他者排除行為(基本解説アウトライン)
2024-06
見取り図
https://stjp.sakura.ne.jp/_presen/keynote/IllegalConduct_withGuidelines.jpeg
今回の対象範囲
他者排除
2条5項「排除型私的独占」
弊害要件文言は「競争を実質的に制限する」(競争の実質的制限)
2条9項「不公正な取引方法」
弊害要件文言は「公正な競争を阻害するおそれがある」(公正競争阻害性)
明文では2条9項6号だけだが他の号でもこれが要件となると(公取委にも)解釈されている。
条文について
共通する基本的な考え方が大事
法定3類型のいずれでも大差ない。
私的独占と不公正な取引方法の区別を言っても大きな意味はない。
確約認定またはそれ未満が主流であり、課徴金の確率が低い(公取委が命令を選ぶ確率が低い)。
共通する基本的な考え方
行為要件
略奪廉売の「コスト割れ」だけは重要
弊害要件
市場(市場画定)
需要者からみて選択肢となる供給者の範囲
需要者はどのような者か、が重要
反競争性あり
「他者排除事案」かつ「公正競争阻害性」(不公正な取引方法)では、
「反競争性あり=排除効果あり」と解釈されている。
「排除効果」は「市場閉鎖効果」と呼ばれることもある(用語の乱立)
「市場閉鎖効果が生じる場合」とは,非価格制限行為により,新規参入者や既存の競争者にとって,代替的な取引先を容易に確保することができなくなり,事業活動に要する費用が引き上げられる,新規参入や新商品開発等の意欲が損なわれるといった,新規参入者や既存の競争者が排除される又はこれらの取引機会が減少するような状態をもたらすおそれが生じる場合をいう。
「他者排除事案」でも、「競争の実質的制限」(排除型私的独占)なら、価格等の競争変数が左右されることも必要
命令事件で排除型私的独占を選択する場合に限り、意味がある議論。
もし論ずるなら、競争停止(前回)や企業結合(7月)で出てくるような諸要素を見ることになる。
内発的牽制力
業務提携の場合の共通化割合など
他の供給者による牽制力
既存供給者からの
潜在的新規参入者からの
隣接市場からの
需要者による牽制力
正当化理由なし
正当化理由があるとされる条件
目的が正当
手段が正当
因果関係
寄与度
事例
ノーブランドガソリンスタンドに対抗する廉売で一時的コスト割れ
ノーブランドガソリンスタンドは仕入れ値が安い(「業転玉」)ので、コスト割れしていなかった
→ コスト割れ事業者の行為の、排除効果への寄与度に疑問
→ 排除措置命令でなく警告
他者排除
各種
略奪廉売系
取引拒絶系
抱き合わせ
一般指定14項(「取引妨害」)
略奪廉売系
違反要件
行為要件
コスト割れ
弊害要件
市場において
排除効果あり
正当化理由なし
因果関係
コスト割れ
行為者の価格 < 行為者の費用
費用が高く算出されるほど違反となりやすい
費用
「可変的性質を持つ費用」
広告・人件費も、その廉売のみに要したものは含む
販売期間中に費用が高騰してコスト割れとなることもある
取引拒絶系
違反要件
行為要件
弊害要件
市場において
排除効果あり
正当化理由なし
因果関係
取引拒絶に至らない差別も含む
因果関係ありで排除効果をもたらすようなものは全て
排除効果
他に代替的競争手段がない(乏しい)ことが最も重要
事例
インテル(平成17年)
有明海苔 熊本・佐賀 排除措置命令(令和6年5月15日) 抱き合わせ
主に2種類の観点
不要品強要型抱き合わせ規制
優越的地位濫用(次回)
他者排除型抱き合わせ規制
以下のもの
取引拒絶系と本質は同じ(左:取引拒絶、右:抱き合わせ)
https://stjp.sakura.ne.jp/_presen/keynote/RefusalToDeal_Tying.jpeg
→ 取引拒絶と同様に考えればよい
排除効果は、Aから単品で購入する需要者が十分に少なくなる(代替的競争手段がない)かどうかで判断
「技術的抱き合わせ」でも「契約的抱き合わせ」でも違反基準は同じなので区別の実益はない。
一般指定14項(「取引妨害」)
条文
14 自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引について、契約の成立の阻止、契約の不履行の誘引その他いかなる方法をもつてするかを問わず、その取引を不当に妨害すること。
不正手段型行為が主に想定されている
競争者のタクシーのドア前に座り込む等
真実に反する法的見解を競争者の取引先に告げる
競争者の取引先に「契約違反」と告げたが、裁判所の契約解釈に照らせば、契約違反ではなかった。
競争者の取引先に「特許権侵害」と告げたが、FRAND宣言をした標準必須特許だったので、行為後のサムスン対アップル知財高裁判決で固まった規範に照らすと特許権侵害でなかった。 不正手段型行為の場合、排除効果の立証がなくても、弊害要件を満たす。
排除効果必要型が一般指定14項に居候する型
略奪廉売系・取引拒絶系・抱き合わせなど、排除効果が必要となると解される行為類型が、一般指定14項に持ち込まれることがある。
諸種の類型の複合(合わせ技一本)の場合
よくわからない行為(当時)の場合
アフターマーケット事件
排除効果の立証に自信がない場合?
並行輸入阻害事件
最近も多用
「スマホソフトウェア競争促進法」
電気事業法や電気通信事業法と同じ考え方
送電網や市内回線網は、公益事業特権によって構築された独占であるから、という理屈付けで特別な規制がされていた(いる)が、
スマホ関係は、公益事業特権には関係がないので、参入障壁の大きさや競争制限の大きさを強調して、特別な規制を導入した。
他者排除行為や優越的地位濫用行為について、
事前の指定を根拠として、
弊害要件の立証を不要としたもの
それを、世界中で、「事前規制」(ex ante regulation など)と呼んでいる。
弊害要件の立証なく違反となるので、掲げられた行為をそもそもしなくなるだろう、
弊害要件の立証が必要で時間がかかる競争法(独禁法)の通常の違反類型(「事後規制」)よりはマシ、
ということを強調しようとした用語。
(独禁法は独禁法で、確約制度などに頼り、課徴金を命じない、という方法で、「独禁法の「事前規制」化」を試みている、というのがここ10年の流れ。)
(企業結合規制は、もともと、事前規制)
課徴金の規定が置かれているが、一部の違反行為のみ(7条、8条1号・2号)
確約制度もある
課徴金対象違反類型における正当化理由の明文
「サイバーセキュリティの確保等」
「サイバーセキュリティの確保」
「スマートフォンの利用者に係る情報の保護」
「スマートフォンの利用に係る青少年の保護」
「政令で定める目的」
判断が難しい事例 → ……