ゲームシナリオ入門
目次
1-1 ゲームシナリオライターとは何か
1-2 ゲームシナリオライターの現場見学
1-3 ゲームシナリオライターに向いている人
1-4 誰でもゲームシナリオライターになれる
2 作り始める前に知っておきたい事
2-1-2 ゲームを支える二つの機能
2-1-3 コンピュータゲーム特有の魅力
2-1-5 ゲームにおける「シナリオ」の機能と特殊性 2-1-6 「ゲームのためのシナリオ」とは
2-2-4 ゲームには3つのドラマがある
2-3 準備の質が作品の質
2-3-1 目的を具体化する事が準備の第一歩
2-3-2 準備の質を高めるコツ
2-4-1 アイデア作りの3工程「置く」「掘る」「つなぐ」
2-4-2 アイデア作りのサブウェポン
3 独自性のある舞台を作る
3-1 ゲームシナリオライターが作る設定
3-2 舞台設定に個性と魅力がある名作
3-2-1 舞台の設定に「物語」がある
3-2-2 舞台の設定に「特殊性」がある
3-2-3 舞台の設定に「際立ったシチュエーション」が採用されている
3-3 特殊ルールを使いこなす
3-3-1 特殊ルールの基本事項と分類
3-3-2 「特殊ルール」はドラマの生成装置
3-3-3 強いドラマを生む、劇場型の特殊ルール
3-4 舞台設定を作ってみよう
3-4-1 舞台設定の4つの起点
3-4-2 なにはともあれ、一手目を置く
3-4-3 舞台に由来する目的
4-1 よく動くキャラクターとは
4-1-1 よく動くキャラクターの理想形
4-1-2 欲求がキャラクターの原動力
4-1-3 「動機」で行動はより確かなものになる
4-2 各項目が持つ機能と設定のポイント
4-2-1 名前
4-2-2 容姿
4-2-3 機能
4-2-4 目的
4-2-5 性格
4-2-6 弱点
4-2-7 背景
4-2-8 好き、嫌い
4-2-9 特徴
4-2-10 職業
4-2-11 セリフ
4-3 キャラクターに魅力ある個性を付ける5つのヒント 4-3-1 極端
4-3-2 希少
4-3-3 未知
4-3-4 秘密
4-3-5 違和感
4-4 キャラクターを作ってみよう
4-4-1 書き込み用キャラクター設定表
4-4-2 キャラクター設定表サンプル
4-5 キャラクター作りの最終チェック
4-5-1 キャラクターの「機能」をチェック
4-5-2 キャラクターの「個性」をチェック
4-5-3 キャラクターの「動き」をチェック
4-5-4 キャラクターの「相関図」をチェック
5-1 プロット作りの基礎知識
5-1-1 プロットは地図で考える
5-1-2 プロットの原型を作る
5-1-3 中継点を作る
5-1-4 中継点は文脈で結ぶ
5-1-5 ゲームならではのプロット
5-2 「面白い」プロット作りのヒント
5-2-1 「感情移入」で土台を作る
5-2-2 「王道」を知る
5-2-4 「構成」で底上げする
5-2-5 「置き換え」でアイデアの種を見つける
5-2-6 「環境」の効果を利用する
5-2-7 「切り口」で独自性を出す
5-3 プロットを作ってみよう
5-3-1 主人公の設定からプロットの原型を作る
5-3-2 プロットの大枠で文脈を作る
5-3-3 4つの事件を具体化する
6-1 ゲームシナリオを書いてみよう
6-1-1 ゲームシナリオに共通する特徴
6-1-2 ゲームシナリオは指示文で演出する
6-1-3 ゲームシナリオの基礎実習
6-1-4 指示文の応用系
6-1-5 シナリオサンプル
6-2-1 キャラクター性を文字にする
6-2-2 「対称」で掛け合いの質を上げる
6-2-3 上手な情報の出し方
6-2-4 選択肢はプレイヤーのために
6-2-5 セリフづくりのヒント集
APPENDIX ゲームシナリオライターの裏側
Appendix-1 印象的なプロでの経験
Appendix-2 ゲームシナリオライターの収入
1 ゲームシナリオライターになろう
省略
2 作り始める前に知っておきたい事
2-1 ゲームとは何か
2-1-1 あらゆるゲームはシステムで出来ている
「ルール(システム)」「UI」「レベルデザイン」で構成されている
2-1-2 ゲームを支える二つの機能
「グラフィック」と「サウンド」
2-1-3 コンピュータゲーム特有の魅力
「変化」という特性が生み出す「体験」という醍醐味。
2-1-4 ゲームジャンル
略
2-1-5 ゲームにおける「シナリオ」の機能と特殊性
ゲームを遊ぶ意味
感情的な報酬
「やりたい」と「やってよかった」を演出する
シナリオはシステムの補助機能
システムの体験がダイレクトであるほど、シナリオの必要性が薄くなる
スポーツゲームなどでは、シナリオが無くても成立する
一方、RPGやADVではシナリオが無いと成立しない
2-1-6 「ゲームのためのシナリオ」とは
2-2 全てはドラマに集約される
2-2-1 ドラマとは「もたなけ」である
人と人が譲る事無く対立する事。争い、もつれ
心の中に相反する欲求が同時に起こり、そのどちらを選ぶか迷うこと
葛藤を分解すると「目的」「対立」「悩み」「決断」となる
略して「もたなけ」
2-2-2 ドラマは「共感」が命
理解無くして共感は無し
必要なのは「筋道」と「リアリティ」
2-2-3 「反感」というスパイス
ことドラマにおいては、反感は共感を引き上げるスパイスとなる
「もたなけ」の対立に反感を持ってくる
共感×反感(手強さ)=感情の動く量
2-2-4 ゲームには3つのドラマがある
キャラクターを通じて「体験」するドラマ
シナリオによって提供される体験
ゲームプレイを通じて「体験」するドラマ
ゲームを遊んで得られる体験
現実世界で「体験」するドラマ
友人や誰かとゲームを通じたコミュニケーションを取る体験
2-3 準備の質が作品の質
2-3-1 目的を具体化する事が準備の第一歩
準備の流れ
目的を設定する
必要な物を洗い出し、チェックリストを作る
揃えられない物があるなら目的を再設定する
→チェックリストが準備による成果物となる
チェックリストのフォーマット
目的(制作の指針)
どんなシナリオを作りたいか、具体的な言葉で
テーマ
個人的な目標
仕様(前提条件)
ステージ数やキャラ数などは、シナリオの外で決まる事が多い
事前に決めた上でシナリオを考える
「設定(世界観)」→「プロット」→「シナリオ」
スケジュール
クライアントの要望
目指している方向性、禁止事項
品質チェックの観点になるもの
javel.icon 雇われでシナリオを書く時の準備に感じる
2-3-2 準備の質を高めるコツ
とにかく具体的に書く
良い例
美味しい
苦みの強い
高級豆を使って
入れ方にこだわった
一杯のコーヒー
