2025年度法科大学院「経済法」定期試験の解答のポイント
答案用紙は、白石自作のもの。A4縦長を横に2枚並べてA3横長にしたもの。1行はA4短辺に相当。第4問は14行以内。第5問は30行以内。
試験問題PDF
第1問
ポイント(解答例ではない)
「不公正な取引方法」は、10条〜16条においては主語が「会社」であり、19条においては主語が「事業者」であって、主語が異なることが条文上予定されているため、2条9項には主語の記載がないと考えられる。
メモ
この問題は7名を除き0点でした。したがって、この問題が0点でも、他ができていたために良い成績が付いた学生は多く存在します。
第2問
ポイント(解答例ではない)
2条9項4号イにおいて拘束の対象となる「当該商品の販売価格」にいう「当該商品」とは、条文上、柱書きの「自己の供給する商品」であり、両者は同じものであることが必要である。
メモ
「2条9項4号は再販売価格拘束の条文であるから」というように、どこかで覚えた暗記ものとして答えた答案も多かったのですが、「同号の条文に即して」書かれた解答とは言えません。なぜ2条9項4号は再販売価格拘束の条文と言えるのかを問う問題です。
「「当該商品」となっているから同じ商品であることが必要」など、言葉が一つ足りない答案も多くありました。少し「しつこめ」に書くと、「「当該商品」となっているからこれは直前に現れる「商品」である「自己の供給する商品」を指し、したがって、「自己の供給する商品」と「当該商品」が同じ商品であることが必要」などとなります。もう少しアッサリ書く方法もあると思いますが(上記ポイント)、「「当該商品」となっているから同じ商品であることが必要」では少し抜けすぎという感があります(若干の減点)。
第3問
ポイント(解答例ではない)
2条9項3号の「その供給に要する費用を著しく下回る対価」は可変的性質を持つ費用を下回る対価を指す。
仕入価格は可変的性質を持つ費用である。
他にも可変的性質を持つ費用は存在する。
したがって、販売価格が仕入価格を下回るならば、必ず、販売価格は可変的性質を持つ費用を下回る。
メモ
上記のポイントの一つでも欠けると、しっかりした論理からピースが一つ落ちた感じの文章となります。
第4問
ポイント(解答例ではない)
意思の連絡(合意)について、11k99の4つの考慮要素を掲げて、該当する事実を拾う。
メモ
ほとんどの人はできていました。東芝ケミカル判決の枠組みに依拠するのでなく、最近の多数のカルテル事例やシャッター判決が示唆するように、上記のようにフラットに考慮要素を挙げた答案がほとんどでした。それが最近の事例の傾向ですから、それでよい。
第5問
ポイント(解答例ではない)
次のような要素を掲げて、該当する事実を拾う。
内発的牽制力
共通化割合
ライバル関係
カルテルを防ぐための情報遮断措置
他の供給者による牽制力
市場シェア
ライバル関係
協調的行動を起こしにくい状況
独自性、不定期小頻度大口
需要者による牽制力
価格に関する関心、交渉力
効率性(グリーン)
需要者にとって関心がなくとも考慮される(グリーンガイドライン)
メモ
これも基本的ですが、上記のように答案の構成をできることが本当に重要な基本なので、これができるようになることが経済法においては全ての出発点です。
需要者がグリーンに関心を持っていないことを、需要者からの牽制力の一要素とした答案があり、なるほどそういう見方もあるかと思いました。
商品に独自性があることを、差別化と読んで、反競争性が生じやすい要素としている答案がありました。なるほどそうかとも思いましたが、独自の内容であるから協調的行動をするための目印(ベンチマーク)はないが、需要者は当該独自の内容に関心を示していないから差別化はされていない、ということはあり得るように思いました。しかし、一つの見方として、採点においては好意的に受け止めました。