おさらいですが)
行為要件(を充足する行為)
弊害要件(を充足する弊害)
市場(において)
反競争性(があり)
正当化理由(がない)
因果関係(行為と弊害との間の)
価格の制限
原則違反(当然違反に近い)
行為要件を満たすか否かが焦点
(ハードコアカルテルと同じ)
「単なる取次ぎ」などの問題★
地域の制限
価格制限でないので弊害要件も検討
価格維持効果
「非価格制限行為により、当該行為の相手方とその競争者間の競争が妨げられ、当該行為の相手方がその意思で価格をある程度自由に左右し、当該商品の価格を維持し又は引き上げることができるような状態をもたらすおそれが生じる場合をいう。」(流通取引慣行ガイドライン第1部3⑵イ)
応用問題(事件の存在のご紹介のみ。非常に複雑。)
EU:国ごとに分割している場合には特に敏感
販売方法の制限
求める販売方法に合理的理由がある場合
条件を満たす販売店のみに卸す
(いろいろ言われているが)販売店を選別する条件の内容に応じ、価格制限であったり地域制限であったり販売方法制限であったりし、それぞれについて言われている基準を当てはめればよいだけではないか。
MFN条項
プラットフォームの競争
提供者の競争
事例
欧州の事例の状況
「narrow MFN」をめぐる状況
━━━━━━━━━━━━
2020-02-03