悪い例
ほどほどの
普通に
万人に愛される
ふわりとした口どけの
大量の
3 独自性のある舞台を作る
目的の明確化(例)
ゲームジャンルを決める
ゲームの長さを決める(イベント数、ステージ数)
ストーリージャンルを決める
目的を達成するために必要な物
舞台設定
キャラクター
プロット
テキスト
必要な物に「良い言葉」を足す
独自性のある舞台設定
よく動くキャラクター
結末を知りたくなるプロット
自然で読みやすいテキスト
舞台設定、キャラクター、プロット、どれから着手しても良い
3-1 ゲームシナリオライターが作る設定
世界設定:作品全体の背景となる世界の設定
舞台設定:シナリオが発生する場所の設定
table:世界設定の項目例
世界の成り立ち
世界地図
国家
歴史
文化・文明
宗教
価値観
法律
社会構造
職業
生態系
ファンタジーの度合い
異種族・神・悪魔の存在や立ち位置
魔法の有無
物理法則や主なエネルギー
バイオハザードを例に取ると、「世界」は地球で「舞台」が洋館
世界を渡り歩くRPGなら、イベントの発生する場所が「舞台」となる
舞台のテンプレート
table:舞台のテンプレート
世界(モデル)
ゲームジャンル
ストーリージャンル
舞台
主人公の目的
特殊ルール
以降の、3-2, 3-3は舞台設定のコツ、3-4は舞台設定の取り掛かり方を書いている
3-2 舞台設定に個性と魅力がある名作
3-2-1 舞台の設定に「物語」がある
舞台そのものが持つ物語性を意識する
例:消えゆく舞台。隕石の衝突などによる世界の破滅、寿命を迎える大木、掘りつくされた鉱山、解体が決まった建物
具体例
リンダキューブ
セプテントリオン
真・女神転生Ⅲ-NOCTURNE-
それっぽいもの
聖剣伝説3
例:舞台の歴史が物語になる。史実のif、膨大な設定の独自世界
具体例
タクティクスオウガ
太閤立志伝
アサシンクリード
それっぽいもの
Skyrim
サイバーパンク2077
3-2-2 舞台の設定に「特殊性」がある
世界や場所に、特別な意味や力、構造が設定されているパターン。世界の謎を解くような物語
具体例
ドラゴンクエストⅥ 幻の大地
上と下、2つの世界を行き来し、世界の秘密と本当の自分を探す物語
ゼルダの伝説 夢を見る島
ワンダと巨像
16体の巨像が住まう地、目的のため巨像を
ときめきメモリアル
「伝説の樹の下で女の子からの告白で結ばれたカップルは永遠に幸せになる」という伝説がある
エンドオブエタニティ
それっぽいもの
マトリックス(?)
モンスターハンター(?)
Gのレコンギスタ
3-2-3 舞台の設定に「際立ったシチュエーション」が採用されている
特殊な状況に陥っている舞台。シチュエーションを象徴する「存在」や「言葉」が設定されている
具体例
バイオハザード
極限脱出 9時間9人9の扉
ダンガンロンパ
ネットは居
SAW(映画)
それっぽいもの
オデッセイ(火星に取り残される)
リミット(棺桶に閉じ込められる)
3-3 特殊ルールを使いこなす
限定された条件下でのみ適用される「特殊ルール」
自分以外の参加者を全員殺さないと建物から出られない
出口に着くまで決して振り返ってはいけない
パズルを解かないと宝物が手に入らない
特殊ルールを使いこなせれば、独自性のある舞台設定を作りこなせる。のだそう
3-3-1 特殊ルールの基本事項と分類
table:例
ツルの恩返し 私が機を織るあいだ、決して部屋を覗いてはいけません
リング(小説) 貞子の怨念が込もった「呪いのビデオ」を見た者は一週間後に死ぬ
バトル・ロワイヤル 今からクラスの皆さんに殺し合いをしてもらいます。生き残れるのは一人だけです
スピード(映画) バスに爆弾が仕掛けられた。バスの時速が80km/h以下になると
アルマゲドン(映画) 18日後、小惑星が落ちて地球は壊滅的な被害を受ける
特殊ルールの基本事項(一つでも当てはまれば良い)
空間・対象の限定
時間制限
行動の禁止・強制
特殊ルールには、キャラクターが生み出している物と、環境が生み出している物が見受けられる。
複合型もある
3-3-2 「特殊ルール」はドラマの生成装置
特殊ルールは、設定すると自動的に明確が目的が成立する。
目的が明確になる事で、それを阻む対立も見えてくる
3-3-3 強いドラマを生む、劇場型の特殊ルール
特殊ルールには、その条件を破る事で賞罰がある方がドラマが強くなる法則
ドラマが足りないと感じたら特殊ルールを導入してみる
ドラマが弱いと感じたら、賞罰を設定して「劇場型の特殊ルール」にする
劇場型特殊ルールの基本事項
空間の限定
時間制限
行動の禁止・強制
強制力のある賞罰
3-4 舞台設定を作ってみよう
3-4-1 舞台設定の4つの起点
舞台起点、物語起点、キャラクター起点、企画起点
舞台起点
舞台のアイデアをとっかかりにして、特殊ルールを埋め込む
または、舞台そのものに物語や謎があるパターン
物語起点
あらすじ、シーン、結末のアイデアが最初にある。
物語の必要に応じて必然的に舞台が決まっていく
ストーリージャンルから連想していく事で舞台を決めていくことが出来る
キャラクター起点
キャラクターを思いついたら、キャラクターの設定を詰めていく過程で舞台が見えてくるパターン
企画起点
先に特殊ルールを思いつくパターン
特殊ルールからの連想や、ルールを活かす発想で舞台を考える
3-4-2 なにはともあれ、一手目を置く
0から1を作るのが一番難しいので、ここは気負わずに、ぱっと目に付いた物で1手目を置くのがコツ、なのだそう
3-4-3 舞台に由来する目的
極限状態により、主人公が○○をせざるを得ない。ストーリージャンルが恋愛モノなので、主人公は恋の成就が目的となるなど、舞台の設定により自動的に目的が決まる事もままあるので、舞台設定表には目的の項目を設ける
table:舞台設定のフォーマット
モデル世界 参考にする世界、ベンチマークなど
ゲームジャンル ゲームのジャンル
ストーリージャンル 物語のジャンル
舞台 舞台の概要、説明
目的 この舞台における物語の目的
特殊ルール この舞台の個性、特殊ルール
コラム:異世界の作り方
table:必須の項目
地図
ルール
環境
地図
「なにがあるか」を見える化する
なにとは、国、町、山、森、川、洞窟、遺跡などの「舞台」となる場所
世界地図エディタの紹介
ルール
独自の「一般ルール」を設ける
魔法が存在する、モンスターが存在する・・・美徳の価値観が反転している、星の生命力が電力のように使われている
具体的にした方が良いのでしょうね
環境
この異世界が「今」どうなっているのか
魔王に支配されている、戦争が起きている。
「状況」ではなく「環境」?
