2019A 搾取
2019-10-17①、2019-10-24②
①(搾取の板書は無し)
8k187-202
概要
日本の優越的地位濫用規制の歴史・特徴
①のあとのリアクション
搾取規制を行うか否か
対消費者の搾取の規制
搾取については、違反要件には「地位」の要件と「濫用」の要件があると言えばそれで終わるところがあり、その詳細な議論は発展途上。したがって、普通の法律の講義のように違反要件やエンフォースメントを詳細に論ずるのでなく、規制の歴史的流れ、最近の話題をどう位置付けるか、に重点を置く。
概要
競争停止・他者排除には関係なく、甲が取引相手方(乙)に対して地位を利用して濫用する行為を規制
US
競争法の問題ではない
日本
EU
違反要件の概要
地位(優越的地位/支配的地位)
乙が甲と取引する必要がある(不利益な扱いを受け入れざるを得ない立場)
公取委界隈は、「優越的地位」(相対的優越)で足り「支配的地位」(絶対的優越)は必要ない、と強調するが、程度の問題はともかく質的には同じではないか
白石忠志「支配的地位と優越的地位」日本経済法学会年報35号(平成26年)
濫用(不利益行為)
2つの主な視点
あらかじめ計算できない不利益
過大な不利益
地位によって濫用が可能となったこと(「利用して」)
日本の優越的地位濫用規制の歴史・特徴
昭和28年改正(1953)
導入
昭和31年(1956)
特別法として下請法(下請代金支払遅延等防止法)制定 企業法務にとって重要
平成21年改正(2009)
課徴金導入(20条の6)
違反要件も2条9項5号として整理し法定
平成23年〜平成26年(2011-2014)
5件の課徴金納付命令
全て平成25年改正による審判制度廃止(平成27年4月施行)前
平成30年(2018)12月30日
平成31年/令和元年(2019)
ドイツ競争当局Facebookに命令8
まとめると
中小企業保護の色彩(政治からの期待が強い)
厳罰主義で課徴金導入
機能せず(非裁量性)
確約制度
世界流行への対応
①のあとのリアクション
講義の内容とは関係ないですが、手書きでも構いませんので、板書のページごとに番号を振っていただけると、復習の際に大変助かります。どうぞご検討よろしくお願い致します。
→ 対応しました。
抱き合わせについてですが、ジャパネットなど、通販で要らないもの(?)を付けてお値段そのまま、みたいなのは問題にならないのでしょうか。
835-845
搾取規制を行うか否か
US:競争法の問題ではない
EU:控えめではあるがUSのように規制ゼロでよいとは言わない
下記の最近の流行だけでなく、特に近年は事例が増えている
参考文献
日本(教室では省略)
独自路線
「優越的地位」であり「支配的地位」は必要ない(既出)
優越的地位濫用行為は
(a)「当該取引の相手方の自由かつ自主的な判断による取引を阻害するとともに、」
(b)「当該取引の相手方はその競争者との関係において競争上不利となる一方で、」
(c)「行為者はその競争者との関係において競争上有利となるおそれがあるものである。」
US等の外国企業への適用に消極的
EUの地位が向上し適用・議論が活発化する前に「通説」が形成されたので、「外国には説明できないもの」という内向きの思考回路が確立
非係争条項に関する諸事例
845-855
対消費者の搾取の規制
日本では(かつては)慮外
考えたうえで対象外としたというよりも
中小企業保護(政治の期待)しか頭になかった
上記(b)
乙が甲と取引できないと「事業経営上大きな支障を来す」
EUにはもともと対消費者の搾取を規制対象から除外する発想自体がない(加盟国はいろいろ)
GDPR制定を機にEUで一般的に注目
「exploitative」で検索
ドイツ競争当局が華々しい命令 (2019)
調査していることを命令の数年前から公表し注目されていた
上記の動きへの追随
対消費者搾取なら上記(b)の説明は無効化されるが上記(a)(c)で説明できる
無料取引なら課徴金はゼロ
企業による人材に対する優越的地位濫用
芸能事務所と芸能人、スポーツチームと選手、等
乙が労働法上の労働者である場合には公取委は引く構え
(個人情報等に関する動きとの整合性?)