短期的に移り変わるものを「状況」広範囲に、確固たる状態として周囲を取り巻いているものを「環境」
これもそれぞれ、具体的に沢山設定してゆく方が良い。目安としては物語の目的が見えた所を区切りとする。
RPGのように、世界規模の設定が必要になる場合は、大陸に国を配置し、各国の相互関係を作るのが基本の「環境」
これに加えて、世界規模の天災があるとか、第三勢力(魔王軍)が存在するとか、付け足していくと、物語の目的が見えてくる場合がある。
「環境」は物語の前提となる背景、ドラマの強度、方向性、トーンを決める最重要項目。なるべく端的で特徴的な設定を置くのが良い
4 よく動くキャラクターを作る
キャラクターは、いくつかの例外を除いて、ゲームシナリオ作りにおいてもっとも注力すべき要素
シナリオがあってもプレイヤーが機械だったり、一部のミステリー(トリックが主役)が例外
table:キャラクター設定表
官能 物語 助 概要
名前 / 性別 / 年齢 〇 イメージを付ける。見分けを付ける。引き付ける。
体格 〇 イメージを付ける。見分けを付ける。引き付ける。
容姿 〇 イメージを付ける、見分けを付ける、引き付ける
機能 / 職業 〇 物語上の立ち位置
目的 / 欲求 / 動機 〇 どのように行動するのかを規定する。コア要素。
性格 〇 行動の現れ方を規定する
弱点 〇 〇 〇 キャラクターの魅力を引き上げる補助的な項目
背景 〇 キャラクターの設定を取りまとめる項目
好き / 嫌い 〇 キャラクターやシナリオのアクセントとして使われる
特徴 〇 〇 このキャラクターの代名詞ともいえる特徴を設定する
セリフ 〇 キャラクター性を受け手に伝える役目を担う
自由枠 〇 メモ用。思いついたネタ、エピソード、ほかのキャラとの関係
本章では「主人公」「敵対者」「相棒」「援助者」の4人を作成する
この4人(4つの機能)は、どんなストーリージャンルにも適用されるキャラクターの基本構成。
「もたなけ」がこの4人と対応関係を持つ
table:もたなけ
目的 主人公
対立 敵対者
悩み 相棒(援助者)
決断 援助者(相棒)
主人公と敵対者がドラマを作り、相棒と援助者がドラマを豊かにする
4-1 よく動くキャラクターとは
よく動くキャラクターとは、何かしらのシチュエーションに入れた時、次の行動を容易に想像できるキャラクター
「行動の選択肢が少ない」とも表現されている
4-1-1 よく動くキャラクターの理想形
所謂「キャラクターが勝手に動き出した」状態が理想
4-1-2 欲求がキャラクターの原動力
「どう行動するか」の前に「なぜ行動するか=欲求(○○したい)」がある
4-1-3 「動機」で行動はより確かなものになる
欲求にきちんとした「動機(○○から)」を設定すると、行動はより限定的になる。
欲求には動機がセットで付いてくるが、1:1の関係ではなく、一つの欲求に複数の動機が紐づく
table:例
欲求 動機
眠りたい 本能だから
寝不足だから
嫌な事を忘れたいから
モテたい 恋人が欲しいから
ちやほやされたいから
Hなことがしたいから
欲求に紐づいた動機がいずれであるかによって、行動に対する力強さが変わってくる。
「小腹が空いたから何か食べたい」と「三日間、飲まず食わずだったので何か食べたい」では、食べる行動に対する必死さが変わってくる
4-2 各項目が持つ機能と設定のポイント
4-2-1 名前
直感と覚えやすさを軸に取る
table:覚えやすい命名のポイント
名で体を表す
直感を大切にする
七つの命名要素のどれかを満たす
なるべく短くする
table:七つの命名要素
名詞(固有・一般)が入った名前 富士山一郎、倉井太陽
動詞を取り入れた名前 王泥喜法介(おどろきほうすけ、あびる優
意味が感じられる名前 月野うさぎ、只野仁人(ただのひとひと)
有名人をもじった名前 アントキの猪木、織田信奈
語感がいい名前 キリト、凛、シャルル、ガッチャマン
印象深いニックネーム あぶさん、ジョジョ、ブタゴリラ
意外性のある名前 黄熊(ぷぅ)、式野騎士(しきのきし)
4-2-2 容姿
イメージを付ける
キャラクターの性格を外見に反映させる
特に表情に強く現れる。そのキャラクターの内面が現れやすいような表情を設定すると良い
見分けを付ける
キャラクターを象徴する要素を作ると良い
肉体的な要素、身に着けている小物、持っている武器・・・
引き付ける
かわいい、かっこいい、醜い、怖いなど、このキャラクターを見てどう感じてほしいの感を考える。
4-2-3 機能
物語におけるキャラクターの働き所を決める項目
機能の例
ウラジミール・プロップの7つの機能
敵対者、贈与者、助手、王女、派遣者、主人公、ニセ主人公
クリストファー・ボグラーの8つの原型
主人公、影、賢者、支社、戸口の番人、変身する者、トリックスター、仲間
本書籍では上記を参考に4つに絞り込む
「主人公」「敵対者」「相棒」「援助者」
主人公
力強い目的を持って物語を前進させる役目
感情移入出来るようなキャラクターが良い
尖った特徴を持たせるよりも、最大公約数的に多くの人が共感できるように
一方で、魔女と百騎兵のように共感できない主人公を置く作品もある。この場合、主人公に「成長する」「同上出来る背景がある」「痛い目を見る」要素を備えていた。
敵対者
目的達成を阻む存在(恋愛ゲームでは攻略対象となる)。主人公に葛藤を与える役目
「手強さ」と「対立軸」がポイント
強い反感に繋がる要素を設定して「憎く、強く」する
table:手強さの軸
物理的な強さ
知能的な強さ
価値的な(権威的な)強さ
精神的な強さ
table:対立軸のパターン
環境に害をなす 「壊したい」vs「守りたい」
特定の人間にのみ害をなす 「気づ付けたい」vs「逃れたい(守りたい)」
主人公と利害が相反する 「勝ちたい」vs「勝ちたい」
価値観の相違 「解って欲しい」vs「理解できない」
相棒
主人公の「行動」と「魅力」を引き出す役目
プロップの機能では助手、ボグラーの原型では仲間に該当する
主人公の魅力と真逆の要素を設定するのがポイント
主人公が強いなら、弱い相棒
主人公が魔法使いなら、魔法を使えない相棒
主人公がバカなら、賢い相棒
主人公が気弱なら、強きな相棒
主人公が堅物なら、奔放な相棒
主人公が無口なら、おしゃべりな相棒
主人公が教師なら、相棒が生徒
主人公がアイドルなら、相棒がファン
主人公が田舎育ちなら、相棒が都会育ち
援助者
主人公が困難を突破する切っ掛けを与える役割
また、主人公の旅立ちの切っ掛けを与えるのも含める
プロップの機能では派遣者、王女、贈与者、支援者。ボグラーの原型では使者、賢者に該当する
table:主人公との関係例
居場所固定 主に道具、魔法をもたらす
別行動 主に情報をもたらす
常に同行 主に力をもたらす
同行するが途中退場 主に成長をもたらす
どんな能力があり、その能力をどのようにして手に入れ、なぜ主人公を援助するのか。を考えると良い
4-2-4 目的
よく動くキャラクター(シチュエーションに対する可能性が少ない)を作るためのコアになる部分
とくに、「容姿」「職業」「背景」「特徴」の設定を「目的」に集約させると良い
2手目、3手目辺りで目的を考え、他の項目は目的を軸に設定していくと良い
「目的」「欲求」「動機」は密接にする事で一貫性が産まれる
「欲求」の延長線上に「目的」があり、「動機」が「欲求」を下支えする
https://gyazo.com/ef226d86d031e6ea912f924e42f1785f
4-2-5 性格
行動の現れ方を規定する
性格の類型資料いろいろ
カール・グスタフ・ユング
エニアグラム
テオプラストス
MBTI
ソシオニクス
具体的なキャラクターの行動を想像してみる
何かしらのシチュエーションに入れて、どのように行動するのかを書き下す
性格は動きとセットで考える
4-2-6 弱点
キャラクターの魅力を補強する、ともすれば弱点を突かれる事でドラマを生む源泉ともなる項目
table:弱点の類型
制限 顔が濡れると力が出ない
恐怖 ネズミが怖い
秘密 正体がバレると地球に居られなくなる
肉体 盲目の凄腕剣士
精神 頭部への死球がトラウマになっている野球選手
保護 君主の遺児を守る浪人
弱点設定の3要素
一度聞いただけで覚えられる
すぐ理解できる
弱点を突かれた際の効果(リアクション)が大きい
「保護」の特殊性
本質的にはキャラクター自身の弱点ではない(弱点を別のキャラクタへ移譲している)
キャラクター自身は完全無欠で居られる
4-2-7 背景
キャラクターの設定を下支え、取りまとめる項目
各項目に影響を与えた過去。このキャラクターの人生を考える
目的がキャラクターの向かいたい未来を表しているとすれば、背景はキャラクターの辿ってきた過去を表す
キャラクターの設定を眺めて、共通しているキーワードを見つけ、そこから膨らませると良い
各項目に対して「なぜ?」と問いかける。
逆に、背景から作り始める場合、背景に含まれるキーワードを使って各項目を設定していくと良い
4-2-8 好き、嫌い
キャラクターやシナリオのアクセントとして使われる項目
キャラクターへのアクセント:このキャラクターの個性付けを強化する
シナリオへのアクセント:シーンに動きを与える
キャラクターの動きや感情の変化に影響を与えるような項目を設定するのが良い
また、「漠然は悪」位の意識を持つ
4-2-9 特徴
このキャラクターの代名詞ともいえる特徴を設定する
「顔が3つで手が3対」のように、最大の特徴が他の項目(この場合容姿)になる場合もある
特徴は基本的に、1つのキャラクターにつき1つ設定する。
複数の特徴を思いついた場合は、複数のキャラクターに分散する(サイボーグ007など)
どうしても一人のキャラクターに複数の特徴を設けたい場合は、話の中で獲得するようにする(ドラゴンボール)
これも漠然は悪、特徴の設定は一つのエピソードのように具体的に書く
javel.icon最近は個性を二つ付けて、ギャップを出すキャラ造形が流行ってる気がする。100カノとか
4-2-10 職業
複数の効果が期待出来る項目
キャラクターの日常が想像できる
キャラクターが持っている知識や技術がわかる
社会的な関係性がドラマ作りに役立つ
職業を設定する時は、その職業についてのリサーチも行う
その職業になるにはどうすれば良いのか
その職業の日常はどのようであるか
その職業の知識や技術、経験はどんなものであるか
その職業の専門用語にはどんなものがあるのか
その職業の一般的な形が見えれば、型を外した例外的なキャラクターにする事も出来る
4-2-11 セリフ
キャラクター性を受け手に伝える役目を担う
とは言え、具体的にシナリオを書いてみないと出てこないので、以下の質問への回答を書いてみる
「自己紹介をお願いします」
一人称と語尾、他人に対する口調、平時のテンションを表現する
「あなたの嫌いなものはなんですか? その理由は?」
キャラクターの内面を明らかにする。
「口癖や決め台詞を教えてください」
口癖や代名詞となる台詞があると、シーンの締めやクライマックスを盛り上げるのに役立つ
また、キャラクターの性格や考え方を探る事も。堂々と答える、答えるのを拒否する、悩む、照れるなどのリアクションでキャラクター性を表現する
「なんでもいいので、一言お願いします」
自由になんでも。「年齢」「職業」「性格」「背景」から考える
年齢
(何を言うのか)年の纏う空気、世代(大きな物語)毎の価値観
職業
(何を言うのか)専門用語、若者言葉。職業倫理に従った価値観
性格
(どう言うのか)性格と口調の一致、明るいキャラには明るい台詞。キャラクターの書き分け
背景
(どう言うのか)どのように育ってきたのかを感じさせる台詞。お嬢様言葉や方言、敬語
4-3 キャラクターに魅力ある個性を付ける5つのヒント
際立った特徴を持たせる
好奇心を刺激する要素
未来を期待させる要素
好奇心を刺激して興味を引き付け、未来を期待させることで継続的な関心につなげ、感情を動かすドラマで満足感を与える
これらの個性は互いに補完関係にあるため、一つ設定すると自然と他の要素をも持つようになる
4-3-1 極端
設定のどこかに極端さを取り入れる事で好奇心を刺激する
優劣(スキル、物事、性格)、長さ、重さ、大きさ、感覚、拘り、知識
4-3-2 希少
好奇心を刺激し、未来を期待させる好例
「(環境)に一人だけの(個性や能力)」
男子校に通う一人だけの女生徒
主人公、ヒロイン、悪役(ライバル)に向く
4-3-3 未知
受け手が知らない物、作品の登場人物が知らない物で好奇心を刺激する
そもそも知らない物を知りたいと思うのは人間の本能である
table:未知のパターン
正体不明 お化け、殺人鬼、犯人、エクストリーム帰宅部の部長
異邦人 転校生、旅人、貴種流離譚
怪獣 ゴジラ、人食いサメ、巨人
ニッチな職業 紋章官、謝り男、奢られ屋
異邦人に関しては、受け入れる舞台の状況はセットで考えると良い
平和なクラスに転校してきたヤンキー
スラム街で暮らすことになった聖女
彼らが登場する事で、大なり小なりその場の舞台に変化を起こす事で、未来への期待をかき立てる
(好奇心への刺激と、未来への期待を両立できる)
ポイントとしては、初登場シーンで「知りたい」気持ちを掻き立てる描写を意識すると良い
ブラインドスポット タトゥーの女 を例にする
主人公は全身に謎のタトゥーを刻まれた記憶喪失の女性
タイムズスクエアの路上に置かれたボストンバッグから、全裸で出てくる(!)
4-3-4 秘密
「(秘密が)バレるか、バレないか」が、未来への期待を掻き立てる
秘密の類型
変身ヒーロー、ヒロイン
人に化ける獣、人を化かす妖怪
犯罪歴、偽名、経歴詐称
美容整形
マニアックなフェチズムや癖
ポイントとしては、バレた時の影響を大きくする(地位や感情が大きく揺さぶられる)事で、スリリングで魅力的な秘密になる
「バレたら不味い」を意識する
4-3-5 違和感
容姿に宿る個性。好奇心を刺激する要素。
例えば・・・
猫耳
目が3つ
角が生えている
腕に銃が仕込まれている
ギャング風の服装をした幼子
スナイパーライフルを持った女子高生
強面の大男なのにかん高い声
深窓の令嬢に見えるのにヤンキー口調
ポイントとしては、象徴と落差を意識する
(象徴)背景や内面と親和性の高い個性にする。
(落差)キャラクターの外見と内面にギャップを設ける。
4-4 キャラクターを作ってみよう
省略
4-5 キャラクター作りの最終チェック
4-5-1 キャラクターの「機能」をチェック
全ての項目を満たしていると良い
主人公
感情移入できる要素が設定されている
確かな動機、力強い欲求の延長線上に目的がある
弱点がある(完全無欠な主人公ではない)
敵対者
絶対的な強さが設定されている
主人公との対立軸が明確(葛藤を与える存在)になっている
プレイヤーを「その気」にさせる
相棒
主人公の行動を引き出す設定になっている
主人公の魅力を引き出す設定になっている
主人公と真逆の要素を備えている
援助者
使いどころがイメージできている
主人公に与えるものがイメージ出来ている
主人公に与える試練がイメージできている
4-5-2 キャラクターの「個性」をチェック
他のキャラクターやその世界のモブの中で異なっている事(白いそうめんの束中でピンクの1本)
一つ以上の要素について突出していると良い
特技・能力
性格・欲求・思想
容姿・肉体(異種族や妖怪、モンスターも肉体に含む)
謎・秘密
持ち物・装備(ペットや使い魔などの生物を含む)
4-5-3 キャラクターの「動き」をチェック
キャラクターがよく動くかを確認する。
以下のシチュエーションにおいて、どのように動くか想像できるかどうかを確認する
宝くじで1等5億円が当たりました。さて、どうしますか?
旅行先のホテルで、夜な夜な不気味な声と共に壁をノックする音が聞こえてきます。さて、どうしますか?
お金をおろしに行った銀行で、銀行強盗に遭遇しました。受付の行員が人質に取られています。さて、どうしますか?
無人島に、あなたが作った4人のキャラクターが同時に流れ着きました。所持品は、普段から身に着けている衣服や道具のみです。それぞれのキャラクターはどのように動きますか?
あなたが作った舞台を使ってシチュエーションを一つ考えてください。(4人とも同じシチュエーションであること)
主人公は4つ以上、敵対者は3つ以上、相棒、援助者は2つ以上のシチュエーションで、動きを想像できれば良い
「動きを想像する」とは
「このキャラクターなら確実にこう動く」という確信を持つこと
「このキャラクターならこう動くと思われる」がいくつかと「このキャラクターは確実にこうは動かない」が考えられること
4-5-4 キャラクターの「相関図」をチェック
全ての(4役割の)キャラクター同士が双方に何かしら思いや関係を持っていること
家族、恋人、友人といった関係であれば、内心どう考えているのかを設定すると良い
可能であれば複数のキャラクターと双方向に関係を持つとドラマが重層化(?)して良い
コラム:インスタントなキャラクター作り
大ソシャゲ時代によって、キャラクターを大量生産する必要に迫られたが、台詞を無から考える事に限界があり、キャラクターフォーマットの簡易版を開発した。
「台詞」←「目的」←「欲求」の関係を用いて台詞を導出するアプローチ
また、キャラクター毎に独自性を出すための「背景」を盛り込んだ
簡易キャラクター設定フォーマット
名前 / 性別 / 年齢
性格
目的
背景
際立った個性
5 結末を知りたくなるプロットを作る
5-1 プロット作りの基礎知識
プロットとは物語の「筋」や「構成」を表す言葉
5-1-1 プロットは地図で考える
「スタート地点」ー「みちのり」ー「目的地」
5-1-2 プロットの原型を作る
「つかみ」ー「結末」
つかみ(スタート地点)
主人公と舞台の紹介、目的の提示、旅立ちのきっかけが描かれる
結末(目的地)
主人公の行動の結果が明らかになる。
table:例
桃から生まれた男の子が鬼退治の旅に出て → 鬼ヶ島で鬼を退治する
主人公が何を求めて行動し、どのような困難を乗り越えて目的を達成するか
目的が達成されるかどうかを言い切りの形で書く
つかみと結末を決める事で、物語は輪郭を持ち始める。これが物語づくりの初手であり、プロットの基礎の基礎
5-1-3 中継点を作る
プロットとは、「誰が、何処で、何をして、どうなるのか」を簡潔にまとめた、物語の完成予定図
このうちの「何をして」が中継点
中継点の役割は、主人公に困難を与える「事件」を起こす事。
事件に求められる機能
物語を前進させる
主人公に葛藤を与える(もたなけで記述できる)
キャラクターの本性を明らかにする
中継点は、物語の長さに応じて増減する
5-1-4 中継点は文脈で結ぶ
中継点とは、始まりから結末に向けて、バケツリレーのように物語を進めていく。
このバケツに入っている物はなんであるか? それが文脈
文脈とは、物語の流れの中にある因果関係、原因と結果の間に横たわる意味的な繋がりを指す
傘を持って出なかったから、雨に濡れた
財布を忘れたから、買い物が出来なかった
テスト勉強をしなかったから、散々な点を取ってしまった
わらしべ長者が好例となる
https://gyazo.com/b04f90811810deb39071bfcff00f3fde
5-1-5 ゲームならではのプロット
table: ゲームならではのプロット例
一本道タイプ 選択肢の無い物語
分岐合流タイプ ところどころ選択肢はあるが、最終的には同じあらすじになるタイプ
マルチストーリータイプ 選択肢によってあらすじが変わってくるが、結末は同じタイプ
マルチエンディングタイプ 選択肢によって結末が変わるタイプ
フリーシナリオタイプ どの中継点を踏むのかすら選択肢になるタイプ。文脈を通すのが難しい
5-2 「面白い」プロット作りのヒント
感情を刺激するもの
興味をそそる、興味深い
こっけいだ。おかしい
(多く、打消しの語を伴う)心にかなう。好ましい。望ましい
景色などが明るく広々とした感じで、気分がはればれとするようだ。明るく目が覚めるようだ。
心を惹かれる。趣が深い。風流だ。
一風変わっている。普通と違って珍しい
5-2-1 「感情移入」で土台を作る
感情移入の強さと、感情の刺激の大小には相関があると考えられている。
感情移入は、「面白い」と思ってもらえる土台となる
感情移入させる例
SAVE THE CATの法則
主人公が登場人物に好感を持っているシーン
5-2-2 「王道」を知る
王道とは期待に応える事
予想が出来て、予想通りになるのが「ベタ」
型が出来ていて、型の通りに展開するのが「お約束」
予想に願望が加わり、期待に応えるのが「王道」
期待を産む条件
受け手がキャラクターに感情移入している
受け手がキャラクターの目的に共感している
受け手が物語の展開を理解している
5-2-3 「テーマ」で深く切り込む
テーマとは主題。この物語が、何について語っているのかを一言に凝縮したもの
作り手の思いが凝縮したテーマ――届けたい感情、問いたい価値改、伝えたい情報――は、物語の核になる
5-2-4 「構成」で底上げする
起承転結、三幕構成、序破急、世にある有名な構成を通して見ると、「つかみ」「発展」「危機」「結末」の4パートで構成されている。これら4つのパートによる構成は、プロットづくりの土台となる
つかみ
舞台を紹介する
主人公に感情移入させる
きっかけとなる事件を起こす
プロットポイント1
主人公に確かな目的を与え、背中を押す
発展
物語の輪郭をはっきりさせる
これが何の話なのかを理解してもらう
目的を達成する意欲を高める
パートの最後にミッドポイントを入れる
所謂どんでん返し
「つかみ」での主人公は、暗中模索で目的を探している状態。「発展」でその輪郭が現れ、闇夜の中に目が慣れてきた所に、カメラのフラッシュのようにミッドポイントを置くことで、主人公は自分の置かれている状況を正確に知る事になる
ミッドポイントでは、主人公を取り巻く状況を一変させ、真の目的を明らかにするのが目的となる
危機
主人公の感情を大きく揺さぶる事件を起こす
プロットポイント2
「結末」で主人公の感情を頂点に押しあげるため、「危機」のパートを通して最大の障害を設定する
結末
主人公を変化させる
「危機」で突き落とされた主人公が、この障害に打ち勝つために変化する
葛藤を乗り越え、精神的に成長し、最後の戦いに望む決意をする
なぜ主人公は行動を起こしたのか(つかみ)
なぜ目的を達成する意欲が掻き立てられたのか(発展)
なぜ多くの困難を乗り越えてこられたのか(危機)
もしプロットを振り返っても葛藤を乗り越えるきっかけが見つからなければ、一度立ち止まって事件やエピソードを練り直した方が良い
最後の戦いに感情の頂点を持ってくる
主人公に感情移入させられているか?
主人公が目的を達成する意欲が十分に強いか?
ここに至るまでに、最後の障害の手強さが描かれているか?
必然性のある結末を作る
5-2-5 「置き換え」でアイデアの種を見つける
既存の物語の内容を抽象化して、具象を置き換える
浦島太郎を例に取ると・・・
code:浦島太郎
1.浦島太郎がいじめられている亀を助ける
2.助けたお礼に竜宮城へ案内される
3.この世のものとは思えない美しさの竜宮城で、乙女たちに歓待され夢見心地に浸る
4.竜宮城からの帰り際、けして開けてはいけないと念を押され、乙姫から玉手箱を受け取る
5.地上へ帰ると、気が遠くなるような年月が経過している
6.玉手箱をあけると煙が出てきて、浦島太郎は老人になる
code:抽象化の例
1.主人公が(*1)をきっかけに(*2)に出会う
2.(*2)に案内されて、驚きに満ちた異世界に行く
3.驚きに満ちた異世界で、主人公は特別な扱いを受ける
4.主人公は驚きに満ちた異世界で(*3)を手に入れて元の世界へ帰る
5.元の世界には(*4)という変化が起きている
6.(*3)を使う事で、主人公の身に(*5)が起きる
code:利用の例
1.スーパーで買った卵に不思議な模様を持つ物が混じっていたので、ふ化させてみようと温めたら、小さな竜が産まれた
2.主人公は小さな竜に連れられて、竜が生態系の頂点を支配する異世界に行く。
3.主人公は異世界において特別な扱いを受ける。竜の王様の命を永らえさせるための生贄だった!
4....
5-2-6 「環境」の効果を利用する
物語に動きが無い時、環境(周囲の状態)を意識すると良い
情感や特別感など、さまざまな演出効果を発揮する
環境そのものが「もたなけ」の対立になり得る
シーンに動きを付けるのに使える
5-2-7 「切り口」で独自性を出す
「面白い」の中には、独自性(オリジナリティ)という要素が含まれる。
ありふれた世界でも、切り口を変える事で独自性を出すことが出来る。
視点者
職業
コンセプト
強い興味
5-3 プロットを作ってみよう
5-3-1 主人公の設定からプロットの原型を作る
「プロットの原型」という概念がある
つかみ(誰が、どんな目的で行動を初めて)→結末(どうなるのか)
これを作っておくことで、プロットの崩壊を防げるかもしれない
https://gyazo.com/248249454d1c1efa35960a169df5d300
主人公などのキャラクター設定を参照しながら検討する
主人公が目的を達成するために、どんな行動をするのか
主人公とその他のキャラクターとの間に生まれる葛藤(ドラマ)
物語の結末で起こる、主人公とその周囲の「変化」
それぞれの問いに2~3個ずつアイデアが出るようであれば、そのプロットの原型には芽があると言える
――それでも思いつかない場合は?――
思いつかない場合は、主人公の設定を見直して見ると良い。だいたいは今の設定の解像度が足りていないので、そこに「なぜ?」と問いかけて解像度を引き上げていく必要がある
table:良くない例と対処
良くない例 問いかけ
今の自分を変える なぜ変わりたいのか?
お金持ちになる なぜお金持ちになりたいのか?
よりよい人生を手に入れる なぜよりよい人生を手に入れたいのか?
どこか遠くへ行く なぜ遠くへ行きたいのか?
強くなる なぜ強くなりたいのか?
それでもしっくり来ないのであれば、劇場型の特殊ルールを設定するのも良い。「ルールを破れば死ぬ」のであれば、おのずと「ルールを守る」か「ルールを破る」かの目的が産まれる。その欲求は「生き延びるため」ともなる。
5-3-2 プロットの大枠で文脈を作る
プロットの原型が出来たら、次は事件(エピソード)を作っていく。
この時、事件を細かく作り込む前に、「プロットの大枠」を作っておくと、後の作業がスムーズになる
プロットの大枠とは?
各パートの事件を1行ほどでまとめる
ここで言う各パートとは「つかみ、発展、危機、結末」の事
この段階では、前後のつじつまや事件の終わらせ方はあまり考えなくて良い
それぞれの事件に、因果関係を持たせる
各事件をそれぞれ「原因」と「結果」に分解する。前段の事件の結果が、後段の事件の原因(発端)となるように組み立てる。
この因果関係が、事件を繋ぐ「文脈」になる
例:
table:各パートの事件
つかみ 妹にリンゴを食べさせようと家の中を探し回る
発展 町で凶暴な犬に追いかけられる
危機 見知らぬ町で迷子になる
結末 さまよい歩くうちにリンゴの木を見つける
table:因果関係を持たせる
つかみ 病気の妹にりんごを食べさせたいから 家の中を探し回ったが、見つからなかった
発展 家の中でリンゴが見つからなくて買いに出かけたら 町で凶暴な犬に出くわし、追いかけられた
危機 犬に追いかけられて逃げ回ったから 見知らぬ町まで来てしまい、迷子になった
結末 迷子でさまよい歩くうちにリンゴの木を見つけたから リンゴをもいで持ち帰り、妹に食べさせた
積み上げ型とパズル型
一般に想像されるような、つかみから始めて、発展、危機、結末の事件を順番に考えていく方法を便宜上「積み上げ型」と呼ぶ
それに対して、上記のような各パートの事件を並べた後で因果関係を作り込む方法を「パズル型」と呼ぶことにする
パズル型の考え方は、ゲームシナリオにありがちなマルチ性を生み出すのに強みが出やすいのでおすすめかも
各パートにおける事件を設定した段階で、因果関係が成立している場合は積み上げ型、そうでなければパズル型と判断しても良い
具体的な進め方
大枠のイメージが出来たら、「つかみ」「発展」「危機」「結末」の各事件を考える。
各パート毎に複数の事件を考えておくと詰まった時に逃げ手を打てる
完全にランダムで考える訳でもなく、前述した「構成」を意識して事件を設定すると良い
各事件の内容を見て、プロットの原型と同じくアイデアが広がるかどうかを基準にする
ドラマ
セリフ
アクションなど
それぞれ2~3個ずつ出てくるようであれば、先へ進めて良いかもしれない
事件をまとめたら、各事件を「○○だから(原因」→「▲▲になった(結果)」という形式で分解していく
この時、「結果」が次の事件の「原因」となるように作る
例:
table:事件の設定
つかみ 宝の地図を手に入れて冒険に出る
発展 謎の組織に追われる
危機 天変地異が起こる
結末 命と引き換えに世界を救う
table:事件の因果関係
つかみ 宝の地図を手に入れて、冒険に出たから 古代の秘宝と呼ばれる宝物を手に入れた
発展 古代の秘宝を手に入れたから 謎の組織に追われ、古代の秘宝を奪われた
危機 古代の秘宝を奪われたから 謎の組織が秘宝を使って天変地異を起こした
結末 天変地異が起こったから 命と引き換えに秘宝を封印して世界を救った
この場合、「古代の秘宝」というアイデアが出てきた事で、秘宝を巡る攻防戦という中心軸が産まれた。
プロットの大枠を作る事で、事件を入れ替える事が可能になる
プロットの大枠は、事件を時系列に並べたものになるので、つかみが弱くなりがち
そこで、引きの強いクライマックスから物語を初めてつかみの強さを補うやり方がある
ドラクエ6のプロローグが好例となる
5-3-3 4つの事件を具体化する
各パートの事件を具体化する
具体化にあたって以下のフォーマットを利用できる
table:事件の具体化のフォーマット
パート 「つかみ」「発展」「危機」「結末」
原因と結果 プロットの大枠で作ったもの
登場キャラクター 事件に登場するキャラクター
主な舞台(場所) 事件の主な舞台、具体的な場所
目的 主人公の目的、事件のテーマやコンセプト、制作上の目的
事件の内容 具体的な事件の内容
主人公の葛藤 主人公が直面する葛藤
※プロットポイント1 主人公に確かな目的を与え、背中を押すエピソード
※ミッドポイント 真の目的を明らかにするエピソード
※プロットポイント2 最大の障害
※主人公の感情が頂点に達するエピソード
その他 情報の捕捉や伏線、使うか悩むアイデアなどなんでも
6 自然で読みやすいテキストを書く
6-1 ゲームシナリオを書いてみよう
6-1-1 ゲームシナリオに共通する特徴
指示文の形式で書く。セリフだけではなく、何処にどんなキャラを出すのか、どの表情を使うのかも併記する
セリフには誰のセリフなのか、メッセージウィンドウ単位で書く
6-1-2 ゲームシナリオは指示文で演出する
一例として、ナレーションはキャラ名をNに、モノローグは()で綴じるなど
6-1-3 ゲームシナリオの基礎実習
code:選択肢の例
三ツ矢「なんか食べに行こっか。
お詫びにおごるよ」
鈴原(おごりか・・・それなら)
// 選択肢
// 選択肢1:パンケーキだな
// 選択肢2:寿司が食べたい
// 選択肢1
三ツ矢「いいね♪
私も食べたいと思ってたんだ」
// 選択肢2
三ツ矢「容赦なしだなぁ。
ま、いいけど」
// 合流
三ツ矢「美味しいとこ知ってるから
ついてきて」
6-1-4 指示文の応用系
代表的な指示文
BGM
SE
VE(ビジュアルエフェクト)
キャラクターの表情
キャラクターの移動
カットイン
漫符
6-1-5 シナリオサンプル
具体的なシナリオの例が書いてある
6-2 ゲームシナリオの核となる「セリフ」
セリフづくりは、ゲームシナリオの大部分を占める
様々な状況を、セリフで伝える技術が求められる
6-2-1 キャラクター性を文字にする
セリフの口調等だけで、誰が喋っているのか判別出来るようになると読みやすくて良い
6-2-2 「対称」で掛け合いの質を上げる
セリフの掛け合いがうまく行かないと感じたら、キャラクター同士の対称性に目を向ける
情報格差がある
立場の上下がある
価値観のベクトルが違う
6-2-3 上手な情報の出し方
質疑応答で情報を出す
基本形、こちらから話しかける
受け手に知りたいと思わせる
情報を無理やり押し付ける
オートイベントでNPC側から呼びかける
情報を分散させる
情報提供役を分散させて、「校長先生の話」を避ける
6-2-4 選択肢はプレイヤーのために
変化が想像できる(=プレイヤーに選択の根拠を与える
プレイヤーの意志が反映される(=一体感を深める
code:プレイヤーの意志が反映されていない選択肢の例
<例1>
いじめられている亀に出会った
// 選択肢
// 選択肢1:素通りする
// 選択肢2:一緒にいじめる
――助けると言う選択肢が欲しい
<例2>
三人の女の子に出合った
// 選択肢
// 選択肢1:右の子に声をかける
// 選択肢2:左の子に声をかける
――3人目の子は?
画面内で起こっている出来事に注意して選択肢を作成する
6-2-5 セリフづくりのヒント集
セリフの三原則
物語を前進させる
キャラクター性を出す
情報を伝える
セリフに求められる2つの文脈
物語をきちんと繋ぐための文脈
一つ一つの掛け合いを成立させるための文脈
短く区切る
一つのウィンドウに一つの句点
一つの句点に一つの情報
笑いを交える
感情で書く
シチュエーションを工夫する
安易なつなぎを多用しない
ディティールに拘る
シーンの目的を言語化する
メインで描くべきもの(物語を前進させるための出来事)は何か?
キャラクターの目的は何か?
キャラクターはどのように感情を動かすのか?
受け手の感情をどう動かしたいのか?
APPENDIX ゲームシナリオライターの裏側
